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データサイエンスは企業理念の実現のために取り組んでます、の話。

※本記事の内容は公開日時点のものであり、組織名や役職等は当時のものを掲載しております。


CMOの橋原です。
今回は、企業理念とデータサイエンスのつながりを紹介したいと思います。本エントリーは技術的なことは書いていませんが、MonotaROの成長のからくりと、そこになぜデータサイエンスが必要なのかをお伝えしたいと思います。

橋原 (CMO/マーケティング部門長)
コンサルティング会社、金融会社を経て、2011年にMonotaRO入社。
執行役商品販売企画部門長、常務執行役サプライチェーン・マネジメント部門長などを経て、2021年より専務執行役マーケティング部門長を務める。


資材調達プラットフォームとしてのMonotaRO

MonotaROは、事業者を中心に部品や消耗品などの資材を販売している会社です。
2022年12月時点で、取り扱い商品点数は1,900万点、登録顧客数は770万件を有し、当領域での小売業としては、日本国内において最大規模といえます。

資材調達の分野は、需要も供給も非常に多様であり、従来の販売業者の営業担当を介した取引においては、販売業者の営業担当が扱える商品知識には限界があるため、専門領域に特化した中小規模の小売業(機械工具商や理化学商など)が流通を担ってきました。

インターネットの発展により、顧客の商品探索ハードルが下がることで、当社のようなEC事業者は、膨大な種類の商品を販売することが可能になり、
結果として当社は、需要と供給の2サイドの複雑な組み合わせをマッチングする、プラットフォームとしての役割を担うようになっています。

この需要と供給の2サイドのプラットフォームには、2ステップのマッチングのプロセスが存在します。
1つ目のプロセスは商品探索であり、検索や推薦を通じて、顧客が必要な商品を探し当て、購入いただくことを目的としています。
2つ目は引き当てであり、注文された商品を、早く・正しく・低コストでお届けするために、どの倉庫(自社・仕入れ先)から出荷するかを決めるプロセスです。

この2つのプロセスが、資材調達プラットフォームとしてのコアプロセスであり、これを徹底的に磨き上げることが、顧客や仕入れ先に対する提供価値の最大化につながります。(注記1)

(注記1)商品を出荷した後、お客様にお届けするプロセスは、配送業者のネットワークを活用することで、多くのEC事業者はこの複雑な問いを回避することが出来ます。

プラットフォームの成長モデル

資材調達プラットフォームには2つのコアプロセスがあり、そこには2つのネットワーク(顧客と商品、商品と倉庫の組合せ)が存在しています。したがって、プラットフォームの成長は、ネットワークの成長と同義であると考えることが出来ます。

ここで、重要な問いは、ネットワークの成長がどのように起きるのかです。この成長モデルをシンプルに表現したものが、下の図になります。
ネットワークには「ノード」(=点)と「リンク」(=線)という要素があり、ノードとリンクの組合せの増加が、ネットワークとしての成長につながります。そして、ネットワークの価値の拡大は、新たなノードやリンクの増加を誘発し、そのネットワークはさらに成長します。いわゆるネットワーク効果です。

ここで、ネットワークの成長サイクルと対比する形で、資材調達プラットフォームの成長サイクルを説明したいと思います(下図)。

まず、1stステップは、ノードの増加です。これは、顧客情報、商品情報、在庫情報を収集することを指しています。
2022年12月現在で、顧客が770万件、商品が1,900万点、在庫は51万点(自社倉庫のみの場合)を保有しており、資材調達分野において国内最大規模を有しています。

そして、2ndステップはリンクの形成であり、これはサイトログや受発注などのトランザクションデータの蓄積を意味しています。トランザクションの規模としても国内有数で、2022年の当社の事業計画(単体)は、売上2,165億円を予定し、毎年20%近い成長を続けることが出来ています。

最後の3rdステップは、それらのデータをインプットとして、アルゴリズムを活用したネットワークの品質改善です(注記2)。例えば、サイトログを学習することで、検索や推薦においてパーソナライズされた体験を提供し、顧客の商品探索コストを下げることが出来ます。

このような最適化は、ネットワークの価値を高め、新たな顧客や注文を誘引することになり、ネットワークの成長、つまりはプラットフォームの成長につながります。

(注記2)3rdステップにあたるネットワークの強化について、本エントリーでは「アルゴリズムによる最適化」と定義していますが、例えば「商品レビューの充実」のように、他にも要素はあります。また、要素が多いほど、ネットワーク全体の価値を向上させるフィードバックループが起きやすくなると考えられます。

企業理念とデータサイエンスのつながり

当社の企業理念は「資材調達ネットワークを変革する」ですが、これが意味するところは、プラットフォームに内在するネットワークの成長を通じて、提供価値を最大化することであると解釈できます。(注記3)。

そして、ストックデータとトランザクションデータで一定の規模を有した当社が、今後注力していくべきことは、これらのデータを用いて、コアとなる需給マッチングプロセスをアルゴリズムにより最適化し、プラットフォームの価値を向上させることです。
このことは、決算説明資料においても、「データサイエンスに基づくマーケティング力向上」「サプライチェーン高度化の新ITプラットフォーム構築」という形で説明されており、我々が真剣にここに取り組んでいることをご理解いただけると思います。

(注記3)資材調達ネットワークとは、プラットフォームの外部にあるネットワークとの連携も含んだものを指しますが、説明を分かりやすくするために、プラットフォーム内部のネットワークに限定して、本エントリーでは説明をしています。

2021年12月期決算説明資料より抜粋

これらを実現する上で、当社の経営課題の1つが、データサイエンスのケイパビリティの強化になります。

現状約25名のデータサイエンティストが、3つの部門に所属しています。複数部門に分かれているのは、検索・推薦・経路最適化・需要予測・価格最適化・顧客与信…などの多岐にわたるテーマを、より現場に近い部署で、スピード感をもって対応していきたいという意図と、プラットフォームに内在するネットワークの成長を実現するためには、解くべき課題が山積しているためです。

「資材調達ネットワークを変革する」という企業理念のもと、働く人の購買体験をよりよくするために、あなたのデータサイエンスのスキルや経験を、MonotaROで活かしてみませんか。求人はたくさんあります。是非ドアをノックしてみてください。

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