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対エスキモー戦争の前夜、チキンサンドの行方


コートのポケットへ突っこんだままのチキン・サンドを路傍に落とそうとしたが、途中で止めて、またもとのポケットにしまいこんだジニー。

(セリーナの兄フランクリンからもらった
デリカテッセンのチキン•サンド。
棄てるか隠すか適切な場所が見つからずに
ポケットに押し込んだもの)

わたしはこの結末が好き。雰囲気が好き。


同時に迎えた『復活祭の贈物のひよこ』は
『チキン•サンド』から思い起こしたものだ。


ジニーは『ヴォーグ』を読んで待っていた。
そこへセリーナの兄フランクリンがやって来たところから謎が深まる。いたって普通の会話をしているだけの物語なのだけど、いちいち疑いが深まる。

簡単に言えば、
「今度はエスキモーと戦争するんだぜ。知ってた?」
若い子たちの心変わりな物語。
それでいいはずなのに、この難解さよ。
『対エスキモー戦争の前夜』


────────────────

わたし、あんずきんは、『読書』をして待っていた。
すぐに眠くなるから読書は苦手なんだよなぁ、、
そこへドタキャンの連絡が入ったのだった。



同時に『ブリ屋のブリ屋仲間の女王や、
読書たくさんしてますブリ家』
を前からどうも好まないと思っていたことを思い出した。わたしには好まないひとが多いようだよ。
代わりにと言っては何だが、
好むひとには愛着のニュアンスをそれぞれに近しく。

セリーナの兄フランクリンの言葉を借りれば、
「自分で思ってるのの半分も美人だったら、
まあ運がいいほうだな」

「大人しくお布団のなかで愛だの語って
ご本でもお読みブリ屋のブリ子ちゃま」
とはわたしから。

フランクリンは八遍も手紙を書いて一度も返事がもらえなかったと言うことから、
「あんたの姉さん知ってるよ。あれはブッてやがる」
トイレット•ペーパーを持ち上げて下をのぞきながら言ったのでした。



サリンジャーの『ナイン・ストーリーズ』は逸品ぞろい。九つの短編小説の中の『対エスキモー戦争の前夜』を何度か読んでいる。何度目かになる対エスキモーを今日の夕方に読んでいた。外は雨降り。約束は土壇場キャンセルとなりサリドタキャンへ没入。
なにそれ?



サリンジャーを雰囲気で読んでいるといいながら
計算された謎解き探しに実は
けっこう疲れる。
疲れる人に稀に魅力を感じるように。
けっこう貴方疲れてるよね?
その魅力とガラス細工、
互いの心の闇を感じる。
惹かれ合うこともあるように。

謎解き一部に考えられたことが、
物凄いキリスト教叩きであるといわれた 
『対エスキモー戦争の前夜』
サリンジャーの精神はPTSDという戦争が原因で病んでしまったこと。ただその見返りとして、精神病や戦争といった、サリンジャーの作品には欠かせない作品のテーマができあがったとか。

フランクリン=キリスト
フランクリンがジニーに半ば強要した
チキン•サンドイッチ=イースターチキン(死)
と考えられる。

物語途中、エリックという青年がやって来る場面。
エリックは自宅に居候させていた作家が
今朝無断で出て行ったという話を、

...思いやりを発揮してさ─全くもう善きサマリア人を地で行ったようなもんよ─ぼくの親切と思いやりの結果がどうなったと思う?...

とジミーに話す。
戦時中に一緒に飛行機工場で働いていたフランクリンと、これから『美女と野獣』を観に行くという。

この『エリック』という名前にすら、
謎が隠されていると思ってしまう。
サリンジャーのすごいところで、疲れるところだ。





余談ですが、精神世界の王道..
「俺サリンジャー好きなんだ」といえば
ひとつのキャラ設定になりうるよね。
病みがちオシャレ設定でいきたいひとどぞ。

意味不明と難解さ、
ユーモアさとファッション性を持ち、
喪失感の行き来をする。
やめられない、わたし。
ほとんど意味不明、
不明だから好きなのかな。
不明だから解き明かしたくなる。
これが人間にも当てはまる..のなら
わたしも厄介なひとよ。






この物語の最後。
棄てようと思ったチキン•サンドをポケットに戻すところが好きだ。




 隠されたプロットは
「善きサマリア人」と「美女と野獣」
チキン•サンド と 復活祭のひよこ 
意味するのは、変化、『生』と『死』

死は生に変わらない。
死んだイースター•チキン

主軸は..?何だろう。
何回読んでも難解
誰にも感情移入しにくい設定
シンプルこそシンプルに帰れない。
何言ってるか..ぐるぐるしてきた..。





この物語の最後。

フランクリン(=キリスト)からもらった
チキン•サンドを捨てようとして
途中で止めて、
またもとのポケットにしまいこむジニー。


結末の表裏、


....数年前、復活祭の贈物のひよこが、屑籠の底に敷いたおが屑の上で死んでいるのを見つけたときにも、捨てるのに三日もかかったジニーであった。....



キリストは処刑された三日後に復活したと言われているが、復活祭のひよこは三日経っても生き返らなかった。ジニーはもしかしたらひよこが生き返るのではと三日待ったのかもしれない。

ジニーのトラウマ的なものを意味するもの。

「死」を受け入れられなかった。
死は生に変わらないことを分かりながら期待した。


トラウマからチキン•サンドをポケットに戻した。
その行方は─

捨てたのか、
捨てようとしてまた拾いあげたのか、
食べたのか、分かるまい。





『美女と野獣』にも謎解きが隠されているんだろう。
疲労が重なりそうなのでまた今度にしよう。





ドタキャンされるのも悪くないなと
思いながら書いた記事、気づけば夜ではないか。




名付けるなら
『対ドタキャン戦争の夕方』─もう閉店なんですけど

あ、長居し過ぎた。


ヒヨコ•サンドでも作ろうかな!

あ、間違えた、
チキン•サンドでも作ろうかな。






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