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ママから起業家へ!大津朱里(あーこ)さんに聞く、仕事と子育てを両立する起業論。

「ママでも自分らしく働きたい」


多くの働くママ達が目指す理想ですよね。

今回取材させて頂いたのは、二児の母であり絶賛子育て中にもかかわらず起業した「Linoah」代表の大津朱里(あーこ)さん


ご自身の子育て経験から、保育園を探す活動(通称:保活)が大変と感じ、自ら保育施設の検索ポータルサイト「ほいらく」を立ち上げました。

※2020年度中のリリース予定

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市役所に行かないとわからない保育園の情報には「調べやすい」を。

保活の様々な手続きに関しては動画配信などで「わかりやすい」を。

電話受付のみ対応の保育園の見学予約をWeb化し「見学しやすい」を。


ママ達が抱える保活問題だけではなく、保育全般に三つの「しやすい」を提供する事業です。


その取り組みが認められ、SOERU第4回中国地域女性ビジネスプランコンテスト優秀賞 一般社団法人中国経済連合会長賞も受賞されています。

山陽新聞(20201113)


育児が大変な時期に起業した理由や、育児と仕事の両立についてお聞きしました。


東証一部メーカーのエンジニアから専業主婦へ

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――起業を始める前はどんなことをされていたんですか?

高等専門学校の電子情報工学科を卒業して、電機メーカーで電子部品の設計エンジニアを6年半してました。


結婚を機に別の電機メーカーの事務に応募したんですけど、面接で打診を受けて法人営業として働くことに。

そしたら「営業だったら大阪行ってね」と言われちゃって。

――新婚でいきなり遠距離になったんですか?

そうなんですよ。まぁ会えない距離じゃないので週末婚みたいな感じで。

「ちょっと修行行ってくるわ」みたいな感じでした(笑)


その後、一年半くらいで妊娠が発覚、切迫早産になり退職、専業主婦になりました。


その後二人の子どもに恵まれて、三年間くらいは専業でしたね。

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――そこからどうして起業することに?

子どもを保育園に預けて働こうと思ったんですが、保育園に入るには点数(指数)というのがあって。


例えば両親共働きだと満点で優先して入れるとか。

私は求職中だったので点数が低くて難しかった。


なので、とにかく「就職しなきゃ!」って動いてたんですが前職と同じ職に復帰した場合に残業も多く、子どもに合わせるのは難しいなと考えて、在宅Webエンジニアになろうと。



これが前職とは全く違う仕事内容なんです。

言語などは学校で少し学んでいましたが結局ほとんど独学で学びました。

同時に保活も続けてたんですけどこれがすごく大変。


時代に取り残されてるというか、情報収集が難しい。検索して出てくる情報がすごく少ない。


保育園を調べるのに市役所に行って、一覧をもらって、一軒一軒リストの上から順番に電話をかけて見学をお願いしたり条件を聞いたりするんです。


レストランなら食べログのようなポータルサイトがありますよね。

でも、保活にはそれがないんです。


市に要望したとして予算が取れて実際に稼働するのは何年先かと考えた時に「自分で作ろう」と決意して、起業することになりました。


「保活は大変」という常識を変えたい

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――「ほいらく」の事業内容はどのようにして決まったんですか?

自分が経験して、保活の大変さを知ったからですね。

厚生労働省のアンケートでも84%の人が保活が大変だと考えています。


大変な理由は、自治体は情報を持ってるけど調べにくい、反対に口コミサイトは調べやすいし見やすいけど情報が少ないということでした。

保育園の情報も手続きも全部市役所に行って聞かないとダメ。


ママが大変なのはもちろん、セミナーもやってないので、一人一人に同じことを説明する市役所の人も大変なんですよ。


見学予約の手続きも電話対応のみなので、子どもが寝てる時を狙って電話するんです。

保育士さんもバラバラにかかってくる電話にその都度日程調整をしなきゃいけないのは大変ですよね。


今は、コロナ禍で見学受け入れしてない所もあるので、それもWeb化して保育施設から設定してもらえたら楽だなと。



また、岡山市の待機児童数は1700以上ある自治体の中で4位なんです。


原因は保育士不足。児童数が定員割れしてても保育士さんが足りず受け入れできない状況があります。


なので、保育士の求人募集や実習先の案内など地域課題の解決につながる取り組みもしていきたいですね。


あとは、企業との直接提携を検討中です。

「保活補助しますよ」って求人票の福利厚生に書くだけでも大きいんですよね。

保活補助という言葉自体まだなじみがないので。


まずは、岡山市から「保活は大変」という常識を変える。

そう考えて、できたのが「ほいらく」です。


良き理解者であり、支援者である夫の存在

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――起業するにあたって、ご主人の反応はいかがでしたか?

