地方の大学生は長期インターンシップにチャレンジできないのか?その答えを自分で作り出した「赤木孝臣」さん
地方の大学生は長期インターンシップにチャレンジできないのか。
東京や大阪には当たり前にあるものが地方都市・岡山にないのはなぜ?
ひとりの大学生の違和感から生まれた、地方の長期インターンシップに特化した求人サイト「COMPUS」を運営する赤木孝臣さんにお話を聞きました。
「経営」と出会うきっかけは不登校の時間。
ーー現在、どんな活動をしているか教えてください。
「地方にいながら長期有給インターンシップをしよう!」を掲げる、地方の学生のために作ったキャリア志向型アルバイト・長期有給インターンシップ求人サイト「COMPUS」の運営をし、企業と学生のマッチングをおこなっています。
このCOMPUSは、主に学生インターンシップだけで運営をしています。
ーー赤木孝臣さんのこれまでについて教えてください。
生まれも育ちも岡山県倉敷市です。小中高を経て今(2020年現在)は大学4回生になりました。
元々僕は、高校生の頃不登校だった時期があったんです。
不登校になった理由は、先生に対する怒りというか、大人に対する不満や不安の積み重ねから学校に行きたくなくなってしまって。
当時の僕には、大人といえば親と先生しかいない状況。
そこに不満を抱えるとどうしても学校に足が向かなくなり、家に閉じこもっていました。
家ではなにをするでもなく、悶々とした時間を過ごす日々。
そんな中できっかけになったのがYouTubeでした。
何気なく見ていたYouTubeチャンネルを通して、さまざまな発信をしている大人がいることを知りました。
その中で、たまたま経営について発信していたチャンネルにハマって。
どんどん経営について興味を持って、自分もちゃんと学びたいという気持ちが芽生えていきました。
単純かもしれませんが、YouTubeで知った経営を、もっと知りたくなって進学を決意したんです。
残念ながら、希望していた大学には縁が無かったのですが、東京にある経営について専門的に学べる通信制のBBT大学に入学しました。
地方在住ではインターンシップにチャレンジできなかった理由
ーーどのようなきっかけで「インターンシップ」に興味をもったのですか?
大学の同級生と会話をする中では「インターンシップ」ってよく登場するんです。それで自分も経験してみたいと思って岡山県内で検索したんですが、ほぼ皆無で。
「インターンシップ」って関東圏や関西圏では当たり前のようにあるのに、地方の大学生には経験する機会が全くない状態を目の当たりにして衝撃を受けましたね。
そのときは岡山で経験できないなら、とりあえず別の地域で経験してみよう!と考えたんです。
そこで、大学の友人が大阪に住んでいることもあり、大阪に住まいを移してインターンシップを経験しました。
正直なところ、なんだか「インターンシップ」って響きがカッコイイじゃないですか。
大学の同期生は同年代からすでに会社を経営したり起業家など様々な分野で活躍する人が多いんです。
もちろん、いい刺激も多いけれど何も出来ていない自分自身に焦りや劣等感があったから、とりあえずチャレンジしてみようって。
でも、はじめてのインターンシップ先が自分にはあまり合わなくて。
IT系にチャレンジしてみたんですが、短期間で辞めることに。
何事もやってみなきゃわからないですね。
ーーはじめてのインターンシップを辞めてからは?
楽しく遊んでましたね。せっかく大阪に来たんだから、楽しもうって。
お金がなくなったら岡山に戻って働いて、資金を貯めると色々な場所へ。
沖縄でのんびりバカンスを楽しんだり、バックパッカーになってタイをはじめアジアも一周したりしました。
大学の友人が国内だけでなく、海外にもいるので行く先々で会えるのも楽しみのひとつでした。
一冊の本との出会いから岡山での活動が動き始めた
ーーお聞きすると活動の中心は県外ですね。岡山での活動のきっかけはありますか?
岡山で過ごしていた大学2回生の冬に、前田祐二さんの「メモの魔力」発売される際に、500冊購入すると講演会を開く権利が得られることを知りました。
なぜかそのとき、後先考えずに「講演会開きたい!」「面白そう!」と勢いで500冊購入しちゃったんですよね。
当然なのですが、購入したらお金を払わなくちゃいけない。幸いなことに購入したのは予約販売時だったので、発売日までにお金があればよかったんですが、今の僕では払えない金額でした。
そこで「どうしよう、、、」ということをTwitterで発信してみたんです。
こんな面白いことあるけど、どう?って。
そうしたら、どんどん岡山界隈の起業家たちから声をかけていただくようになり、つながりを持つようになっていきました。
こんな縁があるんだ、と思いながらもコミュニケーションを取っているうちに資金の援助してくれる人が現れたり、岡山の起業家や起業を目指す人たちと経営や事業の話を出会ってするようになっていったんです。
その中のひとりが現在インターンシップで運営に関わるCOMPUSの代表者である藤田さん。
実は最初、藤田さんがどんな事業をしているのかも知らなかったんです。
なぜか話すうちに、とにかくこの人と働きたい、この人と働けるならどんな仕事でもいいって思うようになったんですよね。
この出会いをきっかけに藤田さんの会社にインターンシップに行くことになりました。
ーーインターンシップではどのようなことを経験されたのですか?
