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“Embrace your demons and follow your heart; an acceptance and commitment approach to work with people who stammer(悪魔を受け入れて、自分の心に従え!吃音のある人のためのアクセプタンス&コミットメント・セラピー)”を読んでみた

お久しぶりです。ものくろです。
色々とあり空白の期間ができてしまいました。


はじめに

今回は、イギリスのJ&R Pressさんから2013年に出版された『Stammering Therapy from the Inside: New Perspectives on Working with Young People and Adults』の第8章『Embrace your demons and follow your heart; an acceptance and commitment approach to work with people who stammer』を紹介させていただきます。

8章について

結論から言いますと、あまり具体的なことは分からずガッカリしてしまいました。
簡単に説明すると、イギリスのCity Litという当事者向けのハンズオンセミナーがあり、そこで吃音のある人に対して3日間のセミナーを行ったところ、質問用紙上で吃音症状(ここで言う吃音症状とは、言葉の流暢性(どもらずに話せる)ではなく、吃音にまつわる回避行動や不安症状などを指しています)の改善が見られたという話です。参加者の感想に、アクセプタンス&コミットメント・セラピーを受けて吃音自体は変わらなかったが、人生を生きやすくなったという感想があるので、言葉の流暢性についてはあまり期待しないほうがいいように感じました。
あと、大きな特徴として、アクセプタンス&コミットメント・セラピーを吃音に特化させて特別なアレンジを加える必要はなく、比較的そのまま使えるという点は非常に有用だと感じました。

本セミナーに興味のある方は、以下のリンクから参加できるみたいです(約2万円ほどかかります)。あと、いつでも受けられる訳ではなく、受講期間が決まっており、かつ英語ということもあり、受けるハードルは高いと思いますが、英語に自信があり、アクセプタンス&コミットメント・セラピーを受けてみたいという方にはおすすめです。専門家ではなく当事者を対象としたセミナーは日本ではあまり目にしないので、とても貴重だと感じますね。

アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)とは?

話が長くなりましたが、そもそもアクセプタンス&コミットメント・セラピー、またはACT(アクト)をご存知でしょうか?
少しでも心理療法などについて調べたことのある人なら聞いたことくらいはあるかもしれませんが(自分もそうでした)、具体的にどのようなものかは分からないという方が多いのではないでしょうか?(あと、実際にACTを受けたことがあるという人はかなり少ないように感じます。ですので、ACTが実際にどのようなものなのかは知りようがないのですが、以下のURLで紹介されている本を読んでみるといいかもしれません。また、Awarefy(アウェアファイ)というアプリもあるそうです。)

後半は、このACTについて自分なりに説明してみたいと思います。
参考URLは、以下になります。下記のサイトで分かりやすく説明されているので、時間のある方はもとの記事を参照してください。

アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)は、英語の「アクセプタンス(受け入れる)」と、「コミットメント(目標を決めて行動に移す)」を組み合わせた心理療法になります。

ACTにおけるアクセプタンスとは、仕方なく受け入れるなどのネガティブな意味合いではなく、「感情や思考を受け止めてそのままにしておく」というニュートラルに意味合いになります。ACTはマインドフルネス(知らない方は、調べてみてください)を取り入れた心理療法なのですが、ここにマインドフルネスの「あるがまま」の精神を感じますね。

少しマインドフルネスについて触れると、吃音にマインドフルネスが有効だという話は有名だと思います(具体的にどのくらい有効なのかは疑問ですが)。ただ、どんな心理療法(マインドフルネスを心理療法と呼んでよいのかは疑問ですが)にも当てはまることだと思うのですが、入り口は易しくても本格的に学ぼうとするとドツボにハマるように感じており、マインドフルネスは特にその傾向が強いように感じています。
マインドフルネスと言うと、「食べる瞑想(全神経を集中させてレーズンを味わう)」や「呼吸のマインドフルネス(呼吸に意識を向けた瞑想を3分間ほど行う)」が有名ですが、ベテランになると呼吸法を30分、1時間やったり、「ボディスキャン」という瞑想法や、「歩く瞑想(歩く際に、足の感触などに全神経を集中させて歩く)」など、とにかく色々な方法があり、「どこまでやればいいのか?」、「そもそも自分のやり方は合っているのか?」など様々な疑問が湧くのがマインドフルネスの難しいところだと思います。

