見出し画像

勿忘草はゆらりと揺れる(声劇台本)

男1女1

登場人物
幸太 ♂ (こうた) 20代くらい、優しく明るい、自分のことより他人を優先しがち。恵の彼氏→旦那

恵♀(めぐみ) 20代くらい、明るく責任感が強い、涙もろい、幸太に言う口癖は、バカ 
幸太の彼女→奥さん


幸太「あ、勿忘草(ワスレナグサ)だ」

恵「ん?その花の名前?」

幸太「そうそう、俺この花好きなんだよね」

恵「ふーん?どして?」

幸太「この花の花言葉がさー、切なくて好きなんだ」

恵「ふーん、、、なんて花言葉?」

幸太「(溜めて)、、、、私を忘れないで、、ってやつ!」

恵「ふふっ」

幸太「ん?なんで笑う?」

恵「いや、なんでそんなに溜めるのかなって」

幸太「んな!!か、感情込めたんだぞ!?」

恵「切ない言葉だから?」

幸太「そ、そうだよ!え?そんなに感情こもってなかった?」

恵「ううん、こもってたこもってたぁ」

幸太「、、そっか」

恵「うん」

幸太「、、、、」

恵「んで?その花言葉だから好きなんだっけ?」

幸太「ん?え?あ!そうそう!切ないだろー?」

恵「う、うん、切ないね」

幸太「だろぉ、しかもまたこの花言葉の由来が泣けるんだわ」

恵「へぇー、どんな由来なの?」

幸太「ん?えっとなー?確か、、なんかどっかの騎士が、、、あれ?王子??だっけか?
それがなんか、、えっと、、どーだっけなぁ?」

恵「はぁ、、ググれば?」

幸太「うぐっ!お恥ずかしい、、、、そうします」

恵「はーい」

            幸太スマホを出して調べる

幸太「んーと、どれだー?んー、お!あった!
あった!」

恵「なんて書いてあんの?」

幸太「えっとな、ドナウ川の非恋伝説だってさ!」

恵「、、、、で?」

幸太「ん?」

恵「はぁ、、どういう内容なのよ」

幸太「え!あ、えっとな、んーと、ある日若い騎士ルドルフが恋人ベルタとドナウ川のほとりを散歩していました。
するとベルタは岸辺に咲く美しい花を見つけます。
ルドルフはベルタのためにその花を摘もうと岸を降りましたが、誤って川の流れに飲まれてしまいます。彼は最後の力を尽くして花を岸に投げ、「私を忘れないで」という言葉を残して死んでしまいました。
ベルタは亡き人の思い出に生涯この花を身につけ、その花は「忘れな草」と呼ばれるようになったといいます、、だってさ!」

恵「へぇー、確かにこれは切ないねぇ」

幸太「だろぉ!?だから俺は勿忘草が好きなんだよー」

恵「うん、なんとなく好きな理由わかるよ」

幸太「へへっ!そっか!」

恵「うん、、、、」

幸太「、、、、」

恵「でもさ?」

幸太「ん?」

恵「好きだった人に先に逝かれるのに、忘れないでって、結構辛くない?」

幸太「んー?そーか?」

恵「うん、、、だってさ、もう2度とその大切な人には会えないのに、ずっとその人のことを思い続けなきゃいけないんでしょ?
思い返すたび、その別れる瞬間のこと思い出したりしてさ、私だったら絶対辛くなるもん、、。」

