Yuki's ESH

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アラノンプログラムの情報と実践について綴ります。 アラノンプログラムに関する質問はこちらまで:alanonyukiesh@gmail.com

最近の記事

MORE ABOUT 家族のアルコホリズム

前回に引き続き、家族の病気について考えます。一人の仲間からのストレートな言葉が、私に「自分自身の問題」と向き合う大きなきっかけを与えてくれました。そのとき、私の夫はすでにソーバー9年目。以前『アルコホリズムが私たちに与える影響』という記事で次のように書きましたが、私もやはり同じ体験をしていたことがわかります。 「これらの症状はさらに、たとえアルコホーリクが酒をやめたとしても、あるいは私たちが長年アルコホリズムとは無縁の生活を送っていたとしても、私たちが自分自身の回復を求める

    • アルコホリズムという名の家族の病

      アラノンの基本テキストであるHow Al-Anon Worksは、その第6章 The Family Disease of Alcoholism(アルコホリズムという家族の病気)の冒頭において「気づき(awareness)は、アルコホリズムという家族の病気について学ぶことによって始まる」と述べています。 アラノンでは、コントロール欲求や完璧主義などの家族によく見られる傾向を「自分の病気」だと捉える仲間が少なくありません。ミーティングの中でそういった問題をテーマにして分かち合う

      • 私たちの現実

        ここまで「アラノンの三つのC(アルコホリズムの性質)」と「アルコホリズムが私たちに与える影響」に着目し、言葉の意味や体験に照らし合わせつつ、それぞれの特徴について考えてきました。ここでもう一度、スタート地点に戻りたいと思います。アラノンのプログラムにおいて変化とはプロセスであり、そのプロセスの第一段階は「気づくこと」であると、以下の記事に書きました。 それでは、いったい私たちは何に気づくのでしょうか。それは、私たちの現実であります。現実とは、いま目の前に事実として現れている

        • アラノンの罪の意識(feelings of guilt)

          (私が悪いのだ)と執拗に自分をなじる自責の念。これはアルコホリズムがもたらす「恐らく最も深刻なダメージ」であると、アラノンの基本テキストHow Al-Anon Worksは述べています。アルコホーリクの飲酒の原因は自分にある。アルコホーリクが不機嫌なのは自分のせいだ。私たちがそのように感じやすいことについては、以下の記事でも取り上げました。 罪の意識(feelings of guilt)とは、自分が(倫理的、道徳的、法的に)何か悪いことをしてしまったときに生まれる不快な感情

        MORE ABOUT 家族のアルコホリズム

          【課外活動ミニレポ】『諸相』スタディ

          『諸相』スタディこと、『宗教的経験の諸相』スタディ・ミーティングは、AAメンバーのしまさんとペーさんが運営し、毎月第一土曜日の20時よりZoomで開催されているAAのオープン・ミーティングです。『宗教的経験の諸相』とは、1902年に刊行された、アメリカの哲学者・心理学者ウィリアム・ジェームズによる著書。著者はこの本の中で、豊富な実例を挙げて様々な宗教的現象を考察し、その普遍的な価値を探っています。しかし、なぜAAのグループがこのような本を学んでいるのでしょうか。 AAの共同

          【課外活動ミニレポ】『諸相』スタディ

          アラノンの否認(denial)

          これまで、アラノンの強迫観念(obsession)、不安 (anxiety)、怒り (anger)にクローズアップし、アルコホリズムが私たちに与えている影響について考えてきました。これらの症状は私たちに共通の問題であり、それゆえ共に向き合い、共に解決を探し求めることができる。数年前、私はようやくその準備が整ったように感じました。ところがそのとき。私の目は、見ることができなかったのです。 否認とは「事実として認めないこと」。一般的には、刑事事件などにおける容疑を認めない否認、

          アラノンの否認(denial)

          アラノンの怒り(anger)

          アルコホリズムという不条理に対する私たちの怒り(anger)を言葉で表すのは簡単ではありません。 少々昔のことを思い出してみましょう。私たちにはそれぞれ「はじめの頃」があります。私にとっては、物心がついて父の飲酒を意識するようになった頃と、夫と出会った頃であると言えます。そのはじめの頃、アルコホーリクの言動に接し、私たちは何を感じたでしょうか?驚きや戸惑い、なんだかおかしいと訝しむ感覚。あるいはある種の魅力や、どこか自分と似ているように思える親しみであったかも知れません。し

          アラノンの怒り(anger)

          アラノンの不安 (anxiety)

          今回は、アルコホリズムの影響として挙げられている二つ目の症状である不安(anxiety)について考えます。アメリカ心理学会(American Psychological Association: APA)のウェブサイトの説明によると、anxietyとは、緊張感や懸念、血圧の上昇など身体的な変化を特徴とする感情です。また fear(恐れ)との違いについて、fearが明確に識別可能な特定の脅威に対する現在志向で一時的な反応であるのに対し、anxietyは広範な脅威に対する未来志向

