マガジンのカバー画像

なまえのない感情たち

35
今までの小品たちを集めました。 ひっそりと読んでください
運営しているクリエイター

#短編小説

ミニマム賞味期限

インスタグラムに更新するたびに、たくさんのいいねと「憧れです」のコメントが届く部屋。 シ…

moon
3年前
19

短命

いつのまにか、8月が終わっていた。 まだすぐに汗ばんでしまうほどに暑くてたまらないのに、カ…

moon
5年前
21

代物

シワシワのレジ袋をテーブルの上にグシャッと放った。 夕飯に買ってきた弁当の蓋のプラスチッ…

moon
5年前
11

ミネラルウォーター

酷く喉が乾いて目が覚めた。 カーテンの隙間から、昨夜激しく降っていた雨は、もう止んでしま…

moon
5年前
16

わすれもの

「今ならわたし、この一杯のリキュールで酔ってしまえる気がするわ」 ふっと一瞬だけ目線を合…

moon
5年前
11

オルゴール

ギギ…と軋んだ音を立てて小さな木箱を開けた。 甲高く半音ズレた「月の光」が小さな部屋に駆…

moon
5年前
17

冷酒

「今日もきみの料理は美味しいね」 そう言って微笑むあなたの笑顔がわたしは好きだった。 こげ茶の大きめの陶器の皿に盛られた肉じゃががホカホカと湯気を立てる。 日が暮れ始めても、もうシャツ一枚で過ごせるほど暖かくなったのに、相変わらず、あなたはわたしの肉じゃがが食べたいと言う。 涼しげなブルーの江戸切子のコップを冷酒でそっと満たす。 肉じゃがを食べるといつもあなたはこれを欲しがるから。 「すごいね。僕が何を欲しがるのか分かるの?」そしていつも同じセリフを口にしながら、大げさに驚い

散ってゆくけれど

「もうすぐサクラもお終いだねぇ。きっと、今夜の雨で全部散ってしまう。」おばあちゃんは、縁…

moon
5年前
4

午後15時の紅茶

基本のステップなんて、アン・ドゥ・トロワ 先生のカウントが無くても簡単に踏めてしまう。 口…

moon
5年前
5

かなしみのいろ

僕の持つ真っ白なパレットには世界が広がっている 赤、黄、青、黒、白、そして混ざり合って出…

moon
5年前
6

煙草

灰色のビルの屋上で、流されるように飛んでいる鳥を見上げて、あぁ、いいなと思った。 このま…

moon
5年前
4

破片

「ねぇ、永遠なんて信じる?」きれいな薄ピンクのネイルが施された指先で自分の腕をなぞりなが…

moon
5年前
2

アイスキャンディ

見慣れたはずの道の先がぼやけて何も見えない。 まるで異世界へ繋がる入り口に向かっているよ…

moon
5年前
6