幸太「、、、、確かに、そーかもな」

恵「、、うん」

幸太「、、、、」

恵「、、、、、、ねぇ、ギュッてして」

幸太「は?」

恵「いいから、、、はーやーく!」

幸太「んん?わ、わかったよ、、」

       幸太が優しく恵をハグする

恵「、、、、えへへ、あったかい」

幸太「急になんだよ〜」

恵「ふふっ、、、、、、ねぇ、幸太は、居なくならないよね?」

幸太「ん?」

恵「ルドルフみたいに、、誰かのために無茶して
死んじゃったりしないよね?」

幸太「、、、、怖くなった?」

恵「ん、、、そうだけど?悪い?」

幸太「はぁ、、いいか?恵」

恵「ん?」

幸太「約束する、俺は絶対ルドルフみたいにはならない!」

恵「、、、、ほんとに?嘘じゃない?」

幸太「嘘じゃない!絶対!お前を残してあの世になんていけるもんか!」

恵「ふふっ、、そっか、ありがと、、嬉しい」

幸太「だからそんな悲しい顔するなって」

恵「うん、、、、じゃあさ?」

幸太「ん?」

恵「証拠見せてよ」

幸太「へ?」

恵「私とずっと一緒にいてくれるっていう」

幸太「へ?んなもんどーやって」

恵「(一息ついてから)、、、、この間の返事OKだよ、、」

幸太「この間?」

恵「ッ!言わせんなバカ!」

幸太「んー?この間?この間?、、、、はっ!?
え、、じゃあ!?てことは?えっ!そういうことか、、、そーなのか!?いいのか!?恵!!」

恵「、、、うん、いいよ、結婚しよっか、私たち」

幸太「う、うおおお!よっしゃあぁ!!やったぁぁあ!!」

恵「ちょ!喜び過ぎ!」

幸太「これを喜ばずにいられるかあ!うおおお!」

恵「はぁ、全く、、」

幸太「あはは、、、、なぁ恵、改めて言わせてもらう
俺は絶対、絶対お前を幸せにする!絶対先にいなくなったりしない、、。」

恵「うん」

幸太「だからな、、ずっと一緒だ」

恵「、、うん、ありがとう」

幸太「、、、よっしゃ!んじゃ早速式場きめようぜ!」

恵「はぁ、、まずは両親に挨拶でしょー?」

幸太「ぎくっ!!そ、それは、無し、とかにできない?」

恵「できる訳ないでしょー!?ほら!今週の土日やすみでしょ!!一緒に行くよ!」

幸太「えー、恵の父さんおっかねえんだよなぁ」

恵「私と。ずっと一緒にいてくれるんでしょ?」

幸太「お、おう!」

恵「じゃあこれは、そのための試練だよ」

幸太「、、、はぁ、そう言われちゃーな、、うし!頑張るか!」

恵「ふふっ、そーだね、がんばろ!
これから、、二人で!!」

幸太「そーだな!二人で!」

                 二人で笑い合う

                           間

                         3年後
恵、病院のベッドに横になる幸太に話しかける

恵「って、言ってたのにね」

幸太「、、、、うん」

恵「なんで?」

幸太「うん?」

恵「死ぬの?先に?」

幸太「んー、かもな、、」

恵「、、、、、、嘘つき」

幸太「、、、そうだな、、」

恵「、、、、、、生きてよ」

幸太「、、、、生きたいよ」

恵「だったら生きてよ」

幸太「ッ!生きたいよ、、、そりゃ生きたいよ!
一番生きたいのは俺だよ!俺がっ!俺が、、、、、生きたいに決まってんだろ、、、」

恵「、、、、うん、、そうだよね、、ごめん、、わがまま言った、、酷いこと言ったよね。」

幸太「いや、、俺も大声出して悪かった」

恵「、、でもね、これだけは言わせて」

幸太「ん?」

恵「、、、できない約束ならするな、、バカ」

幸太「、、、」(幸太、恵を見つめながら黙ってる)

恵「バカ、、、ほんっとバカ、、あれだけ一緒にいるって言ったのに、、、どーしてできない約束なんてすんの!」

幸太「、、、ごめんな」

恵「ッ!、、、、こっちこそ、、ごめん、勝手なこと言った。未来のことなんてわかる訳ないのにさ、、」

幸太「、、そうだな、、」

恵「ごめん、、今日は帰るね、、またくる、、」

幸太「あぁ、ありがとう」

恵「欲しいものとかあったらまた連絡して」

幸太「うん、、」

恵「それじゃ、、行くね」

幸太「うん」

               恵病室を出ていく

                           間

幸太(独り言のように呟く)
「これじゃあ、、ドナウ川の非恋伝説じゃないか」

                           間

恵N「3年前、私と幸太は結婚した。たくさんの人に祝われながら、幸せな結婚式ができた。
新婚生活も順調で、お互い共働きだったけど、大きな喧嘩もなく、幸せな日々を過ごせていた。
ずっとこの時間が続くんだって思ってた。
でも、、私は気づかなかった。
幸せな日常の裏に隠されてた代償に。」

