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【1分小説】夢を見てたい

お題:夢を見てたい
お題提供元:スマホアプリ「書く習慣」より
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 私は今をときめくベストセラー作家。

 ネットに投稿していた小説が、ある日インフルエンサーの目に留まりTikTokで紹介され、そこから人気に火がついて。

 また勉強サボってそんなことして、なんて家族から呆れられて、でも小説を書いている時は私で私でいられたから。

 だからたくさんの人に支持してもらえるのは自信につながる。作品に寄せられるイイネの数が多ければ多いほど、家族を見返せる気がしたから。

 ふう、とため息をつくと、マッチ売りの少女みたいに、妄想の灯火は消えた。

 そんなこと、あるわけない。

 本当は、イイネなんてひとつももらえていなくて。たまにイイネしてくるのは、近しい友人くらいで。それもきっと、友達付き合いの一環だろうし。

 家族の言うとおり、大人しく勉強していた方が将来のためにはなるんだろう。
 誰にも読んでもらえない小説を書き続けてなんの意味がある。
 やめちゃおうかな。

 くすぶる妄想の灯火を胸に、冷え切った布団に入って眠りにつく。

 私は知らなかった。眠った後に、ポン、とスマホに通知が来たこと。
 それはおなじみの友人からで、たった一つのイイネと、たった一文のメッセージ。

「やっぱりあなたの書く小説が好きだよ。この作品の続き、もっと読みたいな」