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いじわる、っていうか普通のこと

『おいしいごはんが食べられますように』(高瀬 隼子)

  「芦川さんにいろいろ、言えないからいじわるするの?ていうかして
   るの?」

  「してますよ。いじわる、っていうか普通のこと」

  「普通って?」

  「みなさんは芦川さんに優しくしすぎるじゃないですか。わたしは普    
   通にしてます。」

”芦川さんにはしんどくなりそうな仕事をさせないっていうルールがある。
明文化されていない、空気を読んだ先にあるルール。それからそっと外れるだけだ。”

繊細さを武器にして「最強の働き方」をしている弱くて守られるべき存在である芦川さん。一方でその芦川さんの尻拭いをさせられる一人である、仕事ができてがんばり屋の我慢強い押尾さん。

”…あの人は弱い。弱くて、だからわたしは彼女が嫌いだ。”


「強さ」や「正しさ」ではなく「弱さ」が勝利する構図にとことん不気味さを感じる。
自らの「繊細さ」を自己完結ではなく、周囲に押し通すというのはある意味図太くて強い人だ。



 


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