恵N「一ヶ月前のある日、幸太の仕事先から電話がかかってきた。
電話先の男性の息が荒かった。
私はなんだか嫌な予感がした。
そして、その予感は的中した。
幸太が心臓の痛みを訴え倒れたらしい。
私は私の心がヒュッと音を立てたような気がした。
大急ぎで、搬送先の病院へ向かった。
するとそこには、呼吸器を口につけ、横になり眠る幸太の姿があった。」

恵N「そして私は、、衝撃の事実を告げられた。
幸太は、、癌だった。
しかも、もう治療不可だという。
寿命は持って4ヶ月いくかいかないか。
原因はおそらくオーバワークや人間関係によるストレスによるものだそうだ。
確かに思い返してみれば、職場の上司が転勤し
新しい上司になってから、幸太の帰りが遅いことが増えた。時には帰ってこないような時もあって
流石に心配になり、心配の声をかけたけど」

幸太「大丈夫だよ!恵と一緒にいるために、頑張ってお金稼いでるだーけ!」

恵N「彼はいつも明るくこう言った。私は彼の優しさや明るさに甘えていた。きっと彼なら大丈夫だって、そーやって思ってた。でも、そんなことはなかった。彼もまた一人の人間だったから。
無理をし続ければいつかは壊れる。
誰もがそうであるように、彼もまた壊れてしまったんだ。」


恵N「ある日お見舞いに彼の会社の後輩が来たときに聞いてしまったことがある。
なんでも、職場に新しく来た上司は、とてつもなくパワハラのひどい人で、残業なんかは当たり前、仕事ができない人には怒鳴り散らす、そんな最低の上司だったと。そして、中でも自分はあまりに仕事ができなくて。そんな時いつも助けてくれてたのが、幸太さんだったんだ。と、、
そんな幸太のことが目についたのか、
上司は幸太に必要以上に仕事を押し付けていたと。それでも幸太は、嫌な顔ひとつせず。黙々と仕事をしていたそうだ。それがたとえどんなに時間がかかったとしても。」

恵N「ある日後輩は聞いたそうだ。
先輩はどーしてそんなに頑張れるんですか?と
すると幸太はこう答えたという。」

幸太「んー?なんでだろうなぁ?、、
でもー、多分、幸せにしたい人がいるからだな。
ずっと一緒にいたい人がいるから、俺は頑張れる。ずっと一緒にいるにはお金がいる。だから働く。約束したんだよ、ずっと一緒にいるって。」

恵N「、、、、涙が止まらなかった。私の、あの身勝手な願いが、彼をずっと縛り付けていたんだ。
私は、知っていたはずなのに、彼が優しすぎることを、、優し過ぎて、辛いことも隠して頑張れてしまう人だということを、、、知っていたのに、、。
学生の頃から、幸太は頼まれごとや面倒ごとを嫌と言えない人だった。よく言えば優しい。悪く言えばお人よしだった。でも、私はそんな彼の優しいところに惹かれて、彼と一緒になった。
大好きな彼の大好きなところなのに、私は
彼の弱みを知っていたのに、、それなのに、幸せな日々に甘えて、そこを知ろうともしなかった。
私の、、、私のせいだ。」

恵N「そして、、その大好きな人は、今私の目の前から消えようとしている、2度と会えない人になろうとしている。
3年前。あれだけ一緒に、二人で頑張っていうこと言ったのに、、
優しい彼は私のために頑張った結果、命を落とそうとしている。まるでドナウ川のルドルフのように、、
恋人のベルタも、こんな気持ちだったのだろうか、愛していたルドルフが川に沈んでいく様子を見ながら、こんな、こんな気持ちになったのだろうか、、、。」

