すもも

はじめまして。すももです(#^^#)  長いこと図書館司書する中で、多くの本が、誰にも…

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はじめまして。すももです(#^^#)  長いこと図書館司書する中で、多くの本が、誰にも手を取られることなく消えていきました。 絶版になった、古くなった、読まれない、除籍する前に十分努力したか、そんな自戒の念をこめて一般書と児童書を交互に紹介していきたいと思います。

最近の記事

字のないはがき           向田邦子原             角田光代文・西加奈子絵

世界各地で戦争が今も続いています。その中でいつも犠牲になるのは市井の人々、とりわけ弱い子供たち これから、”疎開と図書館と子ども”をテーマに3冊紹介させてください。3冊目です。 戦争が激しくなり、私のちいさな妹も疎開するなった。 まだ字が読めない妹のために  父は、数え切れないほどのはがきを用意した。 全てのはがきのあて名に  自分の住所と名前を書き元気な日は ○を書いてポストに入れるように話した。 初めて届いたはがきには はがきいっぱい書かれた○ ○はだんだんと・・・ 日

    • 図書館がくれた宝物          ケイトk・アルバス

      世界各地で戦争が今も続いています。その中でいつも犠牲になるのは市井の人々、とりわけ弱い子供たち これから、”疎開と図書館と子ども”をテーマに3冊紹介させてください。2冊目です。 戦時下のロンドン。 ずいぶん前に 父母を亡くした12才のウィリアム、 11才のエドマンド、9才のアンナの3兄妹は 今また 祖母も亡くし身寄りをなくした。 保護者となる後見人を見つけなければならなくなった。 ロンドンを離れ、学童疎開することに。 初めに3人を預かってくれたのは 同年齢の2人の息子いる家

      • おやすみなさいトムさん       ミシェル・マゴリアン

        世界各地で戦争が今も続いています。その中でいつも犠牲になるのは市井の人々、とりわけ弱い子供たち これから、”疎開と図書館と子ども”をテーマに3冊紹介させてください。1冊目です。 第二次世界大戦中のイギリスの疎開児童をめぐる物語。 戦争が激化してきたロンドンの子どもたちの田舎へ疎開が始まった。 ウイリアムという名の少年は、骨と皮のようにやせ細り、 何に対してもおどおどとしていた。 一方、預かり先のトムは かつて妻子を亡くして以来 人嫌いとなった頑固な老人だった。 国民の義務な

        • バレエダンサー ルーマ・ゴッデン作 偕成社  -gifted child-

          原題はThursday's Children。 Mother Gooseの「月曜日の子ども」という歌を ご存じだろうか? その中にThursday’s child far to go (木曜日の子どもは旅に出る) 苦難の道を歩むとでも訳しましょうか? ルーマ・ゴッデンは80才を過ぎてから この作品を書いた。 彼女自身もロンドンでバレエ教室を主宰していた。 主人公のデューンはspringのHalのように 恵まれた家庭環境ではなく 彼がバレエダンサーを 目指すのは並大抵のことでは

        字のないはがき           向田邦子原             角田光代文・西加奈子絵

        • 図書館がくれた宝物          ケイトk・アルバス

        • おやすみなさいトムさん       ミシェル・マゴリアン

        • バレエダンサー ルーマ・ゴッデン作 偕成社  -gifted child-

          コルベ神父~優しさと強さと~    早乙女勝元

          手をさしのべた人たち  アウシュヴィッツ収容所では日常的にナチスに よる無差別な殺害が行われていた。 ある日 無作為に選ばれた囚人10名が餓死室へ 送られることになった。選ばれたポーランド人が 「もう家族に会えない」と嘆いた時  コルベ神父は身代りを願い出た。そして餓死室で10人は 神父とともに 祈りと讃美歌に包まれて亡くなった 神父は餓死では死なず、注射により殺害された。 このフェノール注射をした医師はどんな気持ちで 神父の腕を取ったのだろう。 コルベ神父のことは半世紀前に

          コルベ神父~優しさと強さと~    早乙女勝元

          ふたりの星 ロイス・ローリー    

          手を差し伸べた人びと ナチスというと第二次世界大戦中の ドイツのことと思われるかもしれない。 ナチスの支配下にあったデンマークの少女 アネマリーとユダヤの少女エレンの物語である。 コペンハーゲンでもユダヤ人迫害が始まった。 エレンの家族を隣国に逃がすため アネマリーの家族が手を差し伸べる。 姉ののフィアンセの力も借り、自由を求め 命がけの脱出計画が始まった。 この計画が発覚すれば命さえ失う。 戦時下 反ナチスを掲げ立ち上がることは 命がけである。 ごくごく ふつうの人たちが

          ふたりの星 ロイス・ローリー    

          カラスはけっこう人気者? #4      カラスの教科書 松原始

          カラスはけっこう人気者?カラスシリーズ全4回の4回目 最終回ではカラスたちの生態を探ってみよう ※カラスの教科書 松原始 これは教科書ですが、固苦しい教科書ではありません。 カラスが好きで好きで大学の先生になってしまった 先生の「狂歌書」です。 この本を開くと読む者を惹きつけてやまない 文と絵が登場する。カラスはなにか不気味だ。 ところが、先生曰く、カラスはグルメでマヨラーという。 そう言われて絵と文をしっかり読むと なるほどそうかもね。でもね。あの声が・・・ では頁を

