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【バンクーバー】ビヨンセとイタリア人と保冷剤

今日の昼間、ロブソン通りにはたくさんの宇宙人がいて、地球侵略はバンクーバーから始まるのか、と感慨深い思いがあったのだけれど、どうやら今日はビヨンセのコンサートがあったらしい。

ビヨンセは普段アルミホイルに包まれている人なのだろうか。
ビヨンセのコンサートに行く人はみんな銀色のギラギラした服を着て、何かと交信しているようだった。

現在進行形で、ビヨンセが歌っている。
僕の住んでいるところから300メートル圏内にビヨンセがいて歌っている。
普段はホワイトキャップスという、バンクーバーのサッカーチームが玉を転がしているのだけれど、今日は世界のビヨンセだってさ。信じられないよね。


ここでビヨンセが息してるんだぜ。

スタジアムからは地面が揺れるような歓声と、ずんずんと重低音のリズムが一つの音の塊として排出され、街中を支配している。
今は23時過ぎだっていうのに、もっとスタジアムに近い人は、きっと眠れないだろうな。

僕も興味本位でスタジアムの足元まで行ったのだけれど、
あまりの音圧に吹き飛ばされそうだった。

スタジアムの広場にはビヨンセのコンサートにあぶれた人がいじけたように座っていて、ティムホートンのコーヒーとか、得体のしれないピザとかマリファナとかをやりながら踊ったりしていた。

はしっこに寄せられたピーマンみたいな状況でも楽しめるなんて素敵だよね。
どうして、そんなに物事を楽しめるんだろう。

きっとコーヒーだってまあまあだし、ピザだって格別とまではいかないだろう。
常習的なマリファナが彼らを陽気にさせるのかな。実は僕も興味津々。

日本だったらありえないよな、って思う。(彼女の曲は一つも知らない)

シェアルームの隣人は部屋にイタリア人を連れ込んでいる。
ここの部屋はすべて鍵がないから、何か盗られないか心配だ。

そもそも泊りはだめだって、ルームメイトが言っていた。
セックスのためならルールなんて簡単に破れるような女なんだ。

ビヨンセがガンガン歌っている横で、彼女らはゴンゴンしているってわけだ。
ビヨンセの方が好きだな。

今急いでビヨンセの曲を聴いているけれど、僕にはイマイチだ。
でもコンサートの音は、珍しい世界の入り口みたいでキラキラしていて、
雪みたいにワクワクする。

なんでもいいから、二人でコンサートに行きたいね、
ってイタリア人とゴンゴンしている女の部屋の隣で、僕は婚約者に言った。

「なんでもはよくないよ」
と言った婚約者は
今、片頭痛に襲われてベッドに伏せ、果物の形状をした保冷材で頭を冷やしている。

9月に入り、旬ではなくなった夏の果物の保冷剤だ。




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