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一途と重さとキラキラの行方/誰かにとっての『高嶺の花子さん』

数年ぶりに会った友人がジャニオタになっていた。
母と姉と共に揃ってキスマイの追っかけをするようになったらしい。
あの頃インディーズバンドにハマってフェスとか行きまくっていた友人が
まさかの今ジャニーズ。いや、ジャニーズがあかんとかじゃなくて。
CDを異様な枚数買って「あげるから聴いて」と布教活動もされた。
「うん、そうそう、俳句得意な子。
その認識だけでも嬉しいありがとう。だから聴いてみてな」
当時から好きだったソイラテを片手に梅田ルクアのスタバで語ってくれた数々のジャニオタエピソードや「担」についての話は興味深かった。
最後に遠い目をして言った言葉も印象的だった。
「ジャニーズはな、距離が遠いからええねん。見なくていいものを見なくていいやん。あと、皆なんか平等やん。正確に言うとちょっと違うねんけどな」
 
ってなことを思い出したのは、
back numberの『高嶺の花子さん』という歌のことをふと考えていたから。
2013年リリースの8枚目シングルらしい。うわ、10年前。
昨年いまさらハマった。
クリスマスシーズンに街で耳にした『クリスマスソング』の流れである。
旅芝居の舞踊でも時折使われてイントロだけで客席が「キャー」ってなる。
私はこういうとき生理的嫌悪感と戦っているのであまり頭に入ってこない。
でも歌だけいまさら聴いてみたらおもしろいのだ。

 
昨年の紅白でもサプライズで披露して話題になった。
朝ドラ主題歌を披露した彼らが突然続けて演奏し歌い出した瞬間、
テレビ越しに会場の空気といろんなテレビ前(明石家さんま曰く「茶の間」)の興奮がなんだか伝わってくるように感じた。
ネット上のタイムラインも審査員の羽生結弦選手もテンションがあがり目を潤ませていた。
私的昨年の過去史上一番面白くなかった紅白の中でも、わりにハイライト的シーンだった気がする。
 
しかしネットでこの歌のタイトルを検索すると思わぬ言葉が一緒に入ってくる。
 
「気持ち悪い」
 
わかる。気がする。いや、気もする。
なんか、なんか、一方的で重いのだ。妄想チックなのだ。
高嶺だから。高嶺だからこそ。
手の届かない女の子に恋した男の子が、
妄想と自分への言い訳と、
でもほんまに好きやねんな想いを繰り広げるという歌なのだが、
「ストーカーっぽい」
失礼やな。でも予備軍っぽいかもしれないとも思わされる。
っていうか、それくらい「好き」「でも自信がない」がrealなのだろう。
これ、『クリスマスソング』について書いた時も同じようなことを言ったけれど(これです)。
歌にしてはどうなん? ちょっと卑屈ちゃう?
でもだからリアルな気持ちや歌詞として響くのだろうな。
あの疾走感ありまくりのメロディーラインに乗せて歌われることでより一層。
だから好きって思う人もキモいって思う人も共に意識する1曲となっているんだろうなあ。勝ちやん。
10年前だけれど全然古く聴こえないのも頷ける。
 
で、何が言いたいかというと。
私は昨年末頃意味もなく疾走感でテンションをあげるためだけに聴いていてふと思った。
なんかこの歌って、誰かから誰かへの「推しへの愛」みたいでもない?
あ、距離の近い世界の。旅芝居とか。
誰かとは特定や匂わせとかではなく誰もという意味ね。
歌詞を聴くと全然「推し」の話とは違う。
でも、距離の近い世界なのに高嶺つまり遠い存在で、近いようで遠くて、一方的に好きで想いをめぐらせすぎててキモ……あ、失礼、一途(笑)で、
だからこそモヤモヤで……なんて、思ったりした。

同歌は「男の子が女の子に」の歌だけれど性別は関係ない。
あ、でもこんなんもあるらしい。最近知った。
≪【女の子目線の】高嶺の花子さん - back number 〜アナザーストーリーver.≫


長いよタイトル。これもまた旅芝居で女形で使われたりなんかしているらしい。びゃー。
 
「ジャニーズはな、距離が遠いからええねん。見なくていいものを見なくていいやん。あと、皆なんか平等やん。正確に言うとちょっと違うねんけどな」
 
おぉー(笑)
 
旅芝居にもちょっと興味深いことを言っていたお客さんが居た。
「私オタクなんで」と「(彼ら役者は)仕事ですからっ」
自分に言い聞かせるようだった。
そんな方のこだわりは
「一番前の席に座ることです。だって舞台しか見えなくなるから。
他のお客さんとか見たくないことやものが目に入らないじゃないですかぁ」
猫も杓子もSNS時代となった今はSNSであらぶっている模様。大丈夫かなあ。
 
