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第六話 伊豆諸島・三宅島(後編)|ドリアン助川「寂しさから290円儲ける方法」

ドリアン助川さんによる、一風変わった「旅」の短編小説連載。
日本中(あるいは世界中?)の孤独な人、苦悩している人に会いに行き、何か一品料理を作ってあげながら人生相談に乗る男の物語。290円は何を意味するのか……? ちょっと不思議な感覚の、旅する「おたすけ料理」小説。
月1回更新予定です。


 活火山である雄山の中腹までは、舗装された道を辿って登ることができます。ただ、坂の勾配はきついです。もし間違っておにぎりでも落とそうものなら大変です。海苔むすびは凶器へと転じ、畑の明日葉や刈り取りのおばちゃん、郵便ポストなどをなぎ倒しながら海まで転がっていくことでしょう。身軽な人でも時折は立ち止まらないと、心臓が口から出てくるほどの坂が続くのです。でも、三宅島の山登りはそれが良いのです。なぜなら、汗を拭きつつ一息つくたびに、どこまでも広がる蒼い海が、「がんばって登りなさいよ」と励ましてくれるからです。



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\書籍化決定!/
2023年5月23日(火)発売
寂しさから290円儲ける方法』ドリアン助川/著



ドリアン助川
1962年東京生まれ。
明治学院大学国際学部教授。作家・歌手。
早稲田大学第一文学部東洋哲学科卒。
放送作家等を経て、1990年バンド「叫ぶ詩人の会」を結成。ラジオ深夜放送のパーソナリティとしても活躍。同バンド解散後、2000年からニューヨークに3年間滞在し、日米混成バンドでライブを繰り広げる。帰国後は明川哲也の第二筆名も交え、本格的に執筆を開始。著書多数。小説『あん』は河瀬直美監督により映画化され、2015年カンヌ国際映画祭のオープニングフィルムとなる。また小説はフランス、イギリス、ドイツ、イタリアなど22言語に翻訳されている。2017年、小説『あん』がフランスの「DOMITYS文学賞」と「読者による文庫本大賞」の二冠を得る。2019年、『線量計と奥の細道』が「日本エッセイスト・クラブ賞」を受賞。2023年、フランス語版『あん』がリヨン大学より「翻訳作品賞」を授与される。


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