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幼稚園時代〜後編

幼稚園生時代の1番大きな思い出は、Kちゃんとの間で起こったある出来事だ。

この事件は今でもずっと覚えていて、あのとき、なんでこうしてくれなかった…という親への想いが未だに消えない。

それは、こんな事件だった。

Kちゃんは、同じ団地に住む、一個下の男の子だった。毎日のように一緒に遊ぶ仲で、その日も一緒に遊んでいた。

その日の遊びの内容は、水を含んだ泥んこ遊びだった。

泥んこ遊びが伯仲してくると、今度はお互いに泥団子を作って投げ合いになった。

そして、泥団子の投げ合いをしているうち、私の投げた泥がKちゃんの頭の辺りに命中した。

すると、Kちゃんは泣き出してしまった。

見ると、Kちゃんの頭から血が出ていた。

私は血の気が引いた。

とても怖かった。

Kちゃんの元へ駆け寄り、傷口を水で流し、これで大丈夫?と尋ねたが、Kちゃんは泣いたままだった。

大変なことをしてしまったと思った。

泥の投げ合いで、泥が頭に当たったくらいでは血が出るような怪我はしないだろうから、きっと掴んだ泥の中に、小石か何かが入っていて、それを気が付かずに掴んで投げてしまったのだろう。


そんなことはその当時はわかるはずもなく、とにかくKちゃんを怪我させてしまったこと、それが大変なことをしでかしてしまったという怖さでいっぱいで、しかもKちゃんは泣き止まず血も出たままだったので、恐ろしくて仕方がなかった。

その後どうやってKちゃんと別れたのか、解散したのか、家に帰ったかはよく覚えていない。

家に帰ってきてしばらくすると、母親が帰ってきた。

私は、怖さとショックで口を聞かなかった。というより聞けなかった。母親に自分から告げることもできなかった。ただただ、大変なことをしてしまったという怖さとショックで圧倒されてしまっていた。

口を聞かず、様子がおかしい私をみて、母親は変な子だと笑っていた。

その後、Kちゃんの母親から事情を聞いたのだろう。母親から、こう言われた。

Kちゃんがもし死んじゃったら、あなたは代わりになれないでしょう?

他にもなにか言われたと思うのだけれど、よく覚えていない。

とにかく私が悪いことをした。とんでもないことをした。それがどれだけ悪いことなのか、いけないことなのか、責めるような口調と内容だったと思う。

少なくとも、今に至るまで私はそう受け取っている。

ただ、本当にKちゃんを傷つけるつもりはなかった。

泥の中に石が入っていたのかもしれない。でも、それはKちゃんとの泥んこの投げ合いで勝つために、わざとやったことでもない。本当に石が入っていたとは知らなかった。というか、無我夢中で投げ合っていた、投げていたので、石が入っていたかどうかの感触も覚えていない。

でも本当に傷つけるつもりはなかった。

なのに、あんなことになってしまって、ただただ怖くて、ショックだった。

Kちゃんは仲の良い友達で、その子をいじめたり傷つけたりするような意図は全くなかったんだ。

なぜ、叱る前に事情を聞いてくれなかったのか?

なぜ、わざとかどうか聞いてくれなかったのか?

なぜ、Kちゃんは仲のいい友達で傷つけたりいじめたり、ズルしたり、傷つけて血を出させてまでして勝とうとなんて思ってなかったことをわかってくれない、聞いてくれない、分かろうとしてくれなかったのか?

そんなふうに思うようになったのは、ずいぶん大人になってからだ。

なぜ〜といった想いや、母親に対する疑問や不満はその時は抱いておらず、とにかく自分は悪いことをしてしまったと思った。

今考えると、不満に思ったりわざとじゃないと強く主張しても良さそうな気もする。

その後、Kちゃんのところに謝りに行ったようなり気もするけれど、そのあたりのことはよく覚えていない。記憶があやふやだ。

それと、この件については、父親からは何も言われなかったと思う。何か言われた記憶がない。

というより、この幼稚園生時代の父親の記憶がほとんどない。

一緒に遊んだりどこかへ行ったり、叱られたり褒められたりする記憶も含め、なんにも覚えていない。

自分が親だったら…

まずは自分の子供に話を聞くかもしれない。よく話を聞いて、叱るなりなにか言葉をかけるなりはそれからのような気がする。

本人の口から、何が起きたかを聞いてあげたい。

大変なことをしてしまったと怖がって怯えていたら、まずKちゃんの容体を確認して、大した怪我でないことがわかったら、教えて落ち着かせてあげたい。

そして、ついて行って一緒に謝ってあげたい。

と思う。けれども、自分には子どもがいなく、親になんてなれない、子供なんてとても育てられないだろうと思っているから、本当にそんなことができるかはわからない。

でも、小さい頃の自分がそこにいて、その場に今の自分がいたら、そうしてあげたい。

怖くて怖くて、怯えている小さな自分を抱きしめてら大丈夫だよ、と慰めてあげたい。そして、怖くて謝りにも行けない小さなころの自分と一緒に、謝りに行ってあげたい。

とにかく、そんなことが幼稚園生時代にあって、今でも覚えている出来事のひとつだ。

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