週一買い出しと宇佐美まこと『ドラゴンズ・タン』
土曜日は家事日であると同時に、食料品買い出しの日と決めております。
その昔、放埒会計どんぶり勘定財布に穴が空いているとまで言われた私も、人生の辛酸を嘗めた結果(ちょっとオーバー)今ではすっかり計画経済派でして、予め次週の週間献立を立ててから必要なものだけ購入するようになりました。おかげで余らせて捨てるなんてこともなくなったし、予算内で買い物するという大技もマスターしたし、めでたしめでたしのSDGsでございます。
持続可能性といえば、9月に出た宇佐美まことさんの新刊『ドラゴンズ・タン』には持続し過ぎる怨念で世界を滅ぼそうとする男が出てまいりましたね。
書評は新潮社『波』誌に寄稿しまして、下記でもお読みいただけるのでぜひご一読願えればと思うのですが、
文字数の関係で書ききれなかったことをちょっと補足的に。
本作はジャンル的にはファンタジーです。しかし、史実と著者の歴史観がしっかりとした土台になって物語を支えています。
ファンタジーが単なる娯楽に留まるか、それとも文学たりうるか、それを分けるのは「歴史観」の有無だという点はおそらく異論がないでしょう。
ただ、問題はその「歴史観」であって、イデオロギーがあまりに前面に出すぎるとかえって薄っぺらくなってしまうきらいがある。
ですが、宇佐美作品は思想的な何かを出すわけでなく、また何ものもジャッジすることなく、ただ「人の業」をひたすら提示してくるわけです。読者がそこから何を感じ取るか、何を見出すかは完全に任されている。つまり、読み手の力量次第でどれだけ楽しめるかが変わる。
だから怖いんです、この作家は。深淵を覗く時、じゃないけれども、宇佐美作品を覗く時、読者もまた宇佐美さんからも覗かれているのかもしれない。
なんとなく、そんな気がしています。
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