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入院雑記vol.13『電子ペットの育成』

名著を読んだり、Noteで文章が上手い人を
見るたびにこう思う。

「言葉を書くことをためらってはダメだ。
このままでは、私の伝えたい文章が
ずっと幼く、歪んだままだ。」

「こんな文章が書きたいのに。
こんなきらきら輝く文章を書きたいのに。」

そうやって焦る気持ちが、
どうしようもなく、悶々と私を苦しめる。

私の書きたいことはずっと胸にあるのに。

でも私は、それを外に出す力がまだないし、

または稚拙な文を纏って外に出した途端、
案外、埃被った古いマニキュアみたいな
粘りっこさがあって、
全然、胸をときめかせないから、

私のアイデアはなかなか成仏せず、
ずっともがき苦しんでいる、胸の奥で。

でも書き留めて誕生させなきゃ、

溜まったままならいいけど、
彷徨い続けるうちに
跡形もなく消えていくアイデアもあるから、

噛んで飲むタイプのタブレット錠剤みたいに
スッと成仏しては美しい余韻を残す。

そんな文章が早く書けるようになりたい。

にごった泥水をかき出し続ければ、
いつかは澄んだ井戸水が流れ出すように、

私は、ずっと手押しポンプを押し続けたい。

やり方が間違っていても、押し続ければ
その水の明度はだんだん透き通ってくるはず。



最近、「ぶるぶるどーぶつ」という
LINEひとつで簡単にできる育成ゲームを
やっている。

始めた理由はただひとつ、
入院中は暇だからだ。

広告で見たことある人もいるだろう


最初は「ぶるぶるどーぶつ」じゃなくて、
「ぶるぶるドーナツ」だと思っていた。

なので、妹に
「ぶるぶるドーナツって
 育成ゲーム楽しいよ」と言ったことがある。


きっと妹の脳内には、
震えるゼリーの膜に包まれたドーナツを
ひたすら作る作業を
連想させたことだろう。

読み間違えって本当に怖い。

このゲームは、単にぶるぶると震える
か弱い動物たちを愛でるものだ。

はじめは小さな赤ちゃんなのだが、
お世話をしていると、いろんな動物に
進化していく。

その進化の過程は
クマ→アザラシだったり、
カニ→クジラだったりと、
あり得ないやり方だ。

だけど、姿を変えるたびに
楽しい雑学を教えてくれたりする。

イルカの肌がなぜすべすべなのかについて



それがけっこう
自分の知り得ない情報が多くて、

「かわいいくせにやるなぁこいつ」
と、雑学を披露する電子ペットの
頬をスマホ越しにつねりたいような、
そんな憎たらしい心が芽生えてくる。

ぶるぶる震えているし、
いつも感謝の言葉を述べてくれる、
低姿勢のどうぶつを育成してるからか、
自分の方が「上」という
意識が芽生えるからなのかもしれない。

でも、このゲームをしていると、
0.100で揺れ動く忙しない自分の心が
ピタッと中間を保ってくれて、

なにかうまくできなくっても、
「まあいいかぁ」と、
自分に対して、ほのかに甘く、優しい
気持ちが心に湧いてくるような気がする。

それは頭がゲームに集中して
気分が紛れるからかもしれないし、

か弱くどーぶつを育成することで、
この子たちの健気な姿から
自分の感情の変化をグッと抑えようという
大人な部分が芽生えたのかもしれない。

どっちにしろ、自分ではよく分からないけど、
それは電子的な生き物であろうが、

「育成すること」って
なんだか心癒されるな、と感じた。

思えば、自分ではなく、
仕事に集中していた時だったり、
誰かを人助けできた時の方が、
自分の心が安定していた気がする。

それは、誰かを支えている実感だったり、
感謝され、必要とされる欲求が満たされて、

「私はここにいてもいい」と
思わせてくれたからじゃないだろうか。

人が苦手な私は、もしかしたらペットだったり
植物だったりで、その欲求を満たしていく
必要があるのかもしれない。

そんな気づきをくれたぶるぶるどーぶつ、
ありがとう。

入院雑記、以上。

PS B型事業所のパン屋さんに行った時の写真。種類豊富で美味しそうだった。

しかも安め

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