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林檎飴 凛子side

何か帰るの面倒になっちゃったなぁ。

飲みに行くにしても、お腹空いたし…

凛子は、駅に向かって歩きながら思案顔だ。

あっ…

健兄んとこ行こう!

凛子は、会社から徒歩圏内にひとり暮らしをしている兄のところへ遊びに行く事にしたようだ。

兄が帰っていなくても、合鍵を渡されているので問題ない!

凛子がよく泊まりに行くので凛子用の部屋もあるのだ。

そうと決まったらソーダとトニックウォーター。

あとは…

何かおつまみ買って行かないとね。

どうして、凛子が酒ではなくソーダを買うのかというと…

兄の部屋には沢山の貰い物の酒があるが、下戸の兄は酒が飲めない為、酒を割る為のソーダ等は常備していないのである。

今から行くから何かご飯お願いします!!とメッセージを打つと、凛子はコンビニに吸い込まれていった。

このコンビニは品揃えがいいから好きだなぁ。

家の近くだと、品揃えが違うんだよねぇ…

オフィス街にあるのと、住宅街だと需要が違うんだろうなぁ。

凛子は、ソーダとトニックウォーター、コンビニ限定のビールを数本と新発売のお菓子とミックスナッツをカゴに入れるとレジへ向かう。

会社に近いからか、顔見知りがチラホラいたので軽く目礼だけして店外へ。

わぁ…

さっきのふたり、今からどっちかの家にお泊まりって感じだったなぁ。

付き合ってたの知らなかった!

ウワサでも聞いた事なかったから、コレは誰にも言わない方がいいのかな。

まだ、店内で仲良くお菓子を選んでいる営業部の先輩ふたりを眺めながら同期からのメッセージに返信をしていると…

「凛子!

こんな遅くにひとりで何してるんだ!

来る時は迎えに行くっていつも言ってるだろ?」とお怒りの過保護な兄が迎えに来ていた。

「えーっ。

さっきまで残業してたけど?

今から帰るのもダルいから健兄のとこに行こうと思ったんだけどダメだった?」

凛子は、お怒りのご様子の兄をなだめるべく、しおらしい顔で兄を見つめる。

すると、10秒もしないうちにいい笑顔に変わった兄に促され車に乗り凛子は車で20分程の自宅に送られるようだ。

今夜は兄のところで鍋パーティーが開催されているらしく、私を知らない男性メンバーもいるから泊まらせられないという事らしい。

差し入れに買った物をガソリン代と言って押し付けると、凛子はみんな寝静まっているであろう家の鍵を開けた。

玄関と廊下の電気はついているが、リビングの電気は既に消えていた。

早寝早起きの両親は、10時には寝てしまうのだ。

リビングの電気をつけると…

ソファで寝ていた愛猫のマールが、にゃあぁんと鳴いてお菓子を要求してきた。

なによぉ、あんたにあげるもんなんてないわよ?

そう言いながらバッグの中をマールに見せた。

凛子がオヤツをくれる気がないと判断したマールは、諦めて寝る事にしたようだ。

バッグの中からお弁当箱やマグボトルを洗う為に取り出すと、葉山裕介から渡された食べかけの林檎飴の存在を思いだした。

この林檎飴どうしよう?

食べるのもちょっとなぁ…

葉山君の食べかけだし…

悩んだ凛子は、コンビニの袋から出した溶けかけの林檎飴をジップロックに入れかえ冷凍庫に入れた。

冷やして固めたらいいよね?

せっかく葉山君がくれたんだから、捨てるのも悪いし…

そんな言いわけをしながら、凛子は冷蔵庫から出したビールを片手に2階にある自室へ。

ゆったりとした部屋着に着替えるとソファに座り、ビールを飲みながら最近見ているシリーズ物の海外ドラマを見始めるのだった。

寝落ちする前にメイクだけ落としとかないと…

そう思いながらも、何回も寝落ちしそうになり、メイク落としシートを手にした頃には真夜中過ぎであった。

その頃、凛子が冷凍庫にしまっておいた林檎飴はバイト帰りの弟に美味しく頂かれていたようである。

葉山裕介は、残念ながら凛子ではなく凛子の弟と間接キスする事になってしまったのだ。

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