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ルリマツリ

男子で学校外の活動でスポーツをしている子たちは、“マメページよし”の池田と“ヒコページよし、マメページよし”の中山が入っている少年サッカークラブ、それ以前からある少年野球クラブ、もしくは、剣道クラブに参加していた。そうそう、スイミングスクールに行っている子も。でも、多くは、サッカーか野球だった。

同じクラスでサッカーをしている子の中に、薄居靖紀(うすいやすのり)、通称ウリ(うすいの「う」とやすのりの「り」で「ウリ」)がいる。クラスのサッカークラブ参加者は、だいたいもれなく“マメページよし”の池田と“ヒコページよし、マメページよし”の中山のグループに属しているように、ウリもその一員だ。ウリが他の男子たちと違うとしたら、“マメページよし”の池田が“ヒコページよし、マメページよし”の中山以外に唯一、睨みをきかさないところなのだ。ウリは少しかわいい感じで細身の子だが、他の子と比べて庇護を受けるほど”おまめさん“ではない。サッカーでも、“マメページよし”の池田と“ヒコページよし、マメページよし”の中山ほどは目立たないかもしれないけれど、まったくのへたっぴでもない。言ってみれば、ウリは“マメページよし”の池田の側近というところか。手下感はあまりないのだけれど、“マメページよし”の池田のカリスマ性はすごいから。でも、“マメページよし”の池田は、ウリにはやさしいし、よく笑顔で話しかけている。
“マメページよし”の池田とウリは名前の順で前と後ろなので、最初の頃は席も近くて、それで仲良くなったのかも。ウリの家は、“マメページよし”の池田が住む住宅団地とは反対方向に位置していて少し学校からも遠いから、クラスやサッカークラブで一緒になるまでは、ふたりは友だちではなかった。

ルリがはじめてウリに注目したのは、国語の時間にそれぞれが宿題で書いてきた詩を発表するのを聞いた時だった。それまで、作文や読書感想文などで入選する常連さんの名前の中にウリが入っているのは見たことがなく、ウリにそういった資質があるとは知らなかったので、ちょっとした驚き。冬の寒い日に暖かい家の中にいるしあわせ(「しあわせ」という言葉は使わなかったけれど)を綴っていて、ごくごく普通のなにげない時間のことを記しているのに、何かが光っていた。その何かがルリは気になった。へぇ~、ウリの詩、なんかいいんじゃない。ルリは密かにそう思った。

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