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その扉を開けてみる? /大衆演劇・芝居小屋のある風景(など)

近所の芝居小屋の前を通った。
ちょうど芝居終わりの舞踊ショーの時間。
扉から音がだだ漏れ。ド演歌。苦笑した。
オープンしてまだ3年のこの小屋は以前、
向かいのマンションの住人たちから
太鼓ショーによる音と地響きについての苦情が来たと聞く。
思わず立ち止まった。独り言が出た。「めっちゃうるさいやん。アホやん(笑)」

ここ10年程、
関西では旅芝居・大衆演劇のあたらしい劇場が続々と建てられている。
関東の老舗劇場や地方の県の温泉センターのように
「ずっとそこにあるもの」ではない。
関西の雑多でごちゃ混ぜでノリ重視の気質もあるのだろうか。
元スロット屋、元寿司屋、元パン屋だか元スーパー?、元カラオケスナック……
カタチだけなんとかして「芝居小屋でござい」とオープンするところも少なくない。
scrap and buildとも言えぬくらいのところ、
愛などないような経営者のところ、
逆に愛はあるけれどだからムムムなところもある。
「正気ですか?」レベルの劇場やアクセスの不便な場所もある。
時に舞台環境のみならず楽屋や寝泊りの寮などを含め、
決して過ごし良いとはいえない劇場も少なくはない。
「関西は劇場がいっぱいあっていいですね」「ブームですね」
建てればいいというものでもない。

とはいえ、近年の旅芝居はちょっとした旗揚げブームでもある。
人数がそろわぬまま旗揚げをし自分の劇団を持つ座長が増えたり、
小さな劇団が乱立している。
このような劇団が増える中、
劇場が増えるのは乗る側からするとありがたいだろう。
ましてやこのコロナ禍だ。
地方の温泉センターなどでは旅芝居の公演をとりやめるところや休むところもある。
いわゆる劇団たちの「合同公演」というかたちでの公演(ではないと……)も少なくない。
だからこのようなあたらしい小さな劇場も生きている。劇団も嬉しい、客も嬉しい。

しかし、地元に住む人々からしたら突然登場する謎の劇場は「?!」。そりゃそうだ。
冒頭に書いた劇場は、
素敵にガラがよろしくない、もとい、素敵にあっけらかんとした地域にある。
元寿司屋らしい。劇場の扉が引き戸だ、ガラガラッと開ける(ちょっとツボに入った)。
ガラス張りじゃないから閉まっていると中が見えない。
謎の建物、外には幟と品のない浮世絵、当月公演中の劇団のポスター。
時代劇風のものは勿論だが、「イマドキ」な写真を使ったポスターも増えている。
白塗の、白塗りなのに(?)、ヴィジュアル系バンドや2.5次元演劇風の座長の顔がドーン。
そんな建物から日々爆音。
昼と夜の決まった時間には
スリッパを履いて外に出ている役者とキャッキャ騒ぐお客たちが群れたりも。

我々知った・見慣れた者からすると当たり前の光景だ。
でも、知らない人からすると「何あれ」でしかないだろう。
ヒソヒソ、二度見、振り返り振り返り見ながら連れ同士で笑い合う光景も
通りかかる度によく見る。
先日も若い女性二人組が振り返り笑いながら通り過ぎるのを見た。
「何あれキモ!(笑)」「ヤバ!(笑)」うん、ウケるよね。

でもね。通りながら思ったりする。
「ウケる」「キモ」「何あれ」
≪知らないもの≫≪自分たちとは違う世界・縁のない世界≫
思い込みや偏見とは大きなもの。
でもそうじゃなくて、「ちらっと」「ふらっと」でも、
一度入ってみても、いいかもね、面白いかもね、ありかもよ。
近くにあるそんな芝居小屋や劇場の扉を開けてみない?

入って体験したあとに「やっぱりキモかった」とかなら、
それはそれでひとつの感想だ、仕方がない。
でも、一度、どうだろう? だってこんなに身近にある。
きっかけは、冷やかしだったり、面白がったりでもええんやないかな。
なんなら(今この時期は無理になったが)呑んだ勢いの仲間内の「うえーい」でもええやん。
だって新しい扉をあけた第一歩だ。
ぴあやイープラスでチケットを買って正装して行くホール公演じゃない。
堅苦しい芸術や鑑賞会ではない。素敵な「大衆」の芸能だ。
其処にある。傍にある。街にある。生きている。
だから、でも、おもろいねん。でも、だから、おもろいで。どないです?

近い距離で、
舞台上の役者とお客さんが一緒になって作り出す、
時に極論、下品だったり(嫌)、猥雑だったり(とほほ)もする舞台世界。
客席からは目には見えないが圧の強いハートが飛びまくりだったり、
そのハートにはお金と欲と承認欲求とヤキモチと我と、
「私をみて」(客もね)も込められていたり、
そんな綺麗と俗と、俗っぽさからの美、からの「純」がある世界。
生で性で、だから時に聖、いや、生の舞台。
ちいさな空間で、熱とにおいと「今」「この瞬間の」舞台と雰囲気と空気が味わえる。
舞台と、劇場と、人が作り出す、「大衆芸能の」魅力が其処にある。

私的には舞台(の内容や物語)が好きで、好きすぎるから、
旅芝居の世界は(は。笑&笑泣)許せないことや足が向かない向きにくくなることも多すぎたりもする。
また、今の時代、
旅芝居も「俗」や「下品」「猥雑」ですませてはならない、
考えていかねばならない問題もたくさんある、ありすぎる。
スルーしては絶対にいけない問題たちばかりだ。
以下に貼り付けた記事にも書いた通り)

