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Homeと肯定/『その女、ジルバ』から

『その女、ジルバ』というドラマ、観ていますか?
私も友人から勧められ、観ています。
なんか結構話題になってきたからヒネクレモノとしては
安易に「いいよね」って言いたくないねんけど、
でも、いいよね。洒落てるよね。

40を迎えた冴えないヒロインが飛び込んだ世界は夜のお店。
でもでも「40なんてギャル」「ぴちぴちすぎる」と言われるお店!
そこでは陽気なマダムたちと紳士たちが毎夜集い踊るお店。
このお店をひらいたのは故人である「ジルバ」というママ。
ブラジル移民から日本に戻ってお店をひらいた。
彼女を筆頭にお店のマダムたちはいろんな過去を持つ、
でも笑って「らしく」生きている。
そんなお店で働くようになったヒロインはどんどん生きる力を取り戻し、
彼女と共に働く昼の仕事の仲間たちも彼女に影響を受け人生を楽しむようになって……。

今の時代に合っているんやろな、と思います。
コロナコロナでしんどく暗くなった時代に。
しんどいけど皆でぱぁっと踊りましょう、
自分を否定せず「今」「これから」を楽しみましょう、
あなたのまわりには皆が居るよ、みたいな。
自身や、生きること、その人がその人として生きていることを「肯定」するような。
登場人物が登場人物を肯定することは勿論、
この作品が観る人を肯定してくれるような。

その容れ物としての舞台が「平均年齢70歳の高齢バー」って、洒落てるね、素敵よね。

このドラマを勧めてくれた友人、
私の数少ない友人の中でも「見巧者」たる方なのですが、
「原作漫画の頃から、ドラマ化しないかなと思ってた作品なんです」と
教えてくれたのがきっかけ。
うん、ほんまに、ほんまやね。
しかもこのキャスティングの素敵さね、皆、生き生きしてるね、楽しそうに演じてる。
中でも私がツボなのはホステスのひとり・中田喜子です。めっちゃ楽しそう。てゆーか、だからか、無性にリアル。
お店のメンバーである
うつくしすぎる草笛光子、
『Shall we ダンス?』のたま子先生ふたたびな草村礼子、
こういった場には欠かせない久本雅美、
の中、この人、中田喜子。
橋田寿賀子が居ない現場はそんなに楽しいか、という冗談はともかく、
この人の笑かそうとしてじゃなく自然にいうセリフに爆笑すること多々です。
あ、あと、関係ないけどマスター役の品川徹さん。この人だけ「さん」付けかい。
『白い巨塔』は勿論やねんけど、あっちゃこっちゃのドラマに出てる、
なんかメジャー路線じゃなさそうやけど脇にしては存在感のある老優やなー、
殺される役とか元ヤクザとかおじいちゃんとかなんかこの人よぉ見るな―、
と思っていた人がもう代表作になるんじゃね? くらい格好いい役「マスター」、
しかもジルバの昔を知る人を演じているのを観て、
身内でもなんでもないのにニヤニヤが止まりません。

それはさておき。

今シーズンのドラマは私的にこのような「肯定」を描いたものが多いような気がします。
それぞれにテーマは勿論あるのだけれど、おおきな意味でのテーマ、≪肯定≫。
時代もあるのでしょうか。それ故、そのような企画が増えているのか。いや、偶然か。
私はこのテーマが好きというか最近興味があるから、よりそう思うのかもしれません。
決して自己評価が高い訳ではなくむしろ逆で「あかんやつ」「ちっさなやつ」(笑)な人間、だからこそこのようなテーマの作品(ドラマだけじゃなく)に惹かれるというのはあると思います。
惹かれるからこそ、そんなことを考えます。

お芝居が大好きな女の子がいろんな苦難を乗り越え、
まわりの人々の情とあったかい気持ちで大阪を代表する女優さんになっていくのを
テンポよく(THE 大阪!)描く『おちょやん』。
親の介護と家族と自分の物語というでっかいテーマに
ド・直球で挑みながらもクドカンワールド炸裂、
ごっちゃ混ぜ猥雑はちゃめちゃでも超・純粋、
てかこのテーマを描くのに能とプロレスとって時点で頭おかしい(いい意味)、な、
『俺の家の話』、
照明オタクのまっすぐまっすぐな女の子が自身と向き合いながら
まさに光りのように人々を照らしてゆく『ハルカの光』、
どれも、とても、「皆が肯定される」話に私には見えて、
時に笑いながら、時にツッコみ入れながら、楽しみながら、
「肯定」され(るような気がして・そんなpowerをもらって)、グッと来ています。
(で、「わしも頑張らねば」という気持ちをもらっています)

肯定であり、誰かの≪Home(場所)≫。

『その女、ジルバ』の場合、
先代ママにとって、ブラジル移民からの、創ったこのお店。
そのお店に、ママや皆に「肯定」され救われ生きる力をもらった人が、
また別の誰かをそんなあったかい気持ちで励ます。
励ますなんて大袈裟なものではないけれど、そっと、背中を押す・叩く、寄り添う。
さらにこの作品には「3.11」も大きく絡む。
ヒロインとその家族にとっての大きな「3.11」
あの地震の影響で「Home」を失った人、見失った人、帰れなくなった人……。
そして大きな問題として「戦争」、
つまり「昔と今」、「昔があっての今」ということも……。

そんな意味でも≪Home(場所)≫、「肯定」のメッセージを私はとても感じたりしています。

この後どうなっていくのかな、
「きっと…」という思いはありますが、
いやいや、どうなってゆくかはわからないし、楽しみにしています。
漫画を読もうと思うけれど、いやいや、この絶妙なキャストで作るドラマ版を、
私も皆と一緒に観てゆきたいなと思っています。

誰かにとっての≪Home(場所)≫、そして「肯定」。

先程も書きましたが、
近年、Lifeworkとして追っているちいさな大衆的な劇場と舞台世界……
旅芝居であったりストリップであったり
「間近で」「人間の匂いまで伝わってくるような」舞台と客席の劇場で、
私はそんなことをよく考えます。
というより、わしが、救われてるんやな。
救われるっていう言い方も大袈裟でなんかちゃうねんけど、でも。
いろんな皆がそれぞれ「らしく」いることが決して否定されない場所。
それはどの世界でも、いや、生きる上で絶対にそうあるべきやと思うのに、
なかなか、どうして、うまくいかなかったり、叶いにくかったり。
でも、これらの劇場では、なんか、叶う、叶っている、ような気がしてならない。
劇場がそれぞれの皆を、皆の心をかな、ぎゅっと抱きしめてくれるような、
なんて、わかりにくい比喩(笑)ですが。

劇場でのことや、
例えばこのようなドラマとか、
作品内の物語、さらにその物語を作り出す皆の物語、
すべての物語はそれらが叶うためのきっかけとなり、
皆の心に残る大事なものとなる。
直接的にはなにも出来なくても「物語」や「作品」の力って、ある! し! 凄ぇ!
と、とてもとても思います。

こんな時代やからこそ、「物語」や「作品」の力を信じたい、し、信じられる気がしてなりません。

Shall we ダンス!


◆omake◆
ということで、ほんと、この時期に重なる(?)のは、偶然やねんけど、
同じ(?)テーマな新連載「Home」の話も、しつこく載せておく
(笑)マジで、ほんと、このテーマ、さいきんよく考えますわ。

よろしくお願い致します★

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