ドラマ 「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」 シーズン1〜それぞれの生き様と死に様
前々からその評判をnoteでも読んでいて観たいと思っていた、アマプラ・オリジナルドラマ「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」。
脚本は「コンフィデンスマンJP」シリーズや大河ドラマ「どうする家康」でも活躍中の古沢良太さん、「ドクターX ~外科医・大門未知子~」シリーズ、「緊急取調室」シリーズなどを手がけた香坂隆史さん。
国際霊柩送還士とは、海外で亡くなった方のご遺体を国境を越えて遺族に送り届けるという、実在する職業。
このドラマでは、ただ送り届けるだけでなく、そのご遺体を保存処理または必要に応じて修復(エンバーミング)死化粧を施しなるべく生前の姿に近付ける、さらには遺族の心に寄り添うグリーフケアまでを担う、身体的にも精神的にもとてもハードな仕事だという事が、全編に渡り実感出来る。
舞台となるエンジェルハース社の社長・伊沢那美役の米倉涼子さんは、気っ風のいい姐御肌で、人情味あふれ頼りになるカッコいい女性像にピッタリ。しかしその影では、自身も愛する恋人(向井理さん)を海外で亡くし、8年たっても未だ対面出来ていないというトラウマを抱えている。
会長・柏木(遠藤憲一さん)は、金にがめつくコワモテでその筋の親分みたいだが、那美の繊細な部分も理解している長い付き合いの仕事上のパートナーだ。
物語の語り手となるのは、松本穂香さん演じる人生に迷える新入社員の高木凛子。
他にも、修復担当の柊(城田優さん)、アクの強い社員たちの中和剤のような存在の運転手・田ノ下(徳井優さん)、ゴシップ好きの松山(野呂佳代さん)、チャラい感じの矢野(矢本悠馬さん)と、社員の面々も個性派揃い。
個人的に印象に残った回を挙げるとすると、
第一話の、マニラのギャング同士の抗争に巻き込まれ命を落とした陽平(葉山奨之くん)の話は辛くて、母親(麻生祐未さん)の姿に自分を重ねずにはいられず胸が苦しくなり、特に今、中二病真っ只中の反抗期で、次から次へとやらかし中の息子を見ていると、もしも将来、息子が家を飛び出し海外を放浪した挙句にこんな事になってしまったら…と想像してしまい、心がザワザワした。
息子と葉山奨之くんの笑った時の雰囲気が何となく似ていることもあり、息子が隣にいるにもかかわらず涙が止まらなくなってしまい…勝手に死んだら許さないからね!と息子を突然ハグし、意味の分からない息子は、母ちゃん何する!やめろよ!と、私の腕の中でもがいていた(苦笑)
幼い頃の陽平と母のエピソード、最後の陽平の行動の理由が明かされると、なおさら胸が締め付けられる。
陽平!どうしてお母さんの元に生きて帰って来なかったんだ!
この親不孝者〜(号泣)
最終話の凛子と草刈民代さん演じる母・塔子との確執も、自分と母との関係を思い起こさせた。
私は凛子みたいに、やることなすこと母に全否定されていたわけではないけれど、あなたはやれば出来る子なのに…みたいな事はよく言われ続けていて、それは母に認められていないというか、母の望むような方向に進まない自分じゃダメなんだ、と暗に言われているようで嫌〜な気持ちになり、ずっと母に反抗し続けていた。
どうしても我が子を愛せない親はいるし、その事に悩んでいる人もいる、というのは本当だと思う。塔子も人知れず悩んでいたようだが、彼女なりに娘・凛子のことは愛していたのではないか、と思った。
それにしても、余命宣告されているにもかかわらず、"死ぬまでにしたいことリスト"を自ら叶えようと海外にまで飛んだ母・塔子の行動力には、尊敬の念すら抱く。実際に自分が娘の立場だったら、たまったもんじゃないけれど…。
最期まで凛として信念を貫いた母親像を体現した、草刈民代さんも素敵だった。
シーズン1のラストは、海外で事故死したとされている恋人・幸人が、実は生きているかもしれない、という情報が刑事から那美にもたらされ、意味深な終わり方だった。
当然シーズン2に続くと思われ、どうなるのか今か今かと期待している。
それにしても、今回一時帰国したものの、再度流行り病に罹患してしまった自分には、あまりにジャストタイミングで観たドラマだった。
もし、このまま日本で自分がどうにかなってしまった場合、自分は日本で埋葬されるのか、それとも家族と住む居住国に埋葬される方がいいのか。
そもそも私は、自分が死んだら墓はいらない、散骨してほしいと思っているのだけど、その場所も二つの国のどちらなのか?
自分が死んだ後のことについても、いろいろ思いを巡らせてしまった。
このドラマには、一話一話、登場人物それぞれの生き様と死に様があり、それは実人生でも同じことであり、一話観るごとに涙が溢れ、病の体に籠っていた熱が少しづつ抜けてゆくようで、観終わったあとは不思議に浄化されたような心待ちになっていた。
自分はどんな人生の終焉を迎えたいのかーーー
そんなことも考えさせられたドラマだった。
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