見出し画像

お役所しごと、紹介します #書もつ

毎週木曜日は、読んだ本のことを書いています。

一般的に、あまりいい意味では使われていない、「お役所仕事」という言葉、中の人からすると「定型がある方がやりやすい」というのが本音です。

仕事量なんて言い方をすると、個人差や職業差や、賃金や時間や、もろもろの検討事項はあるにせよ、その量が多い場合には、前例や定型に頼っていきます。

「全体の奉仕者」という、民間とは異なる価値観を前提とした働き方を求められている以上、「売れればいい」とか「褒められたらいい」とか、端的な評価を求めることができない(心の中では切望しているけれど、大体のことに賛否両論あって、かつ”賛”が見えにくい)ので、やるべきことも、たぶん公務員ではない方には想像できないほど、”事前に決まっている”ことが多いです。

長くなりそうなので、この辺で・・・そんな、お役所仕事を扱った作品を紹介したいと思います。

となり町戦争三崎亜紀

地域活性化という使い古されてしまった言葉から、地方創生という新しい表現に変わっていますが、その本質は何ら変わることのない、地域をもっと元気にしようという取組。

それは、つまり元気がないと思っていることの自認と、そこからの否定にもとづく衝動のようで、知らない地域で行われているそれらの活動が、ホントに意味あるのかなぁなんて思ってしまうこともあります。

さて、この作品で扱っているのは、地域の活性化のための「戦争」・・すごい設定ですが、なかなか破綻せずに物語が描かれており、すごい構成力だなぁと思ってしまいます。実際にこういうことが行われることが、絶対にあってはならないと思うけれど、平和の意味するところの難しさを考えさせられます。

作中で、いかにも”お役所仕事”って感じのアイテムや考え方が紹介されており、面白く読める反面で、戦争という言葉が持つ怖さがひたひたと沁みる作品でした。

事務分担表・・その部署のどんな仕事を誰が担当しているか(主と副がある)を一覧にしている表・・は、本当に典型的なアイテム。4月1日は、まずこの表の作成作業から始まります。


プリンセス・トヨトミ万城目学

虚実の分からない世界観に、いつのまにか取り囲まれて、ひとりの非大阪人として、大阪に旅をしたような気分でした。歴史と風土を合わせ、真面目な設定に、没入してページを繰る手がとてももどかしく感じました。

守るべきものを、どのように守り続けるのか、もしかするとそれは、我々読み手に対する作者の問いかけなのかも知れないなと思いながら読み終わりました。

アイスクリームと、お好み焼き、食べたくなりました。

読書メーターに残していた感想には、まだ会計検査院の怖さを知らない僕がいました。だから、あまり深入りせずに物語を楽しんでいる様子の感想でした。

作中に登場する、会計検査院・・泣く子も黙る「会計検査」が地方自治体にはあります。だいたい年末から2月くらいがその期間。対応する部署の緊張感たるや・・。いまは、そんな部署にいます。昨年、資料を作るために連日終電の残業をした記憶が。

会計検査は、国からもらった補助金だけでなく、自治体の財布から出たお金の使い方もチェックするという、なかなか手ごわいものです。普段からちゃんとやってるんだから問題があるわけない、と思いきや法令の解釈を誤っていたり、必要な手続きを踏んでいなかった、設計のミスなど、意外と何かあるものです。

そんな人たちと、大阪の民が戦う壮大な物語。ゴリゴリのフィクションなのは良くわかるのですが、ただここ最近の「都構想」のような世界観があり、読んでいるととても現実味があって、少し怖くなります。

実際に作者が、先日の都構想への住民投票の結果について、この作品を引きながら考察したような報道もありました。大阪城の地下に、”あの建物”が眠っているなんて!

そんなわけで、役所とはまた毛色の違う機関のことですが、いったい公務員とは何者なのかというのが、誇張も含めて悲喜こもごもな人間模様が描かれています。

僕は、そもそも公務員に向いている性格なのか、転職したらとても体調が良くなりました。ただ、民間とは違う、一般的にはノルマのない環境で、結果を出しても「当たり前だ」とされる仕事、のような印象です。

どうか温かな視線が向けられるよう、楽しい作品で感じていただけたら幸いです(笑)

かわいいサムネイル、infocus📷さんに作っていただきました!決まったピースをはめる?・・いやいや、地域の人々を繋ぎ、広げていくのが公務員の仕事・・と表現していただきました。ふつうの会社と同じように、公務員でも、いろんな人がいます。



#推薦図書 #三崎亜記 #万城目学 #公務員 #仕事 #とは

この記事が参加している募集

推薦図書

最後まで読んでいただき、ありがとうございました! サポートは、子どもたちのおやつ代に充てます。 これまでの記録などhttps://note.com/monbon/n/nfb1fb73686fd