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【1分小説】明るい殺人犯

お題:「明るい殺人犯」
お題提供元:即興小説トレーニング(http://sokkyo-shosetsu.com/)
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「刑事が来てる」

 このきらびやかな劇場で、今一番暗い場所は、客席でも控室でも物置でもない。
 強い照明が照らす舞台のその脇、すなわち、今私が立っている場所だ。

 私の目の前に広がる舞台には、誰もいない。照明の明かりが、主役を照らすのを今かと待ちわびている。
 シンとしていても、満員の客たちの熱気が、照明の熱と共に私に伝わってくる。

 背後から、彼が私の肩に手を置いた。ぞっとするほど寒い暗がりから。
 先ほど彼女を殺めたその手からは、何の動揺も伝わってこない。同じ場所にいた私の手は、これほどまでに震えているというのに。

「いつも通りだ。何もなかった。何も見なかった。お前は今から、明るくて、希望に満ち溢れた姫君だ」

 その冷たい手が、私の背中をおした。
 私はひとり、舞台に立った。