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✓滅びの前のシャングリラ

▽あらすじ
明日死ねたら楽なのにと夢見てた。
なのに最期の最期になって、
もう少し生きてみてもよかったと思ってる。
「一か月後、小惑星が衝突し、
地球は滅びる」
学校でいじめを受ける友樹、
人を殺したヤクザの信士、
恋人から逃げ出した静香、
そして荒廃していく世界の中で、
四人は生きる意味を、
いまわのきわまでに見つけられるのか。

▽印象に残ったフレーズ

なぜだ。ずっといじめられてきて、
死にたいのを我慢して、いざ殺したら、
あっちが被害者になるなんて

恐怖、絶望、悲観、諦観、
ときめき、歓び、すべてが混ざり合い、
死を目前にした僕の中で
活火山のように滾っている。
そのせいで、逆にいろいろなものが
麻痺していく。

むかつくたびに天にむかって唾を吐き、
それも結局自分に降ってくると
分かったときから、俺は
考えることをしなくなった。

他人の不幸に心を痛めながら、
どこか自分や身内の幸運をかみしめている顔だ。
身勝手で逞しい。
それが愛情の裏の顔ってものだ。

「自分が誰かを傷つけたことなんて
忘れたいだろ。けどずっと覚えてて
謝ってくれた。」

間違わないやつなんていない。
それを許しすぎても、
許さな過ぎても駄目になる。

「じゃあ、いってきます」出ていくとき、
友樹が言った。さよならよりずっといい言葉だ。

「平凡な幸せすべて悪魔に
売り払うつもりじゃないと、
大成功なんて無理だよ。」

好きな気持ちを表現するために、
別の何かを下げる。
無意味でしかない比較…

▽感想
なかなかとがったあらすじだなと
思って手に取った。
そしてなかなか分厚い!
だけど、読み始めたら一気に読んでしまう。
人類が滅亡なんて、スケールが
大きすぎてってなるけど
一か月後に自分が必ず死ぬとなったら
どう行動するかな…

この話はそんな絶望の淵に立たされた
人たちが思ったり行動したり
幸せ、不幸、喜び、悲しみ、夢が
語られていく。
まだ家族といたい、
別れたあの人に会いたい、
好きな子のそばに居たい
子供の生きる先をまだ見ていたい
あげればきりがない思いが
死にたかった自分にいつしか
願望という形で胸に押し寄せる。

“終わり“に向けて夢や希望が叶う
こんな皮肉なことはないだろうと
思って読んでいた…。

シャングリラ:理想郷(造語っぽいかんじ)

滅びの前のシャングリラ/凪良ゆう/中央公論新社


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