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✓山の上のランチタイム

▽あらすじ
都会で修業した登磨に片思いする美玖は
アピールポイントが元柔道部の
足腰の強さだけというおっちょこちょい。
さらに、登山口にあるレストランに集う
少々変わったお客さんたちにも翻弄されて――。

▽印象に残ったフレーズ

子どもは、親をどこまでも想う。
親の気持ちに敏感で、
親が口に出さなくとも汲み取る。

「誰だって何かの命をもらわなきゃ
生きられない。それを忘れてる。
生きるために殺す時代だから、
社会のシステムの中の一部として
殺す時代になって、
そうすることで命を潰すっていう
壮絶な場面から、オレたちは離れてしまった。
目の前にだされた肉が
旨いか不味いかにだけ焦点が絞られて、
元がオレたちと同じ
生きてた動物だってことを忘れてる。」

学校っていう場所は
息を潜めていなきゃいけない。
他人と違うことや、
自分が思ったことを
自由に発言すると叩かれる。
たとえ命という重いテーマであってさえ、
自分の考えをねじ曲げて、
教室で最も権力を振るっている
「空気」に合わせる。
みんな友達と笑いながら
笑顔の皮一枚下で、
ヒリヒリした腹の探り合いをしている。

「あら、蜘蛛の巣。
苦手だけど、こんなに素敵な模様を
描けるところは尊敬できるわね。
設計図は頭の中にあるのかしら。
人生にも、完璧な模様が描ける
蜘蛛みたいな設計図があればいいのにねぇ。」


▽感想
子育てにも、自分の病気にも
親子の絆にも、昔の思い出にも
学校や周りへの思いにも
しっかり章が分けられていて
一つ一つに美玖ちゃんや登磨さん、
そしておいしいご飯が
背中を押してくれたり
解決を見出してくれたり。

美玖の秘密(?)も
章を追うごとにどんどん明らかになり
胸が詰まる思いをしながら
涙を流しながら読んだ。

美味しいご飯や
ほのぼのとした雰囲気とは別に
思いテーマが基礎にあり
それが章ごとに話題を変えていく。

美玖ちゃんと登磨さんの
テンポの良いやりとりも見もの。

どんな辛さがあっても
前へ進めばゴールがある。
胸に刻みたい一言だった。

山の上のランチタイム/高森美由紀/中央公論新社

↳試し読みもありますので、ぜひ

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