【もののふ椿🌺】仏教をめぐる冒険②唯識論とマントラの謎
▼筒井X氏の奇妙な答え
私の問いに対し、X氏はこう答えました。
「白蛇の夢に悩まされたということは、きっと、唯識論でいう末那識(まなしき)に白蛇があるということでしょう」
「つまり、フロイトの現代深層心理学、深層階層意識の下にあるものです」
えっ?
末那識? 深層心理学?
そこに蛇があるって。
一体どういうこと……?
▼さらに深まる謎
さらにX氏は続けました。
「解消法は、仏教では意識層からマントラ(念仏)を唱えることになります。弁才天だと、
宇賀神だと、
になります」
な、なに。
一体、なにを言っているの……?
私は、わけがわかりませんでした。
しかし、X氏はすました顔で言いました(実際はメールなので顔は見えませんけど😅)。
「お役に立ちそうでしょうか。私は理系の科学的思考の持ち主ですが、まじめにお答えしております」
▼筒井順慶は唯識論に詳しかった
私はこのとき、X氏が何を言っているのかわからなかったので、そのままスルーしてしまったのですが、その後時間がたつうちに、「ああ、そういうことか」と、少し理解できるようになりました。
それはX氏が、
というヒントをくれたからです。
調べたところ、「唯識論」というのは法相宗の教えであり、法相宗の大本山は興福寺。
そして、かつて筒井順慶は興福寺の僧侶のトップ(衆徒)だったから、順慶が唯識論に詳しいのは当然のことなのです。
X氏は順慶について研究していたから、唯識論のことを知っていたんですね。
さらにいうと、X氏がとなえたマントラは「真言」のことで、これまたWikipediaによると、多くの大乗仏教の宗派で用いられる呪術的な語句だとか。
筒井一族は、法相宗だけでなく、真言宗や真言律宗にも縁が深かったので、一族の歴史に詳しいX氏がマントラを知っていても、さほどおかしなことではないのでしょう(いやでも、突然マントラを唱えられるとビックリしますが💦)。
▼この世界はすべて個人の主観で成り立っている
ところで、「唯識論」って一体なんなのでしょうか。
Wikipediaで『唯識』を検索すると、次のように書かれています。
つまり人間には、無意識も含めて8種類の「識」(主観のようなもの)があるということになります。
▼深層心理の不思議
そして無意識には、「末那識」と「阿頼耶識」の2種類があります。
X氏が、私の末那識に白蛇があると言ったのは、「私の無意識の領域に白蛇が存在する」と言いたかったのでしょう。
そして、末那識よりもさらに下にある阿頼耶識をコトバンクで調べると、こんな風に書いてありました。
つまり、個人の深層心理にある無意識が、すべての世界を生み出しているということでしょうか。
いくつか唯識論について書かれたものを読んで、私の理解したところでは、つまりこういうことなのかなと思っています(間違っていたらすみません)。
世界はすべて認識次第で、その世界観は人の深層心理から生み出される。
この考え方って、すごく近代的というか、新しい考え方のような気がしませんか?
確か、ユングやフロイトが集合的無意識を言い出したのって19世紀ですよね。
でも、この唯識論が日本に持ち込まれたのは飛鳥時代だとか。
今から1300年も前の人々が、こんなに近代的な考え方を持っていたなんて驚きです。
私の先入観かもしれませんが、なんとなく昔の人って、日々の暮らしに一生懸命で、人の心理とか抽象的なことを考えなさそうな気がしていたので😅
私がよく記事を読んでいる大阪歴史倶楽部さんによると、そもそも法相宗って、あの三蔵法師がインドから中国に持ち帰った教えが日本に伝わったもので、現存する日本最古の宗派だそうです。
いや~すごいなぁ。
私は思いました。
もしかして、唯識論を教えている法相宗って、宗教じゃなくて哲学なんじゃない??
そんなわけで、私は、法相宗のことをもっと知りたいと思ったのです。
実際のところ、忙しさにかまけてまだ何もしていないので、これから少しずつ本を読んだりしようと思っています。
▼奇妙な仏像
ところで、X氏がマントラを唱えたときに、「弁財天」や「宇賀神」を持ちだしたのには、わけがありました。
オフ会で、X氏が私に見せてくれた筒井氏の資料の中に、変わった仏像の写真があり、それについて私が質問したからなんです。
(続く)
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