夫はすごく協力的で、そもそも在宅でプログラミングの勉強をするよう勧めてくれたのも夫なんですよ。


「やってみたら」「いいんじゃない」って言われているうちにあれよあれよとこんな状況に。掌で転がされてますよね(笑)



夫は何事も肯定から入ってくれるし、元が同じ業種ということで相談相手でもあるし、「子どもを見ながら一人では限界があるので外注もしたい」というと資金面でも支援者になってくれました。



同時に私も、「夫にばかり頼るわけにはいかない!」と岡山県地域課題解決型起業支援金に応募して、無事採択されたんです。


半分は岡山県からお金が出ることになりましたが、やっぱり身近に支援者がいるのってすごく大きいなと。


一生懸命になりすぎてヒートアップする私を、良くも悪くも全部認めてくれたから頑張ろうと思えましたね。

最初はうまくいかなくて私が怒ってしまうこともあったけど、今は落ち着いて喧嘩もめったにない信頼関係を築くことができました。


仕事と育児で悩み、見つけた「今に向き合う大切さ」

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――起業して一番大変だったことは何ですか?

仕事と育児の両立が難しくてイライラしてた時期があったんです。


でも、「なんでちゃんと両立できないんだろう」っていう気持ちを一旦置いて、「今は仕事」「今は子どもと遊ぶ」みたいに、今はこの時間だからその間は他のことを考えないようにすることで、すごく楽になりました。


焦る気持ちも全部置いて、ひとつずつ向き合う。

動画で勉強しながら家事をやったり、子どもとブランコにのりながら本読んだり、「今はこれをするとき!」って決めて過ごすようにしています。


また、元々勉強のために所属していたエンジニア初心者のコミュニティの人たちが仕事を手伝ってくれるようになったんですね。


私が「こんなビジネスがしたい!」と話すと「手伝うよ」「やりたいです」って、手をあげてくれたんです。


コミュニティメンバーの実績作りに繋がったり、独立したいメンバーには情報を提供したり、ギブしあう精神で良い関係が築けていると感じます。


クラウドソーシングも考えたけれど、顔を合わせて信頼してお願いできる今のメンバーの存在がすごくありがたいですね。


起業のおかげで、人との出会いや関係性が変わった

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――では、反対に起業して良かったことは何ですか?

やっぱり、セミナーで出会った方々とのご縁ですね。

事業が進むにつれ、人との繋がりのおかげで今活動できていると実感しています。


あとは、夫との関係が変わったこと。


起業前は家事も育児も私で、夫は残業もたくさんあって当たり前だったのに、今は定時で帰ってきて、家事や育児も積極的に動いてくれています。


――素敵ですね。旦那さんとの関係が変わったのはなぜだと思いますか?

相手に「〇〇をしてほしい」という欲求があると、イライラしてしまうので自分から進んでやるようにしたんです。


例えば、自分から「洗い物したよ」って言うようにしたんです。

すると、夫も何かをしたら報告してくるようになったんです。


お互いにやったことを報告して、お礼を言ってもらえるような環境にしています。


お互いにありがとうって言い合う。

嬉しいのでさらに動く。

いい循環ができていると思います。


働きたいママのための仕組みづくりへ

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――これから事業をどのようにしていきたいですか?

まずは、「ほいらく」を通じて岡山市から「保活は大変」という常識を変えたいです。


そして、後々は働きたいママやシングルマザーの方々を雇用できるようにしていきたいと考えています。


「潜在的保育士」という言葉があるんですが、保育士を経験していなくても保育に関する仕事をしたいと考えている人がいるんですね。


特に、自分が子育てを経験したママ達に多いんです。


地域課題解決のためにも、求人や資格取得の情報など潜在的保育士の皆さんの受け皿にもなりたいです。


失敗は当たり前。心に余裕を持つことから始める

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――最後に、これから起業したい人へメッセージをお願いします。


失敗自体は怖がらなくてもいいんです。それだけでは死なないから(笑)

「失敗は当たり前」という気持ちから入ることが大事だと考えています。


だから、とにかく小さくても動き始めるのがいいと思います。


そして、動き始めるためにも、特に私と同じ主婦の方は、自分の時間をどれくらい取れるか把握するのが大事です。


睡眠も大事ですし、「ここは子どもとの時間」みたいにした方がその時間に集中することもできます。


子どもを抱っこしているときに「この時間で仕事のあれもこれもできる…」って思ってるとつい、イライラしてしまうんですね。


また、お金がかけられるのなら外注も視野に入れてみるのもいいと思います。自分の心に余裕が持てるように起業するのが大事だと思います。


取材を終えて

インタビュー中、終始穏やかな笑顔と声で話してくれたあーこさん。


ですが、その奥には「困っているママ達の力になる」という強い意志を感じました。

真摯に向き合い、周りに感謝する。


当たり前のことを自分はちゃんとできているだろうか、改めて考えさせられました。


岡山で「保活」をしているかたは、ぜひ「ほいらく」を使ってみてくださいね!


>>あーこさんのTwitterはこちら

>>保育施設の検索ポータルサイト「ほいらく」はこちら


▼あーこさんは、岡山のスタートアップを加速させるアクセラレータプログラム「飛行船」にも参加しています!


執筆:下原弥子/撮影:秋本直哉/編集:やぶなお

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