                              間

一ヶ月後

恵N「あれから一ヶ月経った、忘れもしない早朝の3時ごろ、病院から連絡がかかってきた。
どうやら、幸太の容態が急変したらしいのだ。
私は急いで、幸太の病院へと向かった。
あまりに急いだので、パジャマのまま出掛けてしまったことに車を運転している最中に気づいた。
そして、病院につき、病室のドアを開けた先に
いた、、今にも死の川に沈んでいきそうな
私にとってのルドルフ、この世で一番大切な幸太が、呼吸を荒げながらこちらを見ていた。
私は急いで彼の元に駆け寄り、手を握った。」

恵「幸太!!幸太わかる!?私!恵!来たよ!
今幸太のそばにいるよ!大丈夫!?」

幸太「はぁ、、はぁ、、め、、ぐ、、み」

恵「え?なに!?どーしたの!!」

幸太「(咳き込みながら)、、、、机、、見、、て。」

恵「え!なに?つくえ!?わかった!机ね!
、、、、え?何?、、、、これ」

恵N「幸太が言った机の上には、勿忘草を押し花にしたしおりが置いてあった。
私は、幸太が何を言おうとしてるのか、もう、理解できてしまった。」

幸太「、、、、め、、ぐみ、、」

恵「ダメだよ、、幸太、、だめ、、それを言わないで、
お願い、、」

幸太「(恵の頬に手を当てる)」

恵「、、うぅ、、幸太、、」

幸太「お、、れ、を、、わ、、すれ、、ないで」

恵「ッ!、、、、、バカ!バカァ!!そんな、そんなこと言わないで、、辛くなっちゃうって!言ったのに、、」

幸太「あ、」

恵「え?」

幸太「あ、、い、、して、、る」

恵「、、、だめ、、ねえ、お願い!幸太!だめ!いかないで!置いてかないで!私のことひとりにしないで!お願い、、幸太!幸太!!」

幸太「あぐっ(咳き込みながら倒れ込む)」

恵「(手を握りしめながら)ダメだよ、、ダメ、、こんな形でさよならなんて、、絶対に、、ダメだよ」

幸太「、、、、、、ありがとう、、め、、ぐ、、み」

(幸太の恵の手を握る力が抜ける)

恵「!?幸太!!?幸太だめ!お願い!起きて!ねえ!起きて!!幸太、、、、」


恵N「幸太の心電図が、ぴーっと音を立てた。
人生の試合終了のホイッスルとでも言わんばかりに、、冷たくなっていく彼の手を握りながら、私は謝り続けた。」


恵「ごめんねぇ、、ごめんね、幸太、、私が、、私が気づいてあげればきっとこんなことに、、」

恵N「朝日が昇り幸太の青白くなった顔を照らした。日差しは暖かく彼を照らしたが、彼の手が温かくなることはもうない、、
私のルドルフは、ドナウ川に沈んでしまった。
勿忘草を、私に投げつけてこの世を去ってしまった。幸太は最後に、私に幸太という呪縛を残していったのだった。」

                           間

恵N「幸太の葬式は、盛大に執り行われた。
たくさんの人が幸太のために泣いてくれた。
幸太のお父さんお母さん親族はもちろん。
あの後輩くんも、友人も、みんなが彼のために涙を流していた。その様子を見て、私はまた辛くなった。こんなにもみんなに愛されていた人を、わたしは奪ってしまった。私の一緒にいたいというわがまま一つで、、、。すると、絶望しきった私の前に、幸太を担当していた。看護師さんから封筒を渡された。どうやら幸太が書いたもののようだ。死んだ後に渡して欲しいと頼まれていたそうだ。私は今すぐにでも読みたい気持ちを抑え。式が終わるのを待った。」

                             間

恵N「誰もいなくなった式場で、棺桶の中で綺麗になった幸太を見つめた。
そして私は封筒を取り出し封を切った。
一体何が書かれているのだろう、
私への不満だろうか、、一瞬読むことをためらったが、私は読み始めた、、。するとそこには」

