見出し画像

ちょっと私の友達がヤバい人間なので聞いてほしい

頭の狂った友達がいるので、勝手に紹介したいと思う。

***

彼女は今、網走にいる。

もう、この時点でちょっと変わっている。
(網走をバカにしてるわけじゃないです。)

網走刑務所と言えば、ピンとくる人が多いのだろうか。

北海道の右上に位置し、1月はマイナス10℃の日が続くほどの極寒地らしい。

大阪で生まれ、25年間ずっと大阪で育った彼女は今、片道30分かけて歩きコインランドリーで洗濯をしている。

深夜3時には起床し、漁師をしているという彼氏のお弁当を準備し見送り、朝6時頃から一人で黒霧島を飲む日々を過ごしているらしい。

最近送ってきてくれたLINEは、『森の中で熊に遭遇した』とメッセージが添えられたガチの野生の熊の写真だった。

相変わらず、楽しそうな人生を送っているみたいだ。

***

彼女とは、高校で知り合った。

中学時代に、‘‘私の元カレと付き合っている今カノ‘‘という存在で知ってはいた。

高校に入学し、3年間どれも別のクラスだったが、やんちゃな女の子グループとして私たちが入っていて、交流はあった。

そう、今みたいによく連絡をとる仲ではなかった。

彼女は、いつも廊下を走りまわっていたイメージがある。

空になったシーブリーズの容器に水を入れ、それを武器に鬼ごっこをし、水の掛け合いを同じクラスの男女でしていた。

廊下はびしょびしょだし、ぶつかりそうになるし、正直イラついた。

高校の最後らへんになり、数人で一緒にクラブで遊ぶことが増えたのだが、彼女はいつどこに行っても知り合いらしき男達に『久しぶり!』と声をかけられていた。

彼女は可愛くて友だちも多く、いつも楽しそうで、正直羨ましかった。

***

私たちのやんちゃグループは時を経て、メンバー入れ替えなんかがあったりして、結局最終的には4人になった。

私たち4人は、高校卒業と同時に大学に通いながら、夜の世界へも飛び込んだのだ。

3人はガールズバーやキャバクラで働き、当時はお酒が苦手で門限が厳しかった私だけ風俗だったんだけどね。

この頃から彼女とはよく遊ぶようになった。まだこの段階では今ほどではないけれど。

お金の価値観が合った私たち4人は集まっては美味しいものを食べ、ブランド物を買い、海外旅行なんかをし豪遊した。

***

そうして、いつものように遊んでいたときにある衝撃的な事件が起こったのだ。

クラブでお酒を飲み、爆音で余計に酔いが回って、ワーキャー言いながら4人でトイレに行ったときのこと。

1人は洗面所の所で待ってるといい、私たちはふざけて3人で狭い狭い1つの個室に入った。

私はそれほど尿意がなかったので、2人にトイレを譲り、携帯をいじった。

すると、便器に顔を向けている姿が視界に入ってきたので、吐いてるのかと思い目を向けた。

一瞬見て、また携帯の画面に目線を戻した。

しかし、酔って思考力が低下している頭が急にフル稼働し、もう一度便器の方を見ることになった。

やつが便器の中に溜まった水を手ですくって飲んでいたのだ。

それを目撃した私たち2人は叫び声を上げながら、フルスピードで彼女を便器から引き剥がし、個室から引きずり出しては洗面所に置いてあった誰のか分からないプラスチックのコップに水道水を汲み、無理矢理飲ませた。

体内に入った便器の水をどうにかして薄めなければというのが、咄嗟の判断だったのだろう。

こいつはたぶん明日には体がおかしくなり入院してるだろうとその時冷静に思ったが、全くお腹を下すことすらなく、元気に生き延びた。

それから会うたびに、便器の水を飲んだ女として私たちはいじっていたが、『ほんまにその話だけは勘弁して』と自分の過去を思い出しては頭を抱えていたのだった。

***

まぁ、それからというものの、一人でタイに何度も行き、その飛行機で隣に座っていた男に話しかけ、そのままその男とタイで過ごしたという話を聞いた時は、いつか殺されると思うと冷静に彼女の死にざまを予想した。

まだ他にも彼女の大黒歴史話はあるが、ギリギリラインなところもあるので、ここで言えるのはこれくらいまでだ。

彼女の名誉のこともあるしね。(もうこの時点で名誉もクソもないか。すまん。)

***

ここ半年ほどは、毎日くだらないことを連絡し合っては、お互いの生存確認を取っている。

たまに、テレビ電話をしながら缶ビールで乾杯し、夜が深くなってきたら私たちが好きな韓国アイドルの曲を爆音で流し歌う。

そうして、気づけば7時間電話してたりもした。

いつも彼女と話すたびに、新しい奇談を聞かせてくれるので、そのたびに『ほんま変な人やなぁ』と感心すると『君も、たいがい変だよ』と返してくるので、結局私も変なのかとなんとも言えない気持ちになる。

やはり、類は友を呼ぶんですかね。

***

そんな彼女に会いに、私は来月北海道に行く。

それまでに私の奇談を溜めておかなくちゃな。

でもきっと、彼女の方が予想もつかないほどのネタを披露するんだろうな。

私の中では、便器の水を飲む女の話をなかなか超えられないけど。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?