見出し画像

東京の片隅で生きてきた

画像1

水面がキラキラしていた。「ここのボートに乗るカップルは別れるらしいよ」という噂、どんどん壊してけ!とボートのカップルに向けて思った。みんなキラキラしていた。優しさが水の上を走ってる。

東京の片隅に長く住んでいる。一人で生きるのは自由だけど、孤独と紙一重。思い出したくない夜も朝も昼も、胸の奥底にしまっておきたい記憶もたくさんある。でも、至るところに”当時の私”がいて、いつでも会える。

東京は、2020年だけに存在してるんじゃなくて、毎秒の歴史と、そこに存在する(した)人をいつも呑み込んで存在している、雑多で、優しい街。

画像2

孤独を感じるのは、私個人のいろんな要因もあるけれど、少し「東京」が背負ってる部分も大きい気がしている。街には「忙」の字が敷き詰められ、競り合い、ひしめき合い、匿名性が高い。
毎度、新しい何かが生まれていて追いつくのに大変。追いつかない人が少し悪い、みたいなところもある。ビルも異様に高い。

画像3

iPhoneに「東京リスト」を作って入れている。
きのこ帝国、くるり、東京事変、銀杏BOYZ、King Gnu、吉澤嘉代子……錚々たるアーティスト。でもどれもみんな、涙を呑み込んでいるような歌詞ばかり。きっと私が生きている東京を、他の人も生きていて、切なさやしんどさやノスタルジーを、東京に反映させている。東京は、やっぱり「試してくる土地」。そこで零れた涙を拭ってくれる歌は、いつも「試されてる側」の味方。

東京を美しく描いてる歌は、少ない。

画像4

東京で「答え」を得られる人もいるけれど、私は全然得られていない。こんなにも長く住んでるのに。それらしきものなんて、見たことない。でも、よくよく考えれば「答え」は、成功とか幸せだけじゃない。

「ありがとう」「大好きだよ」「また会おうね」「大丈夫ですか?」─優しい言葉たちが異様に鮮やかに目立つ。その時、どれだけ日々が残酷か思い知らされる。そして、掛けられた言葉の重みに胸打たれる。

東京には、計算式だけでは出せない、もっと斜め上の回答があるような気がしている。

画像5

ぶつかって謝られない時に「ごめんなさい」の大切さを、落し物が戻ってきたときに「性善説」を、歴史あるお店が流行店に変わる時に「あたりまえ」の有り難さを、ビルの合間から青空の青を知ることができる。

ああ、すごい逆説的。

東京から教わったことは、悔しいけどたくさんある。私はきっとこれからもこの街で生き続けるだろう。 

追記)
オススメの東京ソングや、その土地の素敵な歌、教えてください。

この記事が参加している募集

#この街がすき

43,940件

いつもありがとうございます。いただいたサポートは、巡り巡って、あなたの力になれるような、文章への力に還元いたします。