          アラノンの不安 (anxiety)

          アラノンの強迫観念/とらわれ(obsession)

          「強迫観念」という言葉を Google検索してみると、上位に表示されるサイトはどれも強迫性障害(Obsessive-Compulsive Disorder)に関する情報を伝えるものばかりです。厚生労働省のサイトによれば、強迫観念は(手が汚れているのではないか)(家の鍵を閉めたか)などのある特定の対象物に対する極めて強い不安感や恐怖感であり、その不安や恐れを打ち消すために繰り返される強迫行為と共に表れる強迫性障害の症状です。 一方、私たちが経験するアラノンの強迫観念とはどのよ

          アラノンの強迫観念/とらわれ(obsession)

          アルコホリズムが私たちに与える影響

          「あなたは飲酒がアルコホーリクに与えている影響を見ることができる。 しかし、それがあなたに与えている影響を見ることができますか?」 "YOU CAN SEE WHAT THE DRINKING IS DOING TO THE ALCOHOLIC. BUT CAN YOU SEE WHAT IT IS DOING TO YOU?" これは、アメリカでアラノンが初めて出した公共広告のキャッチコピーだったそうです。・・・ちょっと怖いですね。さながらサスペンス映画のそれです。果た

          アルコホリズムが私たちに与える影響

          プロフィール

          はじめまして、アラノンメンバーのユキです。今から17年前、飲まないアルコホーリクだという夫に出会いました。アルコール依存の問題を抱えた家庭で育った私の目には、彼の姿が「解決の光」そのものに映りました。ほどなくして夫が飲み始めると、光は闇に変わりました。数年後、夫はもう一度AAにつながります。夫が変えられていく姿を見るうちに、私は12ステッププログラムに興味を持つようになりました。そうして2020年12月にアラノンメンバーとなり、現在は首都圏とオンラインで活動しています。 t

          プロフィール

          【課外活動ミニレポ】Big Book Comes Alive!

          2024年7月28日(日)茨城県の牛久にて、「牛久でビッグブックを学ぶ会」主催によるビッグブック・スタディ"Big Book Comes Alive!"が開催されました。講師はAAメンバーのひいらぎさん、相方は同じくAAメンバーのてんさんです。AA、GA、ギャバノン、 ACA、OA、アラノン、支援側の参加者からなる総勢40名が、ビッグブックの通称で呼ばれるAAの『アルコホーリクス・アノニマス』を学びました。Big Book Comes Alive!とは、ジョー・マキューが行っ

          【課外活動ミニレポ】Big Book Comes Alive!

          WE CAN'T CURE IT:私たちは治すことができない

          Cambridge Dictionaries Onlineによると、cureという単語には大きく分けて二つの定義があります。    ① to make someone with an illness healthy again    (病気にかかっている人を再び健康にする)    ② to stop someone doing or wanting something bad    (誰かが何か悪いことをする/しようとするのを止める) cureという単語に二つの定義があるよう

          WE CAN'T CURE IT:私たちは治すことができない

          WE CAN'T CONTROL IT:私たちはコントロールできない

          私の母はスナックを経営していました。開店したのは私が2歳の頃のことで、私が一度目の結婚をして家を出た後も、母はまだお店を続けていました。必然的に私はそこでたくさんの時間を過ごすことになります。そうして出会った多くの酒飲み達(父もまた常連客だった)の中で、父はその誰とも違っていました。私が感じた「違い」。それが今回のテーマにつながります。 手元のポケットブック版Webster's New World Dictionaryによるとcontrolにはいくつかの意味がありますが、こ

          WE CAN'T CONTROL IT:私たちはコントロールできない

          WE DIDN'T CAUSE IT:私たちが原因だったのではない

          この打ち消しの言葉は、私たちが(誰々が強迫的に酒を飲むようになった/飲むのは自分のせいである)と考える傾向を持つことを示唆していると思われます。 このテーマに関する私自身の体験は『【エッセイ】父と私とビッグブック』の中で少し書きましたが、私ももれなく(父が普通にお酒を飲むことができない理由は私にあるのだ)と考えました。父からそう言われたわけではありません。そう考えるようになったのは、父の飲み方が私にとって全くもって理解不能であったからです。どれだけ努力しても共感も納得もでき

          WE DIDN'T CAUSE IT:私たちが原因だったのではない

          焦点を変える

          いま、私たちの視線の先には何があるでしょう。 飲んでいるアルコホーリク。飲んでいないアルコホーリク。過去や未来。目の前にあるものではない、別の何か。これらは私たちの目を釘付けにします。そして恐らく、私たちは見ている対象に変わって欲しいと考えています。 そう考えるに至った理由は山ほどあります。アルコホーリクが飲んでいれば、その飲酒が止まることは私たちにとって何よりも大きな夢であり、憧れであり、目標であり、すべてを解決する救いです。それらを実現化すべく、あるいは過去の恐ろしい

          焦点を変える