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ONE PIECE/劇団あやめを観て旅芝居と旅役者のこれからを願った祈った

初めて観た時、その劇団で彼は浮いていた。
好きとか嫌いとかを越え皆が注目せざるを得ない存在感。
よく言えば、ひとり意欲とオーラに満ちていた、満ち満ちていた。
よくなく言えば、完全に浮いていた、しんどいほどに。
体と鋭い目から、気持ちが飛び出さんばかりだった。
俺にはやりたいことがある。俺はここでこうしてはいられない。
その後、彼は、実の家であるその劇団を飛び出し、自身の劇団を作った。
とは聞いていたし知っていたが、観る機会がなかった。
昨年、やっと観た。見た目こそちょっと変われど全く変わっていなかった。
それどころか、どっしりと構えて自らの美学と信念をブレずに表現していた、力を増して。
「俺」という劇団を作り、つっ走っていた。全力で。
 
ふたたび彼の劇団を観たのはちょうど一年経ってから。
つまり、先日のこと。
なんだか行きそびれていたというか、なぜだろう、なんでかなあ?
ふたたび、観た彼と彼の劇団に私はとても「孤高」を感じた。
戦っているように見えた。悪い意味じゃない。でもいい意味だけかと言われるとわからない。
 
≪自分≫≪自分流≫をひたすらに貫き通し続けること、
それはきっと簡単なようで簡単ではない。
傍から見ると好きに好きなようにやっているように見えるかもしれない。
けれどきっとそうじゃない、それだけじゃないし、そうじゃないんじゃないかな。
でも、「そうするしか」出来ないんだよねえ?
美学なんていうと格好いいけれど、美学すら通り越した「自分自身」「私そのもの」。
そうしていないと、立ち止まると、自分が自分ではなくなってしまう?
 
こういった孤高の人は、
熱狂的な信者が付く一方で、
だからこそ距離を感じる人も少なくはないのではないかと思うこともある。
信者や熱狂的に支持する人たちが悪いと言っている訳ではない。
でも。なのに。なんだろう。もどかしいなくやしいな。むつかしいことだな、とも思う。
ただ「自分として生きる」「自分たちらしく」なだけなのにね。
 
私には、私の目には、
自分流、自分たち流を通せば通すほどに、
より泥臭くより「旅芝居」「旅役者」を感じさせるもののように見え、
そのことが、ことは、とても興味深くてならない。
これは最強最高の賛辞。
でも彼らにとってこの例えは褒めではないのかもしれないけれど。
ぎらぎらきらきらのオリジナル演出や見た目を突き通していても、
突き通せば突き通すほどに、その〝ナカミ〟の熱さが滲んで見える。
彼のこだわりであり個性は強烈だ、一見。
派手な見た目と個性ばかりが殊更に取り上げられたり、
そこが変に過剰に称賛されたりもしている。
けれど、変だったりとか「他と違うので」とかじゃないんだよね。
だから、最強に素敵に「旅芝居」なんだ。
故にその様は、時代よりあたらしく、をしようとし、
若い役者たちの尊敬と憧れを集め
旅芝居の歴史に名を刻む役者となった父〝GOD〟や、さらには祖父の姿とも重なりもする。
そうなんだよね、皆が皆、その時代その時代で、「俺の道」「俺らしく」を模索して、ひた走ってきたのだよね。いつもいつの時代も。
それぞれが〝俺の舞台〟を全身全霊で表現してきたんだよね、日々まいにちの舞台で、これまでも今日もこれからも。
ああ、旅芝居だ、旅役者だ。

だからね、観ていて、思った。
10年後、20年後はどうなっているんだろうな、それも観たいな、観てみたいな、観てゆきたいなって。
正直今もそんなにめっちゃ若い人たちの劇団ではない。
でも、10年経っても突っ走ってる、ひた走っているんじゃないかな。
物理的に爆走することは出来なくても、
盗んだバイクで走ることはできなかったとしても、
気持ち的にずっとずっと自分たちの道を、自分たちらしく、
時に苦しくても、なぜならそれが「自分」「自分たち」。
 