          カラスはけっこう人気者? #4      カラスの教科書 松原始

          カラスはけっこう人気者?#3      シートン動物記           銀の星 ~あるカラスの物語~

          カラスはけっこう人気者?カラスシリーズ全4回はじめました 今日はその第三回です。 ※銀の星 ~あるカラスの物語~ アーネスト・トムソン・シートン    動物記で有名なシートンの作品である。 「銀の星」と名付けられた賢い年寄りのカラスの物語。 銀の星の一隊は200~300羽ほどであった。 銀の星は統率力のある頭のいい隊長であった。 又いい教師でもあった。 若者たちに「異常なし」「気をつけろ」「危ない」 などの鳴き方(カラス語)を教えた。実際本の中には 五線譜が書かれ、上記の

          カラスはけっこう人気者?#3      シートン動物記           銀の星 ~あるカラスの物語~

          カラスはけっこう人気者?#2     北極カラスの物語 C.W.ニコル

          カラスはけっこう人気者?カラスシリーズ全4回はじめました 今日はその第二回 ※北極カラスの物語 C.W.ニコル 北極圏に住む野生動物たちはいつも飢餓感を抱えている。 オオカミ、キツネ、ウサギ、レミング・・・ 北極ガラスのゴンはそれぞれの動物たちの関わりを 俯瞰してみている。 子ギツネのコロンと天敵であるオオカミのグルーガ との奇妙な関係がいつしか変わっていく。 グルーガの心にコロンを思うやさしさが芽生えてくる。 だれかが隣にいてくれる安心感。 自然を縦軸に、動物たちの生き

          カラスはけっこう人気者?#2     北極カラスの物語 C.W.ニコル

          カラスはけっこう人気者?#1       からすたろう 八島太郎

          [カラスはけっこう人気者?]カラスシリーズ全4回はじめます 今日はその第一回です。    八島太郎は「からすたろう」「あまがさ」「海浜公園」 (3作ともコールディコット賞次席受賞)の 児童作家である。私は長いこと 彼の作品に流れる寂しさに心惹かれてきた。 彼を日系米人だと思っていた。 前回紹介した「反戦平和に生きた人びと」で 「蟹工船」の小林多喜二のデスマスクを描いが 八島太郎であったことを知った。 もっと知りたいと 「八島太郎」(野本一平)  「あたらしい太陽」(八島太

          カラスはけっこう人気者?#1       からすたろう 八島太郎

          手をさしのべた人たち

          アンネ・フランク 早乙女勝元 世界は今あちこちで争いが起こっている。 ウクライナでパレスチナ・・・ 広島、長崎に落とされた原爆の比ではない規模の 核爆弾を所有している国が複数ある。 「アンネの日記」を読んだ人は沢山いるだろう。 これは、第二次世界大戦中のナチス占領下で アンネ一家に隠家を提供し、生活を 支え守った人びとの記録である。 私は半世紀ほど前にアムステルダムのアンネの 隠れ家を訪れたことがある。狭い階段を昇った屋根裏に 本棚でカムフラージュされたその部屋はあった。

          手をさしのべた人たち

          Spring 恩田陸 -gifted child-            

          -gifted child-spring  恩田陸著 筑摩書房 少年の名は「萬春」 恵まれた環境の中で育った彼は 8才の時 バレエと出会う。15才でドイツへ。 どうすれば世界を手に入れることができるか? 「踊る人」踊ることを楽しむことができるか? 心の叫び。自由であること。 カタチの先に いい自由の場所がある。 幾多のまだ見ぬ季節に出会うために 命のある限り踊り続ける。 名前の由来をten thousand springsと答える彼。 踊りの先に何があるのか? gi

          Spring 恩田陸 -gifted child-            

          「守教」帚木蓬生「沈黙」遠藤周作

          「守教」(帚木蓬生著)と「沈黙」(遠藤周作著) キリスト教弾圧の歴史は450年余続いた。 その時代を縦軸に隠れキリシタンの生き方を横軸として この2つの物語は始まる。 まずは「守教」 1570年 一万田右馬助は大友宗麟の命を受け 筑後高橋村の大庄屋となる。 右馬助と麻夫婦には子どもがいなかった。 捨て子だった男の子を養子とした。 その養子を米助と名付けた(後に平田久米蔵となる) この村にパードレー・アルメイダは私財を投げ打ち 信仰とは神への愛、全ての人への愛、自分を聖なるも

          「守教」帚木蓬生「沈黙」遠藤周作

          ヴィンデビー・パズル

          久方ぶりに ロイス・ローリーを読んだ。 矢張り、魅了された。 1952年ドイツの湿地で一体の遺体が発見された。 およそ2000年前の13才の少女の遺体であった。 少女は肩口に小動物の毛皮をまとい、目かくしをされていた。 その他には何も身につけていなかった。 暴力を振るわれた形跡はなかったが、なぜか左側頭部の毛が 刈り取られていた。 わたし(著者)はこの少女を「エストリルト」と名付け、判明した事実を パズルのピースと考え、生きてきた少女の物語を紐解き始めた。 男のみしか参加で

          ヴィンデビー・パズル

          潜水服は