一緒に過ごす“何気ない日々”がどうしようもなく愛おしい

学校帰り、一人暮らしの彼の家に寄る。
広島で日本酒をたくさんお土産に買ってきてくれていて、一人暮らしの家に日本酒が溢れている。だから、それに合うおつまみを買いに手を繋いでコンビニに行く。

「今日何食べたい?」
「寒くなってきたからあったかいのがいい」
「いいね。熱燗とか飲みたいな〜」
「冬になったら鍋しよ!」
今日は明太子グラタンに和風のキノコパスタ
家にあるチーズをつまみにすることにした。

それにプラスして、広島の柑橘ジャムと、私たちには少し甘すぎた日本酒で日本酒サワーを作った。また私は違う視点のお酒の楽しみ方を教えてしまった。「ジャム買ってこよ」なんて言われてしまった。
私は美味しい日本酒が飲みたいのに。

日本酒+みかんジャム+炭酸水

私の卒業研究の話だったり、
彼の就職先の内定者インターンの話を聞いたり。
愚痴や悩みをお酒とともに消化する。

弱音や愚痴でさえも上手に話して消化できず、抱えんでいた私が、お酒の力を借りればすんなり吐き出せるようになって、最近は心が軽い。



ふと肌に触れる体温にほっとする。
もっと、なんて思うけれど私はそれを思い続けるまま。
手が伸びてきて、彼の香りに包まれる。
ドクドクドク...生きる音と息づかいを耳が拾う。
やっと安心できる場所に来れたと感じられる。


研究室は鉄がぶつかり合う音が響く。
電車の中は他人の不快な音と温度と匂いで満ちる。
大学院の進学を理由も言わずに辞めたせいで、なんとなく居心地が悪いと思ってしまう家。

外の世界がそうでなくても、自分を守ってくれるものはいつだって自然と自分だけだった。部屋の布団の中が唯一安心できる場所だった。



そんな私にできた、新しい安心できる場所。
すぐ近くにあるんだもん。通うように行くよね。
彼は就職が決まっているから、冬には都内へ引っ越すらしい。だから、こうやって過ごせるのはあと2ヶ月もない。

こんなことできるの今だけだから。不安をたくさん抱えながら、私にとって生きにくい環境でできる限り頑張るから。
だから、この安心できる場所に可能な限り浸らせて欲しい。


何も考えず一緒に過ごす時がしあわせだ。
コンビニのご飯と少しの美味しい日本酒で満たされる、お腹も心も。
そんなひと時も永遠じゃないから、
こんなにも愛おしいんだろう。

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