幸太N「恵へ、これを読んでるってことは、多分俺は死んでるんだな、まずは、ごめん、
あんなに一緒にいるって何度も何度も言ったのに
こうやって、勝手に一人死んでいっちまう俺を許して欲しい、いや、許してくれなくてもいい
それくらいのことを俺はしちゃったから、
本当にごめん、謝っても遅いよな。本当にごめん。でもさ、多分責任感の強い優しいお前のことだから、俺が死んだのは自分のせいだ、なんて思ってんじゃない?んなことないからね!俺が死んだのは恵のせいな訳がない。恵は恵の仕事を一生懸命頑張ってやってたし、毎朝朝ごはんに弁当、美味しい夕食、妻としてして欲しいこと全部やってくれた。俺に幸せな日常をくれた。
一人じゃ味気なかった日常に、お前が彩りをくれたんだ。恵。ありがとう、ほんとうに、恵に出会えてよかった。幸せだった。
それなのに俺はバカだ、頼まれた仕事は断れない、自分の体調をしっかり管理できない、ほんっとバカなやつだよ俺は。
恵、お前にはよく言われてたっけなぁ、幸太はお人よしすぎって、ほんっとそう思う。なんで俺ってこんなに人がいいのかな?☺︎(笑う)」

恵「、、、自分で言うな、、バカ」

幸太N「多分、この文読んで恵は、バカって言ってそうだな、、でも、寂しいな、お前のバカが聞けなくなるのは、お前の声が聞けなくなるのは、、
3年前に一度あの話したろ?ドナウ川の非恋伝説
あれを話した時の恵の言葉を覚えてる。
大切な人のことを覚え続けるのは苦しいことだって、、お前言ってたっけな。
わかる、、辛いと思う。絶対。
でもさ、俺、考えたんだ。なんでルドルフはベルタに勿忘草を投げたのかって。
それでわかったんだよ。
すげえ単純なことなんだけどさ
そんだけルドルフはベルタのことを愛してたんだよ。めっちゃ単純だし、多分ルドルフは、ベルタが苦しくなるなんて考えてもいなかったと思う。
でもさ、男ならきっとみんなそうすると思う。
自分が愛した人に、ずっと自分のことを覚えていてもらいたい。
男って、結構身勝手だろ?ごめんな、恵が辛くなるのはわかるんだ、でもな、それでもな、
俺は恵に、俺と言う人間がいたこと。
君のことを愛していた人間がいたと言うことを
覚えていて欲しいんだ。
身勝手に約束して、身勝手に消えていく、こんなわがままでどうしようもない俺だけど。
最後にもう一回だけわがままを言わせて欲しい。
俺を、忘れないで、
ごめんな、恵。最後までわがままで、
俺な、結構寂しがりやなんだ。
多分恵に忘れられたら。安心してあの世に行けない気がする。最後までお前に頼り切りでごめん。
でも、この世で一番恵のことを愛してる。
誰よりも、本当に誰よりも、
お前のことを、恵という人を愛してる。
最後になる、ありがとう。
俺という人を愛してくれて、恵という人を愛させてくれて。本当にありがとう
さようなら。」

恵「、、、、ふっ、、ほんっとに、ほんっと、バカなんだから、、、、あぁ、、ぁぁぁああ!」(泣く)

恵N「忘れられるわけがない、こんなにも、愛を受け取ってしまったら、受け止めてきてしまったら、忘れることなんてできるわけがない。
私だって幸太という人を愛してた。本当に、本当に心の底から。あの、優しい声や笑顔が本当に大好きだった。忘れない、忘れられないよ。
幸太の棺桶に突っ伏して私はただ泣いた。
すると、封筒から何かが落ちてきた。」

恵「、、、、ぐすっ、、なにこれ?」

恵N「それはメモ帳ともう一つの勿忘草でできたしおりだった。メモ帳には幸太の字でこう書かれていた。」

幸太N「追伸、このしおりは俺の手作りです、恵にも多分ひとつ渡してると思う。この手紙に入ってるのは、俺用のやつ、、恵1人だけ忘れさせないなんて卑怯だろ?だから、俺もこのしおりを持っていく、ルドルフは、相手に一方的に勿忘草投げただけだけど。俺は、ちゃんと自分も持っていく。
あの世で、恵のことを忘れないように、
恵一人だけに辛い思いをさせないように。
だから、改めて俺のわがままを許してくれ。
このしおりは俺の棺桶に入れて火葬で燃やして欲しい。
、、手紙の方に散々書いたけどさ、愛してる
本当に心の底から、、
それじゃ!さよなら!
愛するベルタ(恵)へ」

