マガジンのカバー画像

月曜日の図書館21-30

10
運営しているクリエイター

2020年7月の記事一覧

月曜日の図書館30 ひらいて

月曜日の図書館30 ひらいて

どこまでも続く一本道だった。アスファルトで舗装された、太い道路。景色は荒凉としている。通る者など誰もいない。一体誰が、何の目的で作った道なのだろう。
その先に、気球が見える。あたたかい空気をたっぷり孕んでいるのに、地面にくっついたままで、飛んでいく気配はいっこうにない。
人気のない道路。
飛び立たない気球。
この道をどんなに歩いても、気球は永遠に「その先」にあり、決してたどり着けないような気がする

もっとみる
月曜日の図書館29 その他おおぜい

月曜日の図書館29 その他おおぜい

病院には、確か首吊りの器具が2つあったと思う。そこで老人たちは頭部を固定され、いーんと引っ張られる。気持ちがいいのか効果があるのか、感情の読めない顔をして、老人たちは引っ張られるままになっている。点滴を打たれている間、退屈を紛らわすのに老人たちを観察するのはうってつけだった。他にも腰やら脚やら、彼らはいろんなところを引っ張られており、みんな一様に表情がなかった。常連ともなると、病院に入ってくるなり

もっとみる
月曜日の図書館28 まんべんなくない

月曜日の図書館28 まんべんなくない

気づけばいつもカレーを食べている。昼にカレーを食べて、夜も家でカレーを作り、何なら翌朝のごはんもカレーである。何を入れても同じ味になるのがカレーの良いところとも言えるし、スパイスや地域によって味が変わるのに全部まとめてカレーと呼べるのも良いところだと思う。
今日のお昼はタイ料理屋さんのグリーンカレー。ここのはいつもおいしすぎて、食べている途中で鼻水が出てくる。
タイもインドも行ったことはない。イン

もっとみる
月曜日の図書館27 二面性

月曜日の図書館27 二面性

感染対策で30分しか滞在できませんよと説明したのに、おじいさんが15分くらい自分の身の上話をする。話を無慈悲に打ち切って本を出納しに行ったり、時間が来たらおじいさんを窓から放り出したりする選択肢もあるが、このときばかりは必殺「目をつぶる」を使うことにした。おじいさんは目当ての新聞記事をコピーして、にこにこしながら帰って行った。

わたしのマスクは白と黒、2色の布を真ん中で縫い合わせて作ってある。陰

もっとみる