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✓少女七竈と七人の可愛そうな大人

▽あらすじ
「たいへん遺憾ながら、美しく生まれてった」
川村七竈は、群がる男たちを軽蔑し、
鉄道模型と幼馴染の雪風だけを
友として孤高の青春を送っていた。
だが、可愛そうな大人たちは
彼女を放っておいてくれない。
実父を名乗る東堂、芸能マネージャーの梅木、
そして出奔を繰り返す母の優奈――
そんな中、雪風と七竈の間柄にも変化が――
雪の街旭川を舞台に繰り広げられる、
痛切でやさしい愛の物語。

▽印象に残ったフレーズ

顔に。顔に視線が突き刺さる。
毒をぬった針のように。
やめろ。見るな。
勝手にわたしを見て消費するでない。

▽感想
語り手がどんどん変わっていく形式。
自分が美しいがゆえに物心がついた時から
周囲の人から視線を集めている。
高校生ながら、自分を見て消費するな
って台詞がでるのはずーっと見られてきた
からこそでる台詞なのかなと思った。
高校生で考える言葉ではないよなあ。

唯一、心を開いている雪風も、
成長するにつれて自分と顔が似ている…
つまり、血がつながっているということ。
自分の母親と雪風の父親と何があったのか
想像するのは簡単ということになる。

そんな雪風のことを好きだったのか
そういう直接的なことは書かれていなかったけど
お互い見つめあって、名前を呼び合っていたのを
見て、そういう気持ちがあったのかなあとも
思わずにはいられなかった。
そんな人と血が繋がっていると分かれば…

自分の母が、自分の住む地域の人と
誰かのお父さんやおじさんだったりする人と
寝ていたと分かったらどうするだろう。

七竈も雪風も後半になるにつれて
お互い、どんな気持ちで会っていたのだろう。
それでも母のことを少しでも
母親と呼びたくて、母親らしいことをしてほしいと
思う七竈がかわいそうで仕方なかった。

七人の可愛そうな大人というタイトルだけど
私は、てっきり優奈と寝た
男たちのことかと思ったけれど、
多分、優奈、多岐、梅木、田中先生、
田中先生の妻、多岐の夫、祖父
になるんじゃないかなあと思った。

でも被害にあたのは優奈意外だけど
優奈も優奈で心が枯れていたんだよなあ。

すこし大人びたような不思議な口調の
七竈は一人で生きていくがゆえに
そういう口調になってしまったのかな。

誰の視点をとっても
救われた人がいないようなお話だったきがする。

少女七竈と七人の可愛そうな大人/桜庭一樹/角川文庫

↳文庫本

↳単行本

試し読みもありますので、ぜひ

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