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【vol.12】「世の中、お金じゃない!」は通用しない
<作品紹介>
2008年のリーマン・ブラザーズ経営破綻“リーマン・ショック”に端を発した世界的経済不況の真実に迫るドキュメンタリー。金融業界人や政治家、大学教授、ジャーナリストらキーパーソンへのインタビューや、徹底したリサーチ、データ収集によってあらゆる観点から問題を検証する。第83回米アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞。ナレーションをマット・デイモンが担当している。(出典:映画.com)
<あらすじ>
サブプライムローン問題に端を発したリーマン・ブラザーズの経営破綻。かねてから懸念されていた金融危機がこの一件で顕著となり、未曾有の経済危機が地球規模で波及した。その大暴走を引き起こしたはずの金融業界や富裕層が潤い、庶民が負を背負う構造がいかに生まれたのか。金融業界や政治家、経済学者など、少なからず旨味を得た関係者たちへのインタビューから、世界中を巻き込んだ経済大暴落の元凶へと迫っていく…。(出典:スターチャンネル)
【※注意】この記事はネタバレを含んでいますので、気になる方は先に映画をご覧いただいた方が良いかもしれません。
富めるものはますます富み、貧するものはますます貧する
「マタイ効果」
という言葉をご存知でしょうか。
マタイ効果…「格差は自ら増長する傾向があり、最初の小さい格差は、次の格差を生み出し、次第に大きな<格差>に変容する性質」を指す。裕福な人は、おカネを銀行に預けることができ、利潤の高い投資先に投資することもでき、おカネがおカネを生んでいく。そのうえ利息は、預ける金額が多いほど高かったりする。貧困層は毎日の生活に追われて、貯金をすることはおろか、借金をして利息を払わなければならない場合もある。おカネがないと、さらにおカネが必要となるのである。(出典:浮動点から世界を見つめる)
アメリカの社会学者ロバート・マートンが「発見」したこの理論は、
さまざまな分野において見受けられますが特に「経済」の分野で利用されることが多々あります。
特に、私たちの今の社会は、「金融資本主義」と呼ばれ、「マタイ効果」がより色濃く反映される社会に変わってしまいました。
金融資本主義とは簡単に言えば、
「銀行」「投資銀行」など金融資本を扱う企業に富が集中し、それによって彼らが政治的にも大きな影響を及ぼす社会を表します。
それによって、アメリカの貧困格差はさらに拡大することになります。
今回の映画を観ていただければ、金融資本主義がいかにアメリカを侵食しているかが理解できます。
(出典:「インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実」ダイジェスト)
アメリカといえば「自由の国」や「アメリカンドリーム」というイメージを思い浮かべる方も多いと思いますが、
今やアメリカは日本よりも遥かに学歴社会であり、カネがものをいう社会になりました。
そして、それはおそらく日本の未来の姿です。
というか、今現在進行中の日本の姿です。
ビジネスやマーケティングの世界では
「今のアメリカを見れば、日本に10年後が分かる」
ということをよく耳にします。
それは、アメリカで流行ったビジネスは日本に輸入され、それが日本でもヒットするからなのですが、
実際にそうやって様々なビジネスが日本に輸入されてきました。
ただ、昔はインターネットがなかったので10年くらい遅れていましたが、今ではネットの影響もあって、10年もかからず輸入されているかと思います。
そして、それはビジネスだけでなく、政治や社会システムも同様です。
特に、「お金」がよりパワーを持つ今の時代で、金融資本主義は確実に日本にも浸透しています。
税金すら自分たちのカネとして使う富裕層たち
昨年12月には、こんなニュースが出ていました。
これは、「下落した日本企業の株を日銀が買い支えしている」というニュースです。
株価は、本来であれば企業の業績だったり、投資家たちが景気予測をしながら売買することで上下します。
そして、当然ながら業績の悪い企業は淘汰され、
業績を伸ばしている企業はより資金を得て、それを元に更なる設備投資や事業を拡大することができます。
しかし日銀が買い支えをすれば業績の悪い企業の株価を上げることになり、逆に将来性の高い企業の妨害をすることにもつながります。
それにもし日銀が損失を出した場合、政府予算も削減されるので、
その煽りが増税や私たちの負担になることは容易に考えられます。
一方で、日銀の買い支えによって恩恵を受けられるのは投資家や富裕層たちですから、より格差を助長することにもつながります。
実際、映画の中でもリーマンブラザーズが破綻し、それによってゴールドマンサックスを始めとした投資銀行やその役員たちは莫大な利益を手にしましたが、
リーマンブラザーズを救済するために国民の税金が70兆円も導入されることになりました。
(とんでもない額の報酬を得る金融業界の大物たち。しかし、その裏には弱者の弱みに漬け込んで搾取する卑劣なやり口がありました。出典:「インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実」ダイジェスト)
日銀も今年に入って、年6兆円というETF購入額の目安を削除しようとする動きも出てきたものの、アメリカの影響を強く受けている日本の政治・経済界を見ていると、
「そうは言っても、どうせ買わされ続けるんだろうなぁ…」
という疑いは晴れません。
自分に出来ることを淡々とやり続ける
お金の元々の役割は
「交換の手段」
ですから、モノやサービスがあって初めてお金にも存在価値が生まれます。
しかし、金融資本主義においてお金は手段であり「目的」でもあります。
それはお金によって世の中を動かせるようになってしまったからです。
しかも、銀行や投資銀行が強いのは
「価値を生み出す必要がない」
からです。
例えば、メーカーやサービスを提供する企業は、価値としてモノやサービスを生み出さなければいけません。
そして、モノにせよサービスにせよそれらを生み出すには材料やコストがかかります。
しかし、銀行や投資銀行は価値を生み出す必要はありませんから、その分のコストはカットできますし、在庫を抱えることもありません。
もちろん金融商品をつくるなどやることはありますが、それを差し引いてもやはり負担は少ないと言えると思います。
しかも、今の投資銀行はデリバティブで稼いでいます。
デリバティブの取引総額は2010年段階で「4.6京円」と言われていました。(「京」は「兆」の次の数の単位)
これだけ取引額の大きい業界は金融業界だけですから、ここで稼げば世界でトップの金持ちになれます。
そして、その金を使ってロビー活動を行い、どんどん自分たちの都合の良いように世の中を変えていった結果、アメリカは金融資本たちが牛耳る世界が完成したわけです。
映画内でも言及されていますが、アメリカ人の国民が政治に及ぼせる影響は30%しかなく、
すでに国民が政治に影響を及ぼすことはできなくなってしまいました。
(出典:「インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実」ダイジェスト)
今回の映画は2010年の映画なので、もしかすると状況は変わっているかもしれませんが、
傍目に見た印象ではむしろ悪化しているような気がします。
この映画を見て「日本ももっと悪化するかもしれない」という不安は感じます。
とはいえ、私たちがこの流れを変えることはできませんし、社会状況が悪化する中でも私たちは生きていかなければいけません。
先が見えない暗闇を歩いているような気持ちになりますが、それでも自分の理想のライフスタイルを送れるように
毎日後悔なく生き切って行きたいと思います。
▶︎「インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実」ダイジェスト
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