⬆️かっこはカッコめぐみと読んでください

恵「ふっ、、、ほんっとに、ほんとのほんっとに、バカなんだから、、、あと、、普通かっこをつけるの逆な」

恵「こちらこそ、、ありがとう、、愛してるよ
ずっと、、」


恵N「棺桶の中の、幸太を見つめながら、私はそう呟いた。
大好きな人を忘れられないのは、きっと、辛いことだけど、彼の言った通り、彼もそれは一緒なんだろう、、彼もまた私のことを忘れられない。
おあいこってやつだ。
彼が死んだことは、私にも少なくとも原因があった。
彼は、優しいから、私のせいではないと言ったけれど、その優しさに甘えてはいけない。
だからこそ、忘れないというのは、私にとっての戒めでもあるのだ。
忘れない、忘れないよ、幸太、私幸太のこと
絶対に」

恵N「翌日火葬が行われた。
ドナウ川ではなく、三途の川へと消えていった私のルドルフは、死後の世界へと沈んでいった。
荷物に、勿忘草を持ちながら
恵という愛すべき人を持ちながら
この世という河岸に取り残された
私というベルタもまた、勿忘草を持っている
幸太という愛すべき人を心にずっと持っていく。
こうして、私たちの非恋伝説は終わった。」

6年後

恵N「あれから、、6年が経った。
月日はあっという間に流れ、私には、新しい愛すべき人ができた。
その人との間に子供も産まれた。
私は幸せだ。本当に心の底から。幸せだ。
愛すべき人が新しくできたとはいえ、
私の心の中には、今でも幸太という、忘れられない人がいる。あれから何年も経つのに、幸太のこともずっと愛している、幸太がくれたしおりは今でも私の愛用品だ。
きっと優しい彼のことだから、今の私を見ても、きっと笑ってくれるだろう。
彼のわがままを聞いてあげたのだから、
新しい幸せを手に入れたいことくらいはきっと許してくれると思う。
あなたもきっと、ドナウ川、いえ、三途の川の底の死後の世界で、私のことを忘れないでいてくれてるんでしょう?」

息子(幸太と兼役)or娘(恵と兼役)
「ママー!見て〜!このお花!ママの絵本に挟んでくれるやつといっしょ!」

恵「わぁ!ほんとだね〜!」

息子or娘「ねぇー!このお花なんて名前?
どーしてママはこのお花が好きなの!?」

恵「んーとね、このお花の名前は、ワスレナグサ
好きな理由はね、、、花言葉が好きだからかな、」

息子or娘「はなことば?なにそれぇ!」

恵「えっとね、お花にはそれぞれ決められた言葉があるの、例えばひまわりだったら、あなただけを見つめる!とかね!」

息子or娘「へぇー!そーなんだ!じゃあさ!このわすれなぐさの花言葉は何?」

恵N「今や、二人の愛すべき人がいる私。
素敵な別れを、幸太が作ってくれたから、
私は前に進めている。
ありがとう、幸太、愛してる。
だからね、幸太、安心して欲しい、
私、これからもずっとあなたのことを忘れない
この花にかけられた、あなたとルドルフの願いを
そして、その願いの言葉を、、、」

恵「んーとね、、、その勿忘草の、花言葉はね、、。」

息子or娘「うんうん!!」

(一息ついてから)


2人「私を忘れないで」

幸太N「そのとき、風が吹いた。」

恵N「勿忘草は、まるで、私はここにいるよと言わんばかりに」

幸太N「風に吹かれて、ゆらりと揺れた。」


幸太N「勿忘草はゆらりと揺れる」





使用するときは、コメントしてくれると嬉しいです!!

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?