読書記録77 2024年3月の本まとめ

新年度が始まりました。大学院2年生、大学院も折り返しで震えております。

先月読んだ本を紹介します。


1.シャーロック・ホームズの凱旋(2024)森見登美彦

待望の新作。
森見登美彦自身がスランプに陥ったのをワトソンとホームズに仮託している入れ子構造。ヴィクトリア朝京都と「ロンドン」も天地あべこべになっていて、『熱帯』『四畳半』を思わせる森見登美彦お得意のパラレルワールド。創り上げた「ロンドン」から抜け出して戻ってきた「ヴィクトリア朝京都」もまた創作であり、さらにそれを読んでいるこの世界ですら創作であるかもしれないと思わせる。深夜1時まで読んでしまって、やはり小説はいいものだなと思う。

2.頭のいい人が話す前に考えていること(2023)安達裕哉

同時並行で7の『LISTEN』を読んでいたので、リンクする内容で面白かった。
浅い人間になっている気がして自信を失っていたので、本書に書かれていた①情報リソースをしっかり②言葉の定義を厳密に③成り立ちを知る、を意識して「考えられる人」になりたいと思った。話し方、伝え方だけ上手くなっても、内容が伴わなければ伝わらないのは本当にそうなので、考えをしっかり練ることを社会人になってからも頑張りたい。頑張らなくても自然にできるようになりたい。

3.おとな小学生(2013)益田ミリ

子どもの頃読んだ本を振り返りつつ、子どもの頃の思い出が短いエッセイ+見開き漫画になっている。表紙がぐりとぐらの色合いで可愛い。

4.鴨川ホルモー(2009)万城目学

解説で、「『鴨川ホルモー』ってどんな本だったけ?とわからなくなる人はいない(くらい強烈な本)」的なことが書いてある。本当にそうだと思う。私は割と適当に本を読んでいるので、タイトルを見ただけでは内容が思い出せない本が結構ある。が、この本は多分森見登美彦の『夜は短し』くらいちゃんと覚えていそう。
同じく京都を舞台にして、同じような世界観で物語を描いていて、さらに二人は仲良しで、二人に加えて一緒に忘年会をやる上田誠とは舞台化でズブズブの仲という永久物語機関にニヤニヤしてしまう。『鴨川ホルモー、ワンスモア』の舞台を観に行きます!!楽しみ。

5.だいたい人間関係で悩まされる #なんで僕に聞くんだろう 。(2023)幡野広志

それにしても人生相談って色々あるんだなと思った。銭湯で湯上がりに読んでいたので、付箋を持っていなくて、気になったところがどこだったか見つからない。
最終回で、幡野さんが人の悩みは全て人間関係と言っていて、これはアドラーが言っていた言葉にも通じるが、幡野さんは人間関係が根本原因ではなく、人の目を気にしていることが根本だと言っている。比較、羨望、嫉妬、競争、常に誰かと比較してランキングして1位だ2位だと騒いで、1位ならその立場を死守しようと力み、2位なら頂点に立てないと嫉妬しやっかむ。どっちの立場も中高と続けてきたが、当時はいかに死守するか、次は追い越すかに躍起になっていたなあと。それはそれで「勝つべし」と凄まじい勢いで勉強してて今があるとも言える。「有益な競争」と「不毛な競争」があるんだろうな。広範囲に面白いを見つけて、日々に楽しさを積み重ねていきたーい。

6.他人の悩みはひとごと、自分の悩みはおおごと。#なんで僕に聞くんだろう。(2020)幡野広志

「誰かの役に立っているという実感はすんごい大切」 相談してくる人はそれぞれ違くて、それぞれの事情を抱えているのに、その一人一人の状況を想像し、考え、予測し、回答をする幡野さんの体力と想像力がすごい。 大学生の相談で一番多いのは「何がしたいか分からない」だという。就活で、初めて自分の選択を迫られ悩むようだ。

7.LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる(2021)ケイト・マーフィ

これを読んでから、人の話を聞くときにたくさんの発見がある。「私今話をそらしたな」「上の空で聞いてたな」「この人自分の話にいつも持っていくな」など、「聞く」という行為の解像度が一気に上がった気がしている。研究の引用などが多くて、読み進めるのが結構大変だったのだが、読み通して良かったと思える本。
「聞く」ということにまつわるたくさんの話が盛り込まれているので、全体にストーリー性はなく、読んだ後「結局何が書かれていたのか?」と聞かれると答えるのが難しい。
ただ「聞く」という態度が人間にとっていかに大切で、それなのに私たちは日々いかに人の話を聞いていなくて、誤解したりされたり怒られたり泣いたりしていることがよくわかる。意識するだけで話を聞く態度や質問するやり方が変わってくるし、楽しくなるので読んでみることをおすすめしたい。

8.ホルモー六景(2010)万城目学

鴨川ホルモーのスピンオフで、本編を読んだ人間からすると待ってましたが詰まってる一冊。第三景のもっちゃんと、第五景の丸の内サミットが特に好きだった。もっちゃんは伏線がわかりやすくてニヤニヤしてしまうけど、安倍と結婚相手が出てきてあれ?となって、再び納得。楽しいなあ〜。森見登美彦に負けず劣らず京都を使い倒し、時空の歪みを使い倒し、鬼を出没させやりたい放題である。

9.この人から受け継ぐもの(2010)井上ひさし

井上ひさしが宮沢賢治、丸山眞男、チェーホフなど影響を受けた人物について語っている本。短編のようで読みやすい。特に宮沢賢治の話が面白かった。「一人の人間の生き方として、ナントカ株式会社の社員であるというだけではだめ」「ある会社に入り、その会社に全部捧げてしまって吸い取られて放り出されるというのではなくて、会社の人間であると同時に、自分の好きなことをきちっとやりながら、地域ともつながっていくという生き方を、いま、現にわれわれは要求されているし、人間はいろいろな多面体となって生きていかないといけないということを教えてくれる」この本の出版は2010年だが、講演は1989年に行われた。その頃から、会社ではなく職能をと言われてきているんだと知った。

10.おうちワークの文具術(2022)髙橋拓也

3月末に机周りや物置を整理していたときに読んだ本。リモートワークや大学生の家での作業に使えそうなアイテムがたくさん載っていて参考になる。使いきれないアロマオイルが家にあるので、ここで紹介されていたMARKS&WEBのアロマウッドを買って使いたい。あと、腰痛予防のイスがとてもコンパクトで魅力的だった。noteの平野さんが買っていたタイマーも紹介されていて、やっぱりいいのかなーなんてすぐに影響されそうになっている。

11.東京都同情塔(2024)九段理江

「多様性」を受容するという綺麗事ばかりを並べる社会への批判なのかなと思った。朝井リョウの『正欲』を読んだときも同じような感覚になった。「他人を理解できる」と思うのは傲慢だけど、「他人は理解できない」と諦めるのは違う。理解できないと思うと、他人の言っていることが分からなくなり、どんどん会話ができなくなってしまう。言葉の持つ強さと弱さを捉えている。


3月は感想が長くなる面白い本が多かったです。悩んでいる時には悩んでいることがわかる本が並ぶのが面白い。

今月も色々読むぞー。

かしこ

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