旅芝居の場合は疑似恋愛という意味も多いけれど、
それはきっと大きな意味でのものだと思う。
直接的な意味もあるだろう、直接的な表現も(先日の記事ご参照)してるんだし。
でも直接的じゃなくおおきな意味で「私だけを」ってなってしまう人は多いというかほとんどなんじゃないかなあ。例えば1%や1ミリでも。あの近さ故に。
どうにかなりたいんじゃないけれど、なりたい人も居るやろけど、
多くの人が頑張れば頑張るほど
「私をみて」「他の人じゃなく。他の人よりも」なモンスターにもなりがちだったりする人が多い。聞いて来たし、巻き込まれもしてきた。
それを「承認欲求ww」だなんていうのは簡単だし、
なぜ絶対に完全に他人事なんて言い切れる?
嫌でもあれほどまでに近い距離の文化で。
人間ってそんなに完璧じゃないしきれいすぎもしない。

びっくりした話もある。
かの道の通を気取っている人たちが
とある「息子みたいな役者にのめりこんでいる」お客さんに相談されてこう答えたらしい。
「恋? 意味がわからない。私のまわりにいる人たちはそうじゃないのであなたの気持ちはわかりません」
言われた本人から聞いたのだが、私は「!」となった。びゃー。
そうか。大衆の娯楽なのにね。良い悪いじゃなくて、それぞれの観方があるのにね。
こんな近い世界だからこそ、さまざまな皆がさまざまな皆を思いやれたらなあ、と、とても思う。
 
どんなお客さんもそれぞれ本気で真剣。
 
そしてその時その瞬間、
つまり例えば大勢の観客の前で熱狂の舞台が繰り広げられるときは、
ある意味「1対1」なのだ。心の中で。
大勢の、それぞれにとって、「あなたとわたし」なのだ。
ちょっとこのニュアンス、伝わりにくいかもしれないけれど。
その1がたくさん客席に世界に溢れていて。
たくさんの人の1があって。
せやから一体感が生まれる。
神でもなく人間として日々生きている推しはそのことで力をもらう。(たぶん)
その推しに私たちは力をもらう。

そうしてさまざまな皆がさまざまな道を生きていく。
 
紅白でのサプライスでは、
羽生くんが目を潤ませていたのがとても印象的だった。
普段は推される側、
もはや神格化すらされているところはちょっと怖いなと私は思っている。
(だってこれこそ妄想の究極系じゃない? 羽生選手だけじゃなくて誰にしてもどんな分野にしても)
推す側としてback numberのステージをあんな近くで観た反応と表情、忘れられません。

キラキラしてた。

うん、キラキラだった!



昨年から予告していた
ウェブマガジンに連載中のもうひとつの連載
「Home」の第3話、数日中にアップされますまたお知らせします。
これもある意味では誰かの「推し」の気持ちが集う場所、関東の某聖地と呼ばれる場所のお話ですよ。



以下は、ちょろっとですがいつもの自己紹介 。
と、苦手なりにもSNSあれこれ紹介、連載などなどの紹介!!も。
よろしければお付き合い下さい🍑✨
ご縁がつながったりしたらとても嬉しい。

大阪の物書き、中村桃子と申します。 
構成作家/ライター/コラム・エッセイ/大衆芸能(旅芝居(大衆演劇)やストリップ)や大衆文化を追っています。
普段はラジオ番組の構成や資料やCM書きや、各種文章やキャッチコピーやら雑文業やらやってます。
現在、lifeworkたる原稿企画2本を進め中です。
舞台、演劇、古典芸能好き、からの、下町・大衆文化好き。酒場好き。いや、劇場が好き。人間に興味が尽きません。

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簡単な経歴やこれまでの仕事など書いております。パソコンからみていただくと右上に連絡用のメールフォーム✉も設置しました。


現在、関東の出版社・旅と思索社様のウェブマガジン「tabistory」様にて女2人の酒場巡りを連載中。最新話、16回アップです🆕

(以下に第1~16回、まとまっています♫)

と、あたらしい連載「Home」。
皆の大事な場所についての文章、も、ぼちぼちと。こっちも更新せなあかんなー。

旅芝居・大衆演劇関係では、各種ライティング業。文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、各種文、台本、役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。あ、小道具の文とかも(笑)やってました。担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、アーカイブがYouTubeちゃんねるで公開中(貴重映像ばかりです。私は今回のアップにはかかわってないけど)


あなたとご縁がありますように。今後ともどうぞよろしくお願いします。

皆、無理せず、どうぞどうぞ、元気でね。



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