また、ACTにおけるコミットメントとは、「自分にとって大切なこと(価値)に向かって行動する」ことを指します。ACTでは、この「価値」という概念がとても重要な概念となっており、この価値(あなたはどんな人生を送りたいのか?)に向かって行動することで人生を生きやすくするという方法になります。

ACTは、このアクセプタンスとコミットメントを組み合わせた、「不快な感情を無理になくそうとせず、自分らしい人生を歩む」ことを目指す心理療法になります。

この名前の通り、ACTは、人生でやってくる避けることのできない苦しみを無理になくそうとせずに(acceptance)、人生を豊かにする行動を自己決定し行動していくこと(commitment)を目的としています。

ACTでは、この目的を達成するために、大きく分けて2つの方法を実行します。

①つらい思考や感情とうまく関わり、そこから受ける影響が小さくてすむような心理的スキルとして、マインドフルネス・スキルを学び、実践する

②本人にとって本当に重要で意味のあること(=その人にとっての価値)を見つける。そして、その価値に動機づけられながら、目標を設定し、人生を豊かにするための行動を取る

【保存版】ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)とは?
https://www.awarefy.com/coglabo/post/acceptanceandcommitmenttherapy

ACTの具体的な説明

ここから先は、ACTをもう少し具体的に説明していきたいと思います。
ACTでは、「人生でやってくる避けることのできない苦しみを無理になくそうとせずに、人生を豊かにする行動を自己決定し行動していくこと」を目的としていますが、この目的を達成するための指針となる概念が「心理的柔軟性、ヘキサフレックス(六角形と柔軟性を組み合わせた造語)」です。
下の図の6つの要素(コアプロセス)は、それぞれ独立したものではなく、お互いに影響を及ぼしあっています。

【保存版】ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)とは?https://www.awarefy.com/coglabo/post/acceptanceandcommitmenttherapy

それぞれのコアプロセスを簡単に説明すると、

■脱フュージョン(思考を観察する)

脱フュージョンとは、自分と思考を切り離し、思考を一歩下がって観察することを指します。私たちは、往々にして思考と現実・自分を混同してしまう傾向があります。
例えば、「どもっている姿を見られてしまった。周囲の人は自分のことをバカにしているに違いない」という思考が浮かんできたら、「『周囲の人は自分のことをバカにしているに違いない』という思考を持っています。」と言い直すことで、思考と距離を置き冷静になることができます。

■アクセプタンス(オープンになる)

アクセプタンスは、不快な思考や感情などに対して心を開き、そのままを体験することを指します。
例えば、人前で盛大にどもってしまい、羞恥心や劣等感、自己嫌悪に陥ってしまったとしたら、その不快な感情を先入観を持たずにじっくりと観察してみます。そうすることで、怖くて目も当てられないと思っていたことでも、意外と大したことがなかったことに気が付いたりするものです。

■「今、この瞬間」との接触(今、ここにいる)

「今、この瞬間」との接触とは、心も身体も「今、この瞬間」に在り、今起きていることすべてに意識を向け、関わりを持つことを指します。
これは、吃音者であるあるの「予期不安」に対する対処行動になると思います。予期不安では、「来週の発表で自分の名前が言えなかったらどうしよう。」や、「明日の飲み会で話さないといけないけど、絶対にどもって話せないな」など、未来のことばかりを考えてしまい心ここにあらずになってしまうことは吃音あるあるだと思います。また、過去の失敗(だと思っている)経験を反芻して過去に囚われてしまうしまうことも吃音あるあるだと思いますが、そのようなときに「今、この瞬間」に注意を向けることで、必要以上に苦しんだり疲弊することを避けられると思います。ちなみに、これを「注意の切り替え、転換」と捉えることで、吃音を回避できるのではないか?という意見もあると思うのですが、あくまでもACTでは過去や未来に囚われることなく、自分の価値に従って行動することを目的としているので、その可能性もあるかもしれないが、どもらなかったらラッキー(?)だけど、それを意図的に狙うことはACTとは違うのかなと思います。

