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イギリス文学

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#海外文学のススメ

ウィリアム・モリスの小説、読んだことある?|絵画と文学

ウィリアム・モリスの小説、読んだことある?|絵画と文学

ウィリアム・モリスの手がけたデザインが一大ブームとなって久しい。最近、100円ショップにまで《いちご泥棒》をあしらったグッズが登場していておどろいた。

モリスといえばあのテキスタイルが真っ先に思い浮かぶ方も多いと思うが、今回取り上げるのはモリスの作家としての顔である。

ウィリアム・モリスってどんな人なの?

モリスはたしかに芸術家であるが、実業家、作家などなど二足の草鞋どころではない状態で多忙

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『ダーバヴィル家のテス』の伝統と貨幣経済の狭間

『ダーバヴィル家のテス』の伝統と貨幣経済の狭間

批評について勉強しようと思って、放送大学の教材『文学批評への招待』を読んだ。
『ハムレット』についての記述もとても面白かったのだけど、

トマス・ハーディの、あのどこまでも救いのない小説『ダーバヴィル家のテス』についても記述があったので残しておきたい。

許容されるダブルスタンダード

テスの生まれ持った純粋な性質と美貌が災難を招くこの物語。

彼女の父親、貧農のジョン・ダービフィールドは自分が「

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なぜ学者ではなく聖母を選ぶ?〜『ロモラ』を読んで雑記〜

noteで何度も取り上げるほど、私はジョージ・エリオットが大好き。
今回はそんな彼女の唯一の歴史小説で、フィレンツェを舞台にした壮大な物語『ロモラ』の古本を取り寄せ。

「認められなかった女」が「聖母」となる

ロモラは豊かな教育を受けながらも、女であるという理由で、研究の継承者として父に認められない。
また、語り手に「父の世界しか知らない無知な娘である」と評される。

そして彼女は「カッサンドラ

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女性によるイギリス小説の「愛すべき奥様」たち

女性によるイギリス小説の「愛すべき奥様」たち

女性作家が描く愛すべき奥様、もしくはオールド・ミスって案外多いのではないかと思う。
キーパーソンとなるそんな女性たちって、コミカルだったり、欠点があったり。でも、どこか憎めない。
イギリス小説に登場する奥様たちを、私の好みで紹介します。
(既婚女性を奥様、と呼ぶことについては異論は認めます)

孤独な主人公と打ち解ける奥様

ジョージ・エリオットの中期の作品である長編『サイラス・マーナー』。ドリー

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オースティンの痛烈な皮肉を楽しむ〜『自負と偏見のイギリス文化』より〜

オースティンの痛烈な皮肉を楽しむ〜『自負と偏見のイギリス文化』より〜

映画『アンナ・カレーニナ』でキーラ・ナイトレイの存在を知った。単純に華やかな顔立ちに目を引かれたのだ。
監督ジョー・ライトと彼女の共演作の多いこと!

その後他の作品も見てみると、個人的にはジェーン・オースティン『自負と偏見』のエリザベス役の方がはまっていると感じた。
最後にエリザベスの父親が愛娘の結婚を認めるシーンなど、こちらも泣いてしまった。

しかしこのお父さん。娘の結婚にはかなり無頓着。妻

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ヴィクトリア朝の小説の「魔性の女」

ヴィクトリア朝の小説の「魔性の女」

ヴィクトリア朝という、イギリス史の中でもかなり厳格な時代の小説を専攻していたのに、私はファム・ファタルが大好きである。ファム・ファタルとは、魔性の魅力をたたえていて最終的に男性を破滅に追い込む女性のこと。

ファム・ファタルたちはイギリスにも?

『椿姫』をオペラで知ったのち、原作であるデュマの小説を読んで、作中のファム・ファタルであるマルグリットにどハマりしてしまった。

その後も『マノン・レス

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