ハーモニー/伊藤計劃

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読了日2019/6/27
「調和」されゆく世界に嫌気が差した少女たちは、自ら死を選ぶ。それを完遂できず大人になったトァンは、突如発生した世界規模大量自死事件に関わっていく。なぜなら目の前で自死を選んだのはかつて自殺に失敗した友人で、さらにその遺言にあったのは自殺に成功したはずの友人だったから。
完全なる人々の平等を求め、突きつめた世界は真の平和を得てしまった。それは「わたし」を放棄すること、意志を意識を捨てること。そうすることで「すべて」が「わたし」で、「わたし」が「すべて」だから。意識のなかったミァハにはそれが嫌悪感あふれる社会だったのに、無理くり作られた意識のせいでそれを肯定するようになってしまった。なんて無様、意識のない人間と思ってしまう。けれど個性を肯定しながら他のみんなと同じが優遇されがちな日本においては、まさしくそうなりつつあるように思える。「わたし」の存在を許さない国。それが幸せな人間にはなりたくない。


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