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Tシャツ百景

ちょいと前の話なのだが
仕事関係の人に誘われた焼肉屋にプロレスTシャツで行った。
背中で血まみれの選手が笑っているという、あまり外では着られへんやつ。
かといって観戦中に着ている訳でもない。
そもそも最近はあまり会場にも行っていないし、一番好きな選手とかでもない、嫌いじゃないけど。
デザインがいいなあというのと、仕事中に己のテンションを上げるために買うたやつ。

店には、偶然、格闘技のポスターがたくさん貼られていて、案の定ママさんが声をかけてきた。
「おねえさんのそれ、●●でしょ」
恥ずっ、と思ったら、カウンターの向こうのマスターもにこにこしてる。
「ウチのお手洗い、行った?」
なんやろ、と一瞬考えたら、にこにこ二倍増しで「そいつのクリスマスイベントのポスター、貼ってるで」
わたしも二倍増しで「えーっ。みます。いきます。めっちゃうれしい!!」とはしゃいだ。
食べ終わって店を出るとちょうど喫煙コーナーに居たマスターが「みた?」
「みました! いいなー! 欲しい!」
いいねのサムズアップが返ってくる。
「でも最近あいつちょっと手え抜いてるけどな(笑)」 ! 「えーっ、でも言いたいことはわかる(笑)」 「やろ?」

なにもう仲間? 初めて行った店やけど。背中の1選手を通してちょっとフレンド?

似た話。

これはだいぶ前なのだが、
寄席Tシャツを着て新大阪を歩いていた。
鈴本演芸場のシャツ。でもユニクロ。
ユニクロはその後末廣亭のものや歌舞伎デザインのも出したし、そもそも企業コラボものは有名である。
鈴本のはかなり初期のもの。
派手過ぎず寄席寄席していないデザインが気に入り着倒し、のびたら同じものをもう一度買うほどだったのだが。
その日、歩いていていきなり背中を押された。
振り返ると上品な御婦人。
「そのTシャツいいわねえ! 素敵だわ! どこで売ってるの?!」
「ユニクロ……あの、ユニクロです」
すごい勢いにびびってそれしか言えなかった。
ご婦人は何度も頷いて「そぉ! ユニクロ!」と笑顔で去っていかれた。
あの勢いは忘れられない。
寄席ファンの方でいらっしゃったのだろうか。

街で人のTシャツをみるのが好きだ。
見ようとして見てるんじゃない。目に入ってくる。
バンドT。推しT。いろんな柄やロゴのTシャツ。
わたしはそのひとの背中を押してまで話しかけはしない。
でも心の中で「いいですよね」と話しかけている。
会話をしなくてもすれ違うだけでなんだか人となりのひとかけらとか好みや楽しい推しライフまで見えたりもして、でもきっとぜったい関係なかったり知らなかったりイミフだったりそれ息子さんのお古とか着てません?みたいなひとも居たりして、皆、皆のファンである。


一年前にも同じこと書いていた。
季節のかわりめで着るものに悩みだすからなのか。
すっかり秋やなあな昨日の空を添えて。

ちなみにわたしは「推しT」はPC前に飾る人です。

◆◆◆
以下は、すこしだけ自己紹介 。
よろしければお付き合い下さい。

構成作家/ライター/コラム・エッセイスト
中村桃子(桃花舞台)と申します。
大衆芸能、
旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。

某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。

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lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中です。
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旅芝居・大衆演劇関係でも、各種ライティング業をずっとやってきました。
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