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暮らしていく #書もつ

自分が暮らしている土地のゆかりの有名人がいたりするとちょっと嬉しくなったりします。芸能人や文化人、はたまたスポーツ選手など。

先日、ご近所のお好み焼き屋さんに行ったら、近くに練習グラウンドがあるプロ野球チームの元選手の写真が貼られていました。

いま芸能界で息子さんがとても個性的な雰囲気で活動されている、“伝説の投手K”さんの家族写真。

息子さんが小さい頃の写真なのですが、素顔が見られたような気分で、まじまじと見つめてしまいました。

スポーツ選手だけではなく、作家さんにも稲城ゆかりの方がいらっしゃいます。かつて、次郎さんが住んでいたことは書きましたが、この作家さんは稲城の生まれ。

稲城の名士と名高い商家の末裔にあたる方で、先日、直木賞を受賞されて一躍有名になりました。受賞作も早く読みたいのですが、今日はこちらを。

じっと手を見る
窪美澄

これまでもいくつか読んできた作品と、遜色ない力強さを持った作品でした。

社会的に立場が弱いとされている女性を際立たせ、生きることの恐ろしさと希望を描くような、危うさの先に明るくて爽やかな出口があるような、そんな雰囲気でした。

僕自身が男性だからなのか、むしろ男性的なものから幾分距離を取っているからか、個人的に苦しく感じるような場面もありました。さらに、仕事や暮らし、そして老いというテーマは、とても重たくもありました。

ただ、読み進めていくうちに、登場人物たちの心のうちが吐露され、架空の世界だった物語が、ふいに近づいてくるような気配がありました。

作家は、女性という存在に、かなりの思い入れがあって、それを極端な形で提示してきます。それは男性との関わりであったり、仕事との関わりであったり。

現代的というか、現代の闇を描き出したような世界観が、多くの作品に共通しているのは、作家の信念のようなものがあるのかも知れないと思うのです。

表も裏も書き出して、読んだ人が想像できる余地をなくしてしまうような人物像は、この作家の特徴でもあり、読み手への問いでもあります。

文庫版の解説は、作家の朝井リョウでした。「出し惜しみしない、いつでも全力を注いでいる」評に、溜飲が下がりました。なるほど、この作家の強さは、そういうことかと。


それでも生きるんでしょ?

と問われているようで、登場人物たちの幸せを祈りたくなります。きっと、人によっては強烈に共感したり、傷を抉られるような経験をするかも知れません。

だから、誰にでも読んでほしいかというと、そうでもない。

でも、

でも、人は変わるという真実を、具体的に描いているようにも思うのです。

誰にだって、表も裏もある、それでいいけれど・・

もちろん「人は変わる」には、変われる、変わってしまう、どちらの意味もあるのですが。

一歩一歩歩いていくような、重苦しい夜のような、印象的なサムネイルでした。infocusさんありがとうございます。この作家さん、読むとお腹いっぱいになった感じがします。


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