■文脈としての自己(純粋なる気づき)

文脈としての自己とは、自分が何を考えているのか、何をしているのかに、俯瞰した目線で常に観察し、気づいていることです。または、自分の思考が何を言っても、反論もせず、肯定もせず、1つ上の視点からただ眺めるようにすることです。マインドフルネスのトレーニングで、「葉っぱのエクササイズ」という方法がありましたが、それに似ているように感じました。
例えば、「自分はダメな人間だ!」と思ってしまったときに、「あぁ、自分は今、『自分はダメな人間だ!』と思ってしまったなぁ」と捉えなおすことで、『自分はダメな人間だ!』という負の思考から抜け出すことができます。

■価値(何が大切か知る)

価値とは、心の奥底で思っている「自分は人生でこれをしたい」「いつもこんな風に行動したい」という考えのことであり、価値の明確化とはそれを言葉にしようとすることです。ACTでは、自分の価値を明確化することは、人生を有意義にする上でかかせないことだと考えます。
価値は人生を歩む上での方位磁石のようなものなので、価値が見つかれば、認知的フュージョン(思考と現実・自分を混同してしまうこと)や体験の回避に負けず、自分にとって有意義な人生を選択し歩んでいく助けになります。
ACTにおける根幹となる「価値」ですが、この価値をどのように設定するのかはACTにおいてとても重要だと思います。どのようなワークにも言えることですが、目標次第でワークの難易度がいかようにもなってしまうのが難しい点のように感じました。ちなみに、目標設定の際に、SMART(S=Specific(具体的)、M=Meaningful(有意義)、A=Adaptive(適合的)、R=Realistic(現実的)、T=Time-framed(期限が決められている))というキーワードがあり、その目標が現実的かどうかを考えることが推奨されています。

■コミットされた行為(必要なことを行う)

コミットされた行為とは、自分の価値と一致する行動を取り続けることです。自分の価値を知っただけでは、有意義な人生は得られません。行動とセットになることで、初めて価値に従った人生を送れるようになるのです。また行動してみてその結果を見ることで、価値と考えたものが、実際にそうだったかを知ることができます(価値と考えたものが、そう思い込んでいただけであれば、過度に疲れてしまったりする)。

ACTではこれら6つのコアプロセスを増やしていきますが、それらがバランスよく実行される状態を「心理的柔軟性」と呼んでいるわけです。

ここで注意したいのは、これらの6つのコアプロセスは、必ずしもそれぞれ順番に取り組んでいく必要はなく、6つを踏まえて総合的にアプローチしていくことが重要ということです。

何より大切なのは、人生を有意義に送ること。ACTは全てそこから出発する理論なのです。

【保存版】ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)とは?https://www.awarefy.com/coglabo/post/acceptanceandcommitmenttherapy

おわりに

ACTの概略は以上のようになります。
ACTの紹介をしておいて申し訳ないのですが、自分はまだACTを受けたことも、試してみたこともありません。なので、生の感想などを届けることはできないのですが、ACTはマインドフルネスで疑問に感じていた「あるがまま」、「いまに意識を向ける」ことは分かるが、それで何をすればよいのか?という疑問に対するアンサーのように感じました。

最後に、今回参照したURL内で紹介されているおすすめの本を紹介します。

■ラス・ハリス(著)幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない:マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門 筑摩書房

■スティーブン・C・ヘイズ、スペンサー・スミス(著):ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)をはじめる セルフヘルプのためのワークブック 星和書店

■熊野宏昭(著):マインドフルネスそしてACTへ 二十一世紀の自分探しプロジェクト 星和書店

今回は以上となります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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