見出し画像

自殺大国日本。生と死について、個々が本気で向き合うときだと思う。

厚生労働省自殺対策推進室は毎月自殺者統計の発表をしています。今年5月12日に4月末結果を発表した自殺者は1,455人と前年同期比で19.8%減少した。過去5年間では最も大きな減少幅だった。

ここ数年、日本の自殺者数は減少傾向にあり「減った」こと自体は珍しくないが、今年の5月ま12日に発表された数値には驚いた。

異様なのはその減り方。自殺者数には季節で異なり、例年3月や5月が最も多く12月が最も少ない。そのため、同じ4月で比較してみると、2015年に2094件、2016年に1880件、2017年に1940件、2018年に1825件、2019年に1814件。それぞれ前年同月比で計算すると、2016年は10.2%減、2017年は3.2%増、2018年は5.9%減、2019年は0.6%減。今年4月の19.7%減がいかに大きな減少だったかお分かりいただけるだろう。

もう1つの数字を併せて見ると、この数字はますます異様に映る。6月8日に発表された2020年1~3月期の実質国内総生産(GDP)改定値は年率換算で「2.2%減」だった。言うまでもなく新型コロナウイルスの感染拡大により、経済活動の大部分が事実上凍結されたことによるものだ。

一般に、経済状況の悪化と自殺者数の増加は相関関係にあるとされる。今回の統計は、警察庁生活安全局が集計し、厚生労働省自殺対策推進室にデータを共有している。新型コロナウイルス・パンデミックによる経済難で、自殺者が大量に増えると恐れられていたが、これまでのところはむしろ減少に留まった

自殺者が急増したのが1998年。98年は自殺者数が前年比で35%も増えた97年は消費税増税があったほか、バブル崩壊後の不況で山一証券が破綻した年だ。しばしば言われる「経済が減速すると自殺者が増える」。これが正しいとすれば、GDPが減少した影響を受けた2020年4月には自殺件数が増えてもおかしくなかったとも考えられる。しかし、実際には増えず、むしろ大幅に減った。

一体、なぜなのか。「コロナ禍で命の危険を感じ身を守ろうとしたり、危機を乗り切るため連帯感が生まれたりして減少した」「行きたくない会社や学校に行かずに済み、個人の幸福度が上がった」などと分析されている。

ただ、経済の悪化による生活苦など、自殺につながるリスクは高まりつつあり、今後自殺に追い込まれる人が急増しかねない状況ではある。新型コロナによる経済活動停止の影響が企業業績や雇用に直接表れるのはこれからだろう。社会が失業をどのように受けとめるか。このことこそが今後の自殺者数の推移に大きな影響を与えるのである。

8月の自殺者は1849人今年の月別で最多に。

この大幅な自殺者数の減少は、続くのか。潮目がどこかで変わるのだろうか。と考えていた矢先に、8月の自殺者数が1849人となり、前年同月比で246人増加したことが、厚生労働省と警察庁の集計で明らかになった。今年の累計では1万3112人(同)で前年比746人の減少している。

驚くべきは、男女別で男性が1199人(前年同月比60人増)、女性は650人(前年同月比186人増)。と女性の自殺急増が、前年より4割増加していること。

コロナ危機が女性に与えた影響は、統計にも表れつつある。7月は非正規の働き手が前年同月より131万人減ったが、6割超が女性だった。打撃が大きい飲食・宿泊業は、働き手の5割以上を女性の非正規が占めていることが背景にある。シングルマザーの7割以上が雇用形態の変更や収入減に見舞われ、5~6月に配偶者暴力相談支援センターなどに寄せられたDV相談は前年の1.6倍に上った

芸能界で自殺とみられる悲報が相次ぐ

今年5月女子プロレスラーでテラスハウスに出演していた木村花さん22歳が東京都内の自宅マンションで自殺しているのが発見された。SNSによる中傷が急死の背景にあるとして、母親がBPO(放送倫理・番組向上機構)に申し立てし、すでに審議入りしている。

7月には俳優三浦春馬さんが30歳で都内の自宅マンションで死去。警視庁は自殺とみている。

女優の芦名星さんは9月14日、都内の自宅マンションで死去。親族が発見した。自殺とみられている。

同月20日には都内の自宅で俳優の藤木孝さん80歳が遺書を残し、自殺した。

数多くの映画やドラマに出演した女優の竹内結子さん40歳が、同月27日未明、詳しい状況は現在確認中とされているが渋谷の自宅マンションで死亡が確認された。

芸能人という特殊な職業は、世間体を気にするがあまり仲の良い友人であっても周囲に相談するのが困難であり、とりわけ孤独に陥りやすい条件が揃っている。精神的孤独は周囲に人がたくさんいて多くの人に愛されていても、心が孤独を感じることであり、周囲が気づかないことも多く、知らない間に当人は孤独から心を病んでしまうことが多い

公的な支援の見直し必要である

芸能界に限らず、自殺者数は増加傾向にあるとされ、厚労相は「7月以降、自殺増加の兆しがある」と説明し、コロナ禍による不安の高まりが関係している可能性もあると指摘し、各自治体の「いのち支える相談窓口」の利用などを呼びかけている。

だが対策に取り組むNPO法人も感染拡大の影響を受けているのが実態であり、相談体制を縮小せざるを得なかったり、活動資金が不足したりする例が目立つ。政府には資金面を含め、手厚い支援が求められる。

家庭の事情や年齢、仕事など、どんな状況の人に自殺リスクが高いかは地域によって異なる。このため自治体の果たす役割も大きい。民間と連携し、従来のセーフティーネットを再点検してもらいたい。

市区町村の社会福祉協議会が窓口になり、収入が減った世帯向けに行う無利子貸し付けには申請が殺到している。こうした生活支援制度の拡充も必要だ。

菅義偉首相は「自助、共助、公助」を国の基本に掲げ、中でも自助を重視しているように映る。しかし自殺対策では公助に重きを置き、より細やかな命の安全網づくりに力を注ぐべきだと感じている。


読んでくれてありがとうございます! 頑張っているチームのみんなに夜食をご馳走しようと思います。