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デザイン思考とアート思考(再考)

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これまでnoteで執筆した「デザイン思考とアート思考(再考)」関連の記事を集めています。
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2022年6月の記事一覧

デザイン思考と意味形成 PARTⅣ

デザイン思考と意味形成 PARTⅣ

 ここでは本編⑪のところで触れた、エクストリームユーザー(extreme user)を活用したデザイン思考について考えてみたい。デザイン事務所のIDEOが提唱するデザイン思考には、観察対象としてエクストリームユーザーがしばしば登場するが(増田,2018)、その中でも、特に情報感度の高い「イノベーター」や「アーリーアダプター」などを対象とした場合には、DDIと同じような成果が得られる可能性がある。

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デザイン思考と意味形成 PARTⅢ

デザイン思考と意味形成 PARTⅢ

 デザイン思考でも確かに、意味のイノベーションを起こせる可能性はある。ただ、このように書いてしまうと、「デザイン思考=デザイン・ドリブン・イノベーション」との誤解を招く恐れがある。この等式は部分的には成り立つにしても、完全にはイコールでつなぐことはできない。両者の間には依然として、大きな違いが残っているからである。それらの部分を混同すべきではない。それにもかかわらず、欧州勢の先行研究ではその辺りの

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デザイン思考と意味形成 PARTⅡ

デザイン思考と意味形成 PARTⅡ

 これまでの話をまとめると、デザイン思考とは結局のところ、ソリューションよりも、問題の定義の仕方で差別化を図るためのアプローチと考えることができそうである。また、実務家の中にも、以下に示すように、デザイン思考における問題定義の重要性を指摘する人たちが一定数存在する。

 
 そして、そのような見地に立てば、デザイン思考でも意味のイノベーションを生み出せる可能性はあると言え、デザイン思考に意味形成を

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デザイン思考と意味形成 PARTⅠ

デザイン思考と意味形成 PARTⅠ

 前回述べたように、欧州ではデザイン思考でも意味形成(ないしは、意味のイノベーション)は可能とする論調があるが、そのような理解の仕方は本当に正しいのであろうか。通常、デザイン思考は創造的とはいっても、その本質はあくまで問題解決であり、意味形成とは関連が薄いとされているし、実際、既存研究でもそのように取り扱われてきた。そもそも、Verganti(2009)が提唱した「デザイン・ドリブン・イノベーショ

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