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【読書メモ】「食」から考える発想のヒント

今週の読書メモ。
今週のとか言いつつ毎週書ける自信はないです、もりたです。

以前、会社のイベントでご登壇いただいた松嶋啓介さんの一冊!

外国人シェフとして最年少の28歳でフランスのミシュラン一つ星を獲得。南仏ニースと東京原宿にKEISUKE MATSUSHIMAを経営。フランス芸術文化勲章。

日本が世界に誇るべき松嶋さんが書かれているのは「料理本」ではなく「発想のヒント」の本

内容

高校卒業後、南仏ニースに渡り日本人として初めてフランスでのオーナーシェフとなった松嶋さん。その成功には料理の世界だけではなくあらゆる物事に共通する考え方のヒントがあった。
日本人でありながら若くして海外にフィールドを移した松嶋さん。海外という視点から見た日本人の可能性にも言及されており、非常に学びの多い一冊。

感想

食に限らず色々なところで活きる考え方に通じる話。言葉や物事の成り立ちにまで戻って考えることで物事の本質から考えられる思想を自分自身身につけていきたいと思った。
また自分自身の食に関しても考えさせられる場面が多い。人を良くする「食」をできているのか?食餌にはなっていないか?食生活も見直して行きたいなと改めて考えさせられた。

スペースキー発想法

松嶋さんが色々な着想をえるヒントをどこから得ているのかという話。何かが気になったときにその単語を検索タブに打ち込んでスペースキーを押し続けるそう。そうすることで言葉の真髄が見えてくる
例えば「かたずけ」→「片付け」「型付け」「方付け」と変換される。つまり、「片付け」で雑然とした状態をきれいにしたら、「型付け」で今度はその場をどのように整理するのかの型を付けておく、最後に「方付け」で型がついた物事の方向性をさだめていく。
他にも「風土」「food」(土地や気候に影響されないfoodは存在しない)・「習得」「修得」「収得」(習って得られた事柄を身体に修めれば、必要な情報を収集する感度が上がる)のように色々な言葉を自分の中に落とし込んでいく。

松嶋さんがこの思想方法を身に着けたのは自分が漢字の勉強を怠ったまま海外に出ていったことが大きなきっかけだという。日本語は非常にわかりやすく物事の本質を支えている。
特になるほどなと思ったのは瓜の話。英語ではpumpkin・watermelon・cucumberのように同じ瓜科でも言葉だけを見るとバラバラ。でも日本語であれば全てに瓜という言葉が入って仲間であることがひと目で分かる。
それだけではなくて更に良く見るとその起源まで実は言葉の中には含まれている。
南瓜(かぼちゃ)は南のカンボジアから来たもの、西瓜(スイカ)は西のウイグルから伝わってきた。胡瓜(キュウリ)の胡はシルクロードを渡ってきたということを表している。
このようにして言葉の起源にまでさかのぼってその真髄を知ることが非常に重要。

コンセプト・ディテール・ロジック

もう一つ、松嶋さんの思考方法として独特なのがこの「コンセプト・ディテール・ロジック」の考え方。あらゆる物事はこの3つに分けて考えられる。

例えば肉じゃが
コンセプト:肉のコマ切れとじゃがいも、タマネギ、ニンジン、サヤエンドウなどを酒と醤油とみりんに砂糖を加えて煮る料理
ディテール:地方に寄って肉の種類が変わる。メークインを使うか男爵いもを使うか?野菜の切り方や種類など
ロジック:肉と根菜類の栄養素とうまみ成分が整っている。食感と甘辛い醤油味が冷めても美味しい。

では日本に来たフランス人にじゃがいもを伝える時にはどうするでしょうか?
その場合はコンセプトから話すはずです。肉じゃがを知らない人にはそのコンセプトから知ってもらうことで料理をよく知ってもらえるプレゼンテーションになるはずです。

では、伝える相手が日本人だったとしたらどうするでしょうか?
コンセプトから伝えますか?
日本人なら肉じゃがは自明の料理。であればディテールから話すのが鉄則です。なんでこの肉じゃがは美味しいのか、酒やみりんに妙があるのか?

いずれの場合も最終的にはロジックが説得力をもたせます。
栄養素やうまみ成分からなんでこの調理をするとこんなにも美味しい肉じゃがになるのか?これを説明していくことが出来るのです。

このようにして、「コンセプト・ディテール・ロジック」を意識することで適切なプレゼンテーションが出来る。
よく対象を知らない相手には「コンセプト」から伝えないといけないし、よく知っている相手には「ディテール」から伝えなければならない。その上でロジックを明らかにして説得力を持たせないといけない。

編集処理能力

これからの時代は情報は検索すれば手に入る時代。であれば、情報を持っていることよりも得た情報をどのように編集していくのかという能力が求められる。
松嶋さんはこの能力が日本人には高いはずだということを日本独特の食習慣の話から論を展開する。
日本人は机の上に置かれた様々なおかずを自由な順番で口にする。食卓には自分専用のお箸、ご飯、味噌汁、おかずを取り分ける小皿が置かれて自由に食事を進めていく。口の中が脂っぽいなと思ったら漬物やお茶を飲みリフレッシュ、おかずの味が濃ければご飯を頬張って調整します。これはフェラン・アドリアが言ったところの「口内味覚」、つまり一つの食事をとっても自由に自分の口内で味わいを調整しながら食事をするのです。
お箸についても海外のお箸とは違って先端が細くなっており、つまむ・切る・挟む・載せるなど食卓で調理をしながら食事をするのに適した形になっている。
一方でフランス料理などは前菜や主菜が順番に提供される独裁的な食事。何品もの料理が民主的にならぶ日本の食卓では極めてクリエーティブなことが日々行われているのです。




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