でもそれを含め、
人間の弱さ愚か脆さ、欲や業すらの混じった「におい」、 
眩暈がするほどの「人間の劇場」がある。

いつも通るような其処に、街の中に、だ。

もしかしたら、
人生変えちゃうどころか、
恋や「距離感ずぶずぶ」の沼にハマり、
人生素敵にしんどくなっちゃうかもしれない。
でもそのしんどさが「生きてる!」って実感になるっていう、
なんだ、なんなんだ、ってな、わぉ、生き甲斐にまでなるかも。
そんなことや困ったこと難しいことすら自分の身で味わうのも稀有で素敵な体験かもしれない。

きっかけは、こんなに近くにある。
オープン・ザ・ドリームゲート。夏の扉を開けてみる?

私は旅芝居だけの話をしているのではない。
大衆の芸能。でも、それだけの話でもなくて。なんか、また話、大きくなりすぎか(笑)

さて、冒頭の。
私が独り言を言ったのと同時か、いや、ちょっとだけ後か。
楽屋口から若い役者が出てきた。
紫のふわふわロング鬘に柄物の着流し姿。
はっと目が合った。彼は笑顔で「お疲れ様です!どうも!」
そのまま劇場の入口から入っていった。
「お客様のお膝元よりの登場です!」だ。
びっくりした。おっきくなったなあ。
私の中ではまだ幼稚園か小学生の頃のまま。
地方の温泉センターでませて新選組リアンの『男道』を踊ってたちびっこのまま。
ええやん。イケメンなったやん。すごいなあ。
そう、人生をみているんだ。人生をみてゆく舞台なんだ。
彼は私がこの先業界の中心となると思っている若手のひとり。
「がんばりや」と心の中で声をかけ、立ち去った。


―以下、いろいろ勝手にomake。なんか長くなったがいっかー

◆omake1◆
10年前くらいから同じようなことを書いておる、言うておる(笑)

【Welcome To The 人間劇場≪大衆演劇≫!】

ちなみに今回のトップ写真は文中で書いた劇場の中にて(だいぶ前の写真)

◆omake2◆
仲間内で「うえーい」と行ってみてもえやん、の話。
ちょっと、エピソードをひとつ。また改めて書こうと思ったけれどここに。

近年、私的勝手にHomeと思って通っている大事なストリップの劇場、
ここも家たちの中にどーんとある劇場です。
通い出して4年程、ほんまにグッとくるシーンや体験をたくさんしてきた。
今のようにコロナ禍の影響がまだ酷くない頃のこと。
夜遅くの回に、「うえーい」な一見のお兄ちゃんたちがやってきた。
ちょっとしたことで「ひゅー」「うえーい」
常連さんたちや私、「お、おっと……」。
文中と矛盾するが私はこういう時結構ピキッと&ムッ&ひやひやとなってしまいもする。
でも舞台上のお姐さんたちはこういうお客さんの対応を得意とする人たちが多く、いい雰囲気。
そんなこんなでちょっとひやひやもしながら盛り上がる中、
最後の方に出てきたお姐さんはTHE〝パリピ〟(素敵な意味やで)!
「わぁお」「いえーい」、お兄ちゃんたち喜ぶ喜ぶ!
それまでちょっと客席も少なく、上品だけど静かだったのが、
夜遅い時間に一気に「うえーい」な空間となった。
常連さん「こういうのもな、ええよな、悪くないよな(笑)」
終演後、出ようとしたら先程のお兄ちゃんたちがなぜか私のところへ。
「よく来るんすか!!」「楽しかったです!!!!」「めっちゃ楽しかったです!!」「また来ます!!」

ストリップ劇場では、こういう劇場だからこそ、
常連さんたちの紳士さ真摯さも印象的で、忘れられないシーンがいくつもあります。
こういった「ちょっと騒ぎすぎかなー」な状況の際なども。
グッときすぎたいろんなそれらもまた改めて、ちゃんと。

◆omake3◆
8月。旅芝居で私的「superstar」と呼んでいた
ひとりの役者さんが引退をしてちょうど1年です。
コロナは収束どころかより一層厳しい状況になっています。
コロナそのものだけでなく、そこでみえたいろいろなことが。
旅芝居の世界も同様。
なにも変わっていないなあ。それどころか……。(長くなるので省略。書くけど。笑)
いろんなことを思いだしたり、思う最近、怒り、苦笑、笑い、考える最近です。
とにもかくにも皆、どうぞ、元気でいてくださいね。水分補給大事!やで。

◆◆◆
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大阪の物書き、
構成作家/ライター/コラム・エッセイ/
大衆芸能(旅芝居(大衆演劇)やストリップ)や大衆文化を追っています。
現在、lifeworkたる原稿企画2本を進め中。
演劇、古典芸能好き、からの、下町・大衆文化も好きです。
現在、女2人の酒場巡りを連載中。
現在第9回まで書かせていただいています。今は呑みに行けないけどね。涙。

そして、あたらしい連載「Home」。皆の大事な場所についての文章です。



ラジオ番組の構成などにも関わっています。
現在の主なものは、AMの懐メロリクエスト番組。(昭和1桁〜50年代歌謡)

旅芝居・大衆演劇関係では、各種ライティング業。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、
各種文、台本、役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。あ、小道具の文とかも(笑)。
担当していたDVD付マガジンは休刊中。
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改めて今後ともどうぞよろしくお願いします。ありがとう。ラブ。

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