【内容一部公開】SDGsやスマートシティなど、注目の話題にも触れたまちづくりの入門書――近刊『入門 都市計画(第2版)』
2023年11月中旬発行予定の新刊書籍、『入門 都市計画(第2版)—都市の機能とまちづくりの考え方—』のご紹介です。
同書の一部を、発行に先駆けて公開します。
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第2版まえがき
本書は、2014年10月に上梓した初版本から内容を社会の変化を見据えて大幅に加筆し、またカラー化を行った改訂版となります。初版本は10刷を重ね、筆者の想像を超える多くの方にご愛読いただき、また改訂に向けての応援メッセージをいただいたことにまず御礼申し上げます。
テレビや新聞を眺めてみると、都市にかかわるニュースや話題が必ず毎日どこかで取り上げられています。それらは商店街の活性化の試みや地域の環境づくりの話題であったり、住宅の空き家問題から防災対策に至るまで、実に多岐に渡ります。そして、それらはいずれもわれわれの生活に大きく影響することばかりです。また、その内容は時代の流れに応じて大きく変化しています。たとえば、地球環境への配慮や、COVID‒19感染拡大に伴う人流変化、SNSを通じたまちづくり活動などは、過去には想像だにされなかったことです。これら都市にかかわる様々な課題を的確に把握し、よりよい将来を実現するために、都市そのものや、そこで暮らす人たちに対して働きかけを行う行為が「都市計画」です。
都市計画は、「数学」や「物理」といった学問などと比較すると、一見誰にでも取り組めそうな簡単なことに思われるようです。しかし、将来を的確に読み、現状を客観的に理解し、そして有効な方策を考案することは、きわめて高度な専門性が必要とされます。また、そのようなプランニングといわれる能力は、一度身につけると都市計画の専門にかかわらず、広く社会の中で様々なシーンにおいて活かすことが可能です。本書は、そのような素養をなるべく楽しんで誰にでも身につけていただけるよう、最新の都市計画に関する知識と話題をわかりやすく整理したものです。
なお、優れた都市計画の教科書はすでに数多く出版されています。しかし、それらはおもに都市計画に関連する既存の制度を解説することに主眼が置かれています。制度をきちんと網羅しようとすると、現在ではほとんど使われなくなった制度もある反面、追加される制度もあるので、教科書はどんどん分厚くなっていきます。また、教科書に書いてあることとして現在の制度を最初に頭に入れてしまうと、人間というのは不思議なもので、その制度が正しいという前提のもとでその制度を守るための行動を取るようになります。プランニングにおいて、このような思考停止はもっとも避けなければならないことです。既存の制度をなぞるだけでは、現在の激しい社会変化の中で本来行うべき都市計画の改革が実施できなくなっているということを、まずわれわれは認識する必要があります。
以上のような問題意識から、本書では制度解説は可能な限り最小限に抑え、その反面、具体的な事例を多く交えるようにしました。今後のことを考えるうえで、必ずしも成功例とはよべない事例も学習のために多く取り入れたことも、既存の教科書とは大きく異なる点です。社会が変わっていく中で、どう都市計画に対する「考え方」を変えていく必要があるのか、そしてその手掛かりをどうつかむのか、そのヒントを提示することにむしろ本書は重点を置いています。最初に学ぶ機会において、志高く発想を自由に広げられるようにしておくことは、とくに都市計画の専門家になる人にとってはきわめて大切な要件であると考えるからです。また、都市計画を将来専門としない人にも本書を手に取っていただけるよう、話題を厳選するとともに、平易な解説を心がけました。
改訂版として加筆や内容の改訂を行ったところとして、まず社会のデジタル化に対応して新たにスマートシティやメタバースに関連する11章を設けています。また、SDGsや脱炭素をめぐる最新の話題、およびCOVID‒19の感染拡大やオンラインワークに関する影響についても、最新の調査結果を交えながら解説を新たに加えています。さらに、各図表などの数値データなども、最新のものに置き換えています。一方で、まだ整理が不十分な点や私見に基づく不勉強な記述も残されているかと思い、皆様のご批判を得ることで引き続き内容の改善を図っていきたいと考えています。
(後略)
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