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読書日記:一九八四年 過去や人をも変える権力

 それは一度友人から借りたことのある本だった。
「ディストピアな話だから読みづらいと思いますよ」友人がそう言っていたのを覚えている。
私は早速本を開いてみるが集中することができず、ほんの10ページ程度でしおり挟み閉じてしまった。
    それから再読することもなく、未読のまま友人に本を返してしまったのだ。

 その本を次に手に取ったのは、近所の書店で本を購入すると決めた時だった。一度読むのを諦めた本だが、ちゃんと読んでみたいという気持ちにさせられた。
    きっかけは攻殻機動隊SAC_2045でこの本が登場したことだった。
    私は購入した本を開き、読み始めた。
    主人公のウィンストンが日記を書き始めるところまで読み進めると、物語にのめり込み、一九八四年というタイトルまで気に入っていた。

 ウィンストン、ジュリア、オブライエン、主要キャラクターたちの動向が気になって。一気に250ページまで読み進めることができた。
最初に手に取った時、10ページ程度しか読めなかったのはおそらく先入観のせいだったのだろう。

 一九八四年には三つのスローガンが登場する。
戦争は平和なり
自由は隷従なり
無知は力なり

この三つの意味が物語の佳境で説明されるのだが、それがなんともわかりづらい。

 戦争は平和なりは、外に敵がいると内にいる敵に目を向けず、支配階級を維持できる。
 自由は隷従なりは、本当の自由は混とんとしている、支配の中で生きてこそ自由が存在する。
 無知は力なりは、党は過去を改ざんできる。党が語ることが真実であり、それと矛盾する記憶を持ち合わせていても疑問視しないことが二重思考であり力となる。

    嚙み砕いてみるとこんなところだろうか、難しくて自信がない。
スローガンの説明は是非他の人のブログも見てみて欲しい。

 私は読み進めるにつれ考えを巡らせた。
思考犯であるウィンストンとジュリアは恋愛はどうなるのだろう。
オブライエンは敵なのか味方なのか。
オセアニアは本当に戦争をしているのか。
ウィンストンは党に勝利することができるのか。

 最後は本当に驚いた。まさかこんな終わり方をするとは思わなかった。
正直悲しい。附録の「ニュースピークの諸原理」や「解説」「あとがき」も読んだが悲しく恐ろしい一冊だった。


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