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他段階ないものねだり

商品企画の本質はないものねだりです。
他社で売れてるアレが欲しい、というのは企画ではなく購買に過ぎません。
仕入れて販路に流せばビジネスにはなりますが、そこに企画の余地はありません。
企業としての信念もないことでしょう。
世の中にないから欲しい、ないから売れる、それを見つけるのが商品企画の仕事であり、企画者たる由縁です。

そんなないものねだりの「ないもの」はいくつもの段階に分かれます。
その深さによって商品としての価値が変わってきます。

一番浅いのは「同一のものがない」です。
コモディティ化した市場において差別化できるアイデアがない為、デザインに頼る場合です。
同じ機能を果たすものは無数にあるけれど、この製品は唯一無二である、という弱い状態です。

次の階層には「同じ機能がない」が来ます。
いわゆる差別化で仕様を変えたり足したりしたものです。競争環境の中では優位になりますが、顧客にとってその競争に意味があるかはよく考えないといけません。

更に深い階層は「同じ提供価値がない」です。
代替性のない価値の提案、潜在ニーズを捉えたアプローチになります。ここには新しい気付きや発想の転換が必要になってきます。
注意すべきは代替性がないことです。
多くの場合、同じ業界、同じカテゴリーでの差異を見てしまいますが代替性の有無は業界を超えることを忘れてはいけません。

最も深い階層にあるのは「同じ概念がない」です。
唯一無二の価値提案ではなく、課題や価値の創出になります。
それが生まれるまではそれが必要だと思ってもいなかったもの、手に入れて以降はなくなることが想像できないもの、という感じでしょうか。
ここまでくると市場性の予測は難しく、信念に基づく行動が起点になります。

あなたがもし商品企画をしているなら、どの階層のないものをねだろうとしているでしょうか。
一二階層目でしかないようであれば、もう一度考え直してみることをお勧めします。それはあくまでも作り手の都合が優先されているのですから。
三層目はとても魅力的な企画を進めていると自信を持っていいでしょう。
四層目まで来ていたら注意が必要です。
本当にそこにニーズはあるのか、進める覚悟はあるのか、今一度振り返ってみましょう。
もしかしたら全力の空振りになるかもしれません。

どの階層にいても気落ちする必要はありません。
世の中には無い袖は振れないという言葉がありますが、企画の仕事の醍醐味はは無い袖の魅力を語って袖を生み出すことにあるのですから。

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