【7月31日 第13回教師力BRUSH-UPサマーセミナーin札幌に参加して】
2017年、夏、2年ぶりにBRUSH-UPサマーセミナーに参加してきた。ワークショップデザイナーであるリタリコの元木一喜氏を中心に、東北福祉大学の上條晴夫先生、大阪市の金大竜先生、札幌市の山下幸先生、大野睦仁先生、十勝管内の千葉孝司先生の実践をもとに、リフレクションについて考えていった。参加者は二日間で100名を超える。リフレクションに特化した講座に全道各地から長期休業中にも関わらず、自主的にこのような新しい取組に挑戦されたことは素晴らしいと思う。
7月31日 第13回教師力BRUSH-UPサマーセミナーin札幌
元木氏がデザインしていくリフレクションは、「リフレクション」「学校の在り方」について、レゴブロックを通して、自分が何を学んで理解しているか、メタ認知を促すため言語化させ、自分や他人の認知を再読し考察させるものだった。「良さ」や「やりたいこと」「希望」を言語化させるなど未来志向的な内省へ導いていた。
「手を信じる」
という言葉がけは、自己効力を与え、多くの気付きを促した。講座を通して、発問や交流の時間をダイナミックに進めるなど、環境、リスク、人材の配置などのアセスメントの基準、自然な流れの中で進められていたこと、素晴らしかった。安心・安全な場を感じさせるために、醸し出す雰囲気や言葉、時間への配慮、巡視のタイミングなど、知識のみでは到達できない経験値の多様さを感じた。レゴブロックの感触、楽しみながら対話し、探究していく心地よさ、こどものみならず、研修の場でも有効であることは言うまでもない。経験年数や知識に関わらず、リフレクション、これからの学校について本気で対話できていたと思う。本当に素晴らしかった。
上條先生の実践は、協働的な授業リフレクション。提案された道徳・国語の授業について、ダメだしや授業技術に関する批判的なものではなく、これからにつながる建設的でクリティカルな場を生み出していた。授業者と参観者が、ダメだしのような身を切られることなく、安心・安全な場で、「授業で好きなところは?」「やってみたいと思ったことは?」など、ポジティブな感情にフォーカスしながら進めていた。ファシリテーターを務めた上條先生は、授業の善し悪しに執着することなく、それぞれの参加者が感じている「いまここ」を巧みに引き出し、次へつながる聴き方、提案をしていた。単に聞くだけでないファシリテーターのアセスメントに注目される。出てきた意見を統合するわけでも、総括するわけでもなく、丁寧に整理していった。従来の授業検討とは異なり、授業者の心に新たな気付きがじわーと沁みこんでいく心地よさがあるようだった。
大野先生、金先生、千葉先生のこれまでの教師生活におけるリフレクションの実践は、多種多様であった。積極的な外部からの視点を取り入れること、ライフヒストリー、こども理解など、これまでの経験とも合わさって多面的多角的な視点が大きいと感じた。自分たちの実践に胡坐をかくことなく、こどもの特性を見過ごさないようにと、自らに問い続けるプロセスには、たいへんな苦しさと向き合ってきたように思う。善し悪しではなく、つながりをどう押さえるか、こどもたちの心の多層性、多次元性を注意深く丁寧にみとっていく姿勢には頭が下がる。
千葉先生の不登校の実践での
「こどもは何も変わっていない。ずーと、幸せなままだった。」
という言葉には、涙せずにはいられなかった。
大野先生の実践には、他者からのクリティカルな視点を真摯に受け入れる人間としての器の大きさ、そしてそれがあってこそなしえている「気づく」ことの大切さを感じた。こどもたちが動いているとき、自分は正しいと思いがちだが、そんな中でさえ、常に内省を繰り返し、些細な心の動きも見逃さない、大野先生の背中を見て成長するこどもたちは、自分たちで「気づく」こと、主体的に何かを見つけ、自主的に探究していく術を学んでいけるように感じた。
金先生は「楽しいこと」「面白いこと」だけのように感じたが、それは金先生が「楽しいやろ」「おもしろいやんか」と見せているビジョンから、こどもたちに寄り添いながら一緒にビジョンを見つけているように感じた。(最近、私は学校現場では「寄り添う」というより、「つきあう」もあるのかなと思うけれど。。。金先生の学級は、傾聴だけでなく、いっしょに大笑いしてる、行動もともにする信頼関係がたくさん見えた)
2日間を通して、それぞれの教師の環境、人材、リスクに応じた多種多様なリフレクションについて学ぶとともに、学校、さらにはこどもたちの心にまで、理解を深められた。教育の現状や教育論を教えてもらう、こどもたちの様子からカタルシスを得るだけの講座ではなく、それぞれの参加者が、それぞれの「気づき」を持ち帰ることができた。セミナーをやるからには、本を読めばわかるものでは意味がない。本人も知り得なかった「気づき」があるから、みんなで学ぶ意味がある。そして、自分のことを一番知らないのは自分である。だからこそ、私たちは学び合う。肯定的なフィードバックをもらうことで、新しい可能性を見つけていく。気づいていく。自分自身をみくびってはいけない。5年後、10年後、このセミナーに参加した先生は、それぞれの場で、誰もが気づかなかった素晴らしい未来をつくっていくように思う。レゴブロックを通して「ありたい学校」を語る言葉には、だれの眼にも「未来」が感じられた。
これほどまでに熱量の高いセミナーには参加したことがない。教師の力を信じ抜いた企画者の大野睦仁先生のご尽力とそれを支えた教師力ブラッシュアップセミナーの日常における高い意識のなせるものだと思う。よいリフレクションには、何を学ばせたいか?というビジョンが欠かせない。そして、それに導くアセスメント。環境も、人材も、リスクも、繊細に吟味されたアセスメントが素晴らしかった。そのアセスメントについては、いかにして身に付いていくのか、3人の先生の実践から、十分に学ぶことができた。
「心はあとからついてくる」形だけのファシリテーター、形だけの振り返り、形だけの『学び合い』が溢れている現状。「型がなければ形無しだ。」とは言うけれど、心がなければ、次につながっていかない。断片的なもので終わってしまう。もやもや、迷う中で、そんなヒントをいただけたように感じている。これだけのセミナーを企画・運営するに至るには、多くの時間とご苦労があったことと思います。参加させていただき誠にありがとうございました。
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