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monopoの新たな支社がパリに。プロデューサー友谷朝子が「monopo Paris」を立ち上げるまで。 - Vol.1 「なんで、パリ?」

2023年秋頃、クリエイティブエージェンシーmonopoは、パリに支社「monopo Paris」をオープンさせる。ロンドン、ニューヨーク、そしてサイゴンに続く5つ目の都市に進出することになるけれど、すごいスピード感じゃない?そもそも、なんでパリ?

「満を持して、『パリでチャレンジしたいかも』。そう思ったら、メラニーとマテイスがいた」と話すのは、monopoのプロデューサーであり、この度monopo Parisのファウンダーとなった友谷朝子(ともたにあさこ)さん(以下、朝子)。monopo Londonのコーファウンダーであるメラニーさん、マテイスさん(両者、以下敬称略)とタッグを組むべく、今年3月に拠点をベルリンからロンドンへと移した。

パリでの新たな挑戦に向け、現在ロンドンにて奮闘中の朝子、メラニー、マテイスの3人に定期的にインタビューしながら、この海外支社設立プロジェクトを追いかける。

(インタビュー・執筆:常松亜子)


monopoの海外支社はどうやって出来ている?

monopoのような企業が「海外に支社を作ります!」となるまでには、「きっといろんなリサーチに基づいて、トップの人たちが慎重に設立地に白羽の矢を立てていくんじゃ」、そう思う人も多いかもしれない。

ところが、monopoの支社ときたら、これまでにオープンしているニューヨークやロンドンオフィスはどれもいち社員の希望から始動したもの。ニューヨークは小迫敏珂(こさことしか)さんが、ロンドンはメラニーが、それぞれ東京で経験を積んだ後、「ニューヨーク/ロンドンに行きたい!」と言い出して設立している。今回新たにスタートすることとなったパリ支社だってそう、例外なく社員始動なのだ。

monopo Parisファウンダーの友谷朝子とは

「物心ついた頃にはパリにいて、そのまま幼少期の7年間をパリで過ごした。私にとってフランスは、日本よりも先に母国のような場所となった国」と、話すのは朝子。2016年にmonopoの自社プロジェクトであるpoweredby.tokyoのプロデューサーとして、monopo Tokyoにジョインした彼女は、映像制作やキャンペーンのプロデュースを中心に、poweredby.tokyoとmonopo双方の案件を通してブランドの表現に携わってきた。

2020年からは、拠点を東京からベルリンへと移す。例えば、複数都市でインタビュー撮影を行なったUNIQLO HEATTECH 2022AW KOL MOVIEでは、コロナ禍の制限をパスしながらデンマークなどの3都市を飛び回り、また、パリコレ初参加となったCFCL VOL.5 Collection - Presentationでは、現地とオンラインでヨーロッパのクリエイターと日本のクライアントとの橋渡し役として活躍するなど、monopoの“ヨーロッパ支部隊長”のような動きをしてきた。

関西出身、パリ育ち、東京とベルリン仕込み。英語とフランス語と日本語の3言語を操る、やり手プロデューサーだ。しかも朝子の周りには、いつも笑顔の人がたくさんいて、ただ有能なだけでなく、その人柄でたくさんの人に愛されている

「パリに行きたい。けど、仕事的にはどうしようか。そうだ、メンバーに相談してみよう」

朝子:「旅行でも仕事でも、パリに行くたび、興味深い人との新たなつながりやインスピレーションが生まれることが多かったし、毎回刺激を受けていて。いずれはパリに行ってチャレンジしたいと思っていた。近年、その気持ちがどんどん大きくなってきて。まず単身パリに引っ越すことを考えたんだけど、そうすると『仕事的にはどうなるんだろう?』と。一旦、親友でもあり、monopo New Yorkのファウンダーでもある敏珂に相談することにした。そうしたら、『メラニーに相談したら?』という素晴らしいアドバイスをもらって!