そして、仲間がいるから。
 
この劇団を観て、私がとても「素敵やなあ」と思うこと。
それは、座員皆が座長のことを大好きで大尊敬しているのが伝わるところ。
「一緒についていくぞ」「一緒に夢をみるぞ叶えるぞ」
各々の舞台から毎秒毎回ほんとうに伝わってくる気がしてならない。
「走るぞ、ウィーアーFamily!」
うん、まるで、マジで、『ONE PIECE』。 ひとつなぎの。
この劇団は、よく言われるように、スーパー歌舞伎だったり劇団☆新感線だったりなのかもしれない。
同じく、どちらもが大好きで、どちらもから自分の人生と感性に多大なる影響を受けてきた私にとっては、
時にこの劇団の「それらっぽさ」が正直全面的に肯定は出来ないのも本音でもある。
でもそれはさておき、それも含めて、なんだか、めっちゃ『ONE PIECE』なんだ。
折しもこの日のラストショーは『アジアの海賊』。
この歌も個人的には好きかと訊かれるとわからない。
でも、暗い闇の中、ド派手な曲の中、
座長を筆頭とする皆が各々が得物を持ちド派手に世界へと繰り出していく様は眩しかった。
完全に『スーパー歌舞伎ONE PIECE』の色々丸パクリをして盛大にコケてる劇団も幾つも観てきた。
でも「俺」「俺たち」な猿ちゃん一家の『アジアの海賊』は、
もうパクリとか模倣を越えて、もう超越していて、やはり、はち切れんばかりで、ちょっと、いや、だいぶ、感心すらしたしグッと来た。

観ながら、そして、数日ずっと、考えた、思いを馳せた反芻した。
こんなひとやこんな劇団があっていい。
こんなひとやこんな劇団が、
すべての劇団が役者がしんどくなるような業界で世の中であってはいけない。
今年話したとある某旅芝居興行関係者との会話も思い出した。
互いに約束をした。うれしい言葉をくれた。
「お互いに変わらずにおりましょう」
彼もまた優雅に「格好良く」見せているようで日々葛藤している人だ。
 
すべての旅芝居が、旅役者が、もっとおおきなことを言うと、「すべての人間が」、
それぞれの日々を、らしく、理不尽なものにおかされることなく、生きられるよう、輝けるよう。
 
〝壱・弐・参で大逆転、宝島へと船を出せ〟 
 
皆と生きる。皆で生きる!


(劇団あやめ・姫猿之助座長 2022.12・23@十三・木川劇場・夜の部)


この日観た際のつぶやき


と、いつもながらomakeに。すこし。

博多節のこと、前回にすこしつぶやきましたが。
彼女、のこの日のもう1曲も。

貴妃・「咲之阿国」の人形振り。

あまり断定的な言い方はしない、
あまり誰かを両手放しで称賛しないできない、
そんな私が言う、言うてまう、最強です。


と、ちょうど一年前同じ場所でのこと


以下は、ちょろっとですがいつもの自己紹介 。
と、苦手なりにもSNSあれこれ紹介、連載などなどの紹介!!も。
よろしければお付き合い下さい🍑✨
ご縁がつながったりしたらとても嬉しい。

大阪の物書き、中村桃子と申します。 
構成作家/ライター/コラム・エッセイ/大衆芸能(旅芝居(大衆演劇)やストリップ)や大衆文化を追っています。
普段はラジオ番組の構成や資料やCM書きや、各種文章やキャッチコピーやら雑文業やらやってます。
現在、lifeworkたる原稿企画2本を進め中です。
舞台、演劇、古典芸能好き、からの、下町・大衆文化好き。酒場好き。いや、劇場が好き。人間に興味が尽きません。

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