音の渦、永遠の夜、訪れる朝
浮き足立つ人々の流れ。皆そこを目指している。
一歩足を踏み入れれば、そこに待つのは音の渦。響く重低音。男も女も、みんな少しだけソワソワしている。まるで今夜なにかが起こることを期待しているみたいに。
最初の瞬間は、少しの気恥ずかしさとともにリズムを取り出す。徐々に場に馴染んできたら、まるでそこでずっとそうしていたかのように、我が物顔で踊りだす。身体が音を欲している。夜が更けていくにつれ、ずっとこの音の渦のなかで躍り続けていたいと切に願う。楽しくて仕方がないから。もっともっと踊っていたいから。この夜が、永遠に続けばいい。
ある者は身体を寄せ合い、ある者は抱きしめ合い、ある者は唇を重ね、ある者は座り込んで眠りこけ、ある者は酒に飲まれ便器にもたれかかり、ある者はその酒に飲まれた友人を心配そうに見つめている。そしてある者はひたすら音を求め、ひたすら音に溺れ、ひたすら躍り続けている。ある種の狂乱。その夜の、その瞬間にしか生まれない混沌とした世界。
やがて東の空が白み始め、その混沌とした夜の終わりに気づいてしまう。永遠が訪れなかったことに少しだけ落胆する。白んだ空の仄かな日差しに照らされたみんなの顔は、疲れきった、それでいてすべてをやりきった幸福な顔をしている。期待するなにかは起こったのだろうか。こんなふうに心地のいい疲れと充足感を感じながら迎えた朝は何年ぶりだろう。また音の渦に巻き込まれたいと思わせてくれた一夜を、白む空を眺めながら愛おしく感じた。