当のメラニーと朝子は、2016年に一週間差でmonopo Tokyoに入社し、かつて日本で共に働いた同志。その後メラニーは2019年に、同じく日本に住んでいたパートナーであるマテイスと共にmonopo Londonを設立し、ロンドンへと移った。今年で4年目を迎えたmonopo London。イギリス、アメリカ、日本などのグローバルなクライアントを持つが、「ヨーロッパにも足を踏み込みたい」。そんなことをメラニーが以前言っていたのを、朝子は聞いていた。

朝子:「拠点を移したいけど、monopoからは離れたくない、という理由でメラニーもロンドン支社を立ち上げていて。私も同じ状況だったから、あくまでカジュアルに、どっちかというと友達として話してみたら、「実は私とマテイスも、この3カ年計画の中でパリ支社設立を視野に入れていて」という話になった。引き寄せの術じゃないけど、喋ってみるもんだ(笑)」

monopo Londonと東京のサポートを得て、monopo Paris始動

それからは、マテイスも含め、具体的なアクションプランについて話し合った。ローンチ時期を、まずはざっくりと決めた。それから、コンセプチュアルな議論も重ねた。

朝子:「コンセプチュアルな話というのは、要するに、『パリで何をしていくんや?』というので。私たちのビジョンとかがズレていて、例えば、誰かが案件を取ってきたけれど、『私がやりたい仕事はこれとは違う』とならないように。何をmonopo Parisの“ものさし”としていくのか。そういう思想の部分のすり合わせがすごく大事だと思う」

そしていざ、朝子がmonopo Tokyoの共同創業者である佐々木さんと岡田にさんにmonopo Parisの話をすると、その場で「やろう!!」となった。こうして、2023年秋前のローンチを目指し、monopo Parisは走り出した。

朝子:「実は佐々木さんと岡田さんには、過去に、『朝子、パリは?』って聞かれたこともあって。でも、monopoの素晴らしいところは、何も押しつけられるようなことがないこと。佐々木さんと岡田さんの頭の中には、前からパリがあったと思う。けど、私が自分から『やりたい!!』とならない限り、プレッシャーをかけるようなことは決してしない。私が心の底からやりたくなって、エネルギー満タンになるのを、温かく見守っていてくれたような感じ。ただ、基本的に二人とも新しいアイデアが大好きだから、常にオープン。やりたいと思うことがあったら、まずは話してみるべき、というのがmonopoにいる人全員の共通認識」

「三人寄れば文殊の知恵」どころか、しれっと三強寄った

「正直、手探り。3人それぞれフランスに繋がりはあっても、直近の数十年は誰もパリに住んだことはないし」なんて言いつつも、朝子の表情に特に不安は見られない。
「ストラテジストのマテイスは、戦略脳。クリエイティブディレクター兼デザイナーのメラニーは、超クラフトマン。二人はすでにロンドン支社を成功させていて、新しいマーケットを開拓することに興味を持っている。究極、プロデューサーである私が、人や案件を連れてくればいいのでは(笑)。この3人は、すごく恵まれたいいバランス」と、笑顔で語る。

細かい話を少し明かさせてもらうと、monopo Parisは、まずはmonopo Londonの子会社としてスタートさせるとのこと。なんでも東京の子会社とするよりも、まだロンドンのそれとするほうが複雑でなく、コストも少なく済むとか。そうして、いずれは独立した会社化を目指す。monopoには、行動力あふれる人材がさらに”身軽”にアクションを起こせる環境というのも、世界規模で仕上がりつつあるようだ。

- 戦略家、マテイスの見解

マテイス:「ロンドンは長い間、ヨーロッパにおける“国際的なハブ”という立ち位置にあったように思う。世界的なクオリティのクラフトマンシップの国、という評判がロンドンにはあって、だから世界中のクライアントやブランドが、高いクオリティやインスピレーション、クリエイティビティを求めて集まってきている。それ故、ロンドンには世界中のブランドと仕事できる機会がたくさんある。そういう環境だからこそ、巨大なエージェンシーでなくとも、自分たちのビジョンに従いながら、好きなクリエイティブを追求できる。僕たちみたいな考えを持っていたり、僕たちのクリエイティビティを求めているクライアントを、ただ引き寄せればいいだけだからね」

一方、どんなに地理的には近くても、パリのクリエイティブシーンはロンドンのそれとは全くの別物だとマテイスは話す。ただ、と同時に、「近年パリがすごく進化している」とのこと。元々は、もっと国内のブランドや国内のマーケットに向けられる視線が強かったけれど、イギリスのEU離脱後は、フランスはこれまでになく国外に目を向けるようになったし、それもこれまでとは違った、新鮮な視線を向けるようになったのだと。