実際、インターンシップに行きはじめたけれど何をやるかは決まっていなかったんです。
決まっていたのはインターンシップだけでなにかを立ち上げて運営をすることだけでした。
「なにをやろうか」と、同じインターンシップ仲間との雑談の中で、岡山にいる同年代が「インターンシップ」について全然知らないことがわかったんです。
岡山県で大学生が働く=アルバイト、という選択肢しかない。
だから「インターンシップ」についても知らないし、そもそも岡山に長期インターンシップの募集なんてない。
知らなければチャレンジする機会もありませんよね。
それならば、岡山でインターンシップにチャレンジできるようにしたいと考え、岡山から発信できるインターンの求人サイトを作ろう、とスタートしました。
なにかを作ろうにも知識がない
ーーサイトをつくろうと決めてから、事業はどのように進められたのですか?
「岡山でインターンシップにチャレンジできるようにしたい!」という思いで、四苦八苦しながらビジネスモデルを考えて取り組み始めました。
大学で経営について学んではきたけれど、自分ごととして事業を考えたのは初めての体験です。
自分の手や頭をとにかく動かすことを通して「事業をつくるってこういうことなんだ」と改めて気が付きました。
大学の仲間たちが事業計画の話をする中で「それは机上の空論だよ」と話をしていたものが実際にどんなものなのかもわかるように。
想いだけでは事業になりません。
さまざまなバランスをとってかたちにしなければいけない、学んできたことがリアリティを増して目の前にありました。
どんなサイトならインターンシップを探す人と企業を結び付けられるだろうか、とデザインや使い勝手など仲間と試行錯誤しながらつくり上げました。
今も大海原を試行錯誤していて、いろんな泳ぎ方で試しているような感じかな。
まだしっくりくる泳ぎを確かめている途中ですね。
ーー運営をする中で一番大変だったことはなにかありますか?
組織作りですね。COMPUSはインターンシップだけで事業を作り上げて運営しています。
初期メンバーが自分を含めて3人、そこに事業内容が決まってさらに3人採用し、6人のインターンシップで事業に関わるようになりました。
ただ、やりたいことは決まっているけれどメンバーの担当が決まっていないような状況。とにかくコミュニケーションを取って、担当を決めながらつくり上げていったんです。
自分の役割はとにかくチームを前進させること。そう考えて、奔走してきましたね。
今は少し運営に関わる量を減らしていますが、問題なく運営できているのは組織がチームとして機能しているからだと思います。
動き出した事業のこれからのこと
ーーこれからCOMPUSをどのようにしていきたいですか?
インターンシップが地方にしっかりと浸透するのを自分の目で見たいですね。
「COMPUS」では、30事業者、500人余りの学生が登録してくれていますが、もっと企業と学生の登録数を増やしていきたいです。(2020.11月時点)
インターンシップをすることで、学生側は企業を深い部分まで知ることができます。
それは、事業者にとって新たな視点の発見やアイデアの提供があるだけでなく、PRやブランディングにもつながるメリットがあります。
実際に企業で働く人の口コミって影響力も大きいですよね。
インターンシップに関わる学生たちの声も同様で、とても大きな影響力を持っています。その声をうまく生かして、学生にも企業にも発信していってもらいたいですね。
もちろん、インターンシップは受け入れる企業側と学生の相性もあるので、キャリア相談では中立的な立場でアドバイスをします。
ポジティブな部分もネガティブな部分も、しっかりと伝えた上で選んでもらうように話すように心がけていますね。
長期インターンシップは絶対的な制度ではなく、大学生が社会とつながるときに選ぶ選択肢のひとつ。
自分自身で経験したからこそわかりますが、アルバイトでは経験できないようなことにチャレンジできるのが大きな魅力ですね。
(インターンだけで)求人サイトをつくるだなんて経験、なかなかできません。
これからも、長期インターンシップの魅力を企業や学生に向けて発信していきたいです。
活動を通して得た「新しいコミュニティ」
ーーこれまでのことを振り返って、これをやってて良かったなとか、幸せだなと思う瞬間はありますか?
起業友達とご飯に行っているときがめちゃくちゃ幸せです。
同世代と飲みに行って、将来のこと、俗にいう「意識高い」と言われるようなことも普通に話せるので。
BBT大学1年生のころは、そういう話が出来なかったんですよ。
地元の人に言っても、「え?」「怪しいことしてるの?」みたいな。
起業家友達とは、そういった先の話とかが出来るので楽しいな、と感じますね。
上の世代だと言いにくいこともあるので、同世代に楽しいことも、苦しいことも共有したりとか。
新しいコミュニティができるというか、周りにいなかった魅力的な同世代と集まって話が出来るというのは、幸せなことだな、と感じますね。
お互いの夢や事業のことを話している時間はとても刺激的で学びがあります。
考え方が違うところもありますが、いつも話を聞いてくれている友人はライバルであり、よき理解者として貴重な存在です。
ライバルでありながら、よき理解者ですね。
そして、これからはCOMPUSだけでなく、もっと新しいことにチャレンジしたいと思っています。
社会的な事業も起こしたいし、世の中に対してデザインで物事を解決することも提案していきたいですね。
最後に
笑顔で、ご自身の経験を話してくださった「赤木孝臣」さん。自身のもった小さな違和感から、新しいものをつくりだすこと。
シンプルながら、答えをつくりだせる強い力を感じました。
人懐こい笑顔と柔らかな口調の中に、時折見える芯の強さ。その魅力に巻き込まれていく人が多いのにも納得できます。
なにをやろうかな、と考え中の岡山県内の大学生の方は是非、COMPUSで長期インターンシップにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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