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BOOK REVIEW vol.087 「頭がいい」とはどういうことか-脳科学から考える

今回のブックレビューは、毛内拡もうないひろむさんの『「頭がいい」とはどういうことか-脳科学から考える』(筑摩書房)です!

著者は脳科学者の毛内拡さん。“脳科学の本”と聞いたときの第一印象は、「難しそうだけど、私に理解できるかな」でした。でも読み始めてみると、そんな心配は杞憂だったことがわかりました。“脳科学”という学問分野に今までまったくご縁がなかった私でも、じわじわと興味が湧き始めるほどにわかりやすい解説。そして何より、脳科学の観点から紐解かれる、『「頭がいい」とはどういうことか』というテーマがとても面白かったです。

「頭がいい」とは、IQや記憶力だけでなく、感覚や運動能力、アートと創造性、他者の気持ちがわかる能力なども含まれる。どんな仕組みで良くなるのかを脳科学の観点から解説する。

『「頭がいい」とはどういうことか-脳科学から考える』より引用

「頭がいい」とは、いわゆる「テストで高得点がとれる」とか「円周率をすべて暗記している」ということだけではないとわかったとき、じつは気持ちがものすごく前のめりになりました(笑)私自身、学生時代は勉強に打ち込むこともなく、「頭がいい」というワードとは縁遠いタイプ。今回、脳科学的に見る「頭がいい」の範囲が、感覚や創造性、他者の気持ちがわかる能力などにまで広がっていると知り、冒頭部分ですでに「へぇ〜!」という大きな驚きがあったのです👀✨

約250ページにわたり、たっぷりと綴られた解説の中には、興味深い項目がたくさんあります。その中でもとくに面白かったのは、「アストロサイト」と呼ばれるグリア細胞のお話。このnoteを読んでくださっている方の中には、“星読み”に興味がある方が多くいらっしゃるかと思うのですが、「アストロ=星」ということで、なんと“星の形”をした細胞があるそうなんです!そして、このアストロサイトはとても重要な役割を担っており、なおかつ、とてつもなく働き者。その活躍ぶりを知り、とても驚きました。

このアストロサイトの働きの一つに、「脳の老廃物を洗い流す」があるそうなのですが、“脳の老廃物”と聞いて、私がすぐに思い浮かべたのは“アミロイドベータ”と呼ばれるタンパク質のこと。このアミロイドベータの脳への蓄積はアルツハイマー病の原因とも言われています。じつは3年前に亡くなった私の母は、50代後半で若年性アルツハイマーに罹りました。今回、アストロサイトという細胞が、アミロイドベータの排出に関わっていると考えられていること、そして多くの脳の疾患には、アストロサイトの“機能不全”が関与していることが判明し始めているというお話を知り、とても関心を持ちました。この先、もっとアストロサイトの研究が進められることによって、アルツハイマー病に効果のある新薬ができるかもしれない、という期待が膨らみます。きっと簡単なことではないけれど、そうなるといいな。そして一日でも早く、脳の病に苦しむ方とそのご家族が減るといいな、と願うばかりです。

起きている時はもちろん、睡眠中も稼働してくれている脳。ひと時も休まずに膨大な情報を処理してくれている脳に、あらためて感謝しました。今も、本を読み、感じたことを言語化し、両手を動かしてキーボードで文字を打てていることも脳の働きのおかげ。思い返すと、このブックレビューも最初は1冊を読むのに3〜5日、書くのにも3〜5日かかっていましたが、少しずつペースが早くなり、今では約1日(内容によりますが)で読み終え、数時間でレビューが書けるようになりました。それも脳の働きのおかげなのかな?と思っています。
今回、脳科学の観点からみた「頭がいい」とはどういうことなのかという解説を読み、あらためて脳の不思議さとすごさ、そして脳科学の世界の面白さを知ることができました。多くの学びをありがとうございました。

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