マテイス:「ロンドンがいなくなって空いたポジションに、ヨーロッパ中のみんなが注目しているからねだからここ数年で醸成された、フランス人のそんな好奇心や野心と、フランス人元来の歴史的な創造性、芸術性との掛け合わせによって、これから何が生まれるのか?よりインターナショナルな舞台で、これからパリがどのような存在になり得るか。そこにmonopoが入っていけるなんて、最高だと思うんだよね

- クラフトマン、メラニーの見解

メラニー:「ロンドンには、いろんな人や企業がクリエイティブを発揮するためのスペースが本当にたくさんある。それに比べると、パリのクリエイティブ業界はもう少し小さな世界で、フランスに拠点を置く小さなブランドや企業が、フランス市場に向けてコミュニケートしたいと考えているような感じ。だからそこにインターナショナルな側面は少ないし、少なくともパリには元々ない。対して、ロンドンはもっとオープン。だから国外のエージェンシーが入ってきても、良くも悪くも目立つことはないし」

フランス人のメラニーはそう話す。ただ、「マテイスが言ったように、人々はどんどんオープンになってきている」とのこと。これまで一貫してフランス語を使ってきたフランス人だけど、「コロナ以降、若い世代は積極的に、日常的に英語を話すようになってきている」とも教えてくれた。

メラニー:「monopoのようなエージェンシーはパリにとっても、とても新鮮なはず。もちろん他にも様々なエージェンシーがあるし、私たちが初めてというわけでもないけれど、monopoはユニークな存在ではあるはず。monopo Parisに興味を持って、期待してくれる人も、たくさんいると思う。それから、自分たちを表現する方法は、ロンドンとパリではかなり違ってくるはず。ロンドンと東京で10年間、いろんなインターナショナルブランドのクリエイティブに携わり、得たものをようやく自分の母国に持ち込む準備ができたと思う。それに、ユニークな視点と経歴、エネルギーを持った朝子が率いるmonopo Parisは、これまでとは違う新しいものを作るのにまさにぴったりな場所になるはず!」

- プロデューサー、朝子の見解

「一箇所に留まるよりも、常に動き続けている方が上手く、楽しく生きられるタイプの人間」と自分のことを説明する朝子の最大の目的は、「こういう働き方がしたい」を自分の手で叶えること

朝子:「クリエイティブな仕事をすることにおいても、何か物や人を動かしたり、動いている環境を作ることをやりたい。だから例えば、パリでゲットした案件をロンドンのみんなで協力してやるとか、その逆も然り。ニューヨークに行くことだって、東京に行くことだってあるだろうし。そういう仕事をしたい。だから、monopo Parisはそういうジャンクションのような、ハブ的な立ち位置を築けたらいいなと」

ヨーロッパにある「monopoの新たなハブ」としての期待

朝子:「新しい土地に新しい支社を設立するわけだけれど、それって言い方を変えたら、新しい土地、ヨーロッパにもmonopoマインドを拡張するということ。ヨーロッパのクライアントと出会うことはもちろんだけど、それだけじゃなく、いろんな才能を持ったヨーロッパのクリエイターたちともよりたくさん出会うことになるから、そこから生まれる新しいコラボレーションのことを考えると、とても楽しみ。ロンドンがEUの一部でなくなった今、パリに新たな“monopoのハブ”ができることによって、私たちがやりたいと思うことがよりやりやすく、世界を股に掛けた新しいコラボレーションがより生まれやすくなると思う」

実はmonopoには、フランスとのちょっとした親和性がすでにある。例えば、フランスのクライアントがいるだけじゃなく、メラニー含め数人のフランス人が在籍しているし、フランスの専門学校からインターンを受け入れていたりもする。「相性もすごくいいように感じてる。日本とフランス自体、昔から両思いやん」と朝子も頷くが、「でも、それでもやっぱりフランスが日本に入るのも難しいし、その逆も然り」とのこと。今だに言語の壁、そしてカルチャーの壁というのは大きいようだ。だからこそ、今後はそういったところでも朝子が、ひいてはmonopo Parisが、架け橋になるようなことになっていくのではないだろうか。

続くVol.2では、実際にパリへと3人で訪れた「パリ視察について」をお届け予定。どうぞ、お楽しみに。


monopo Paris Instagram: https://www.instagram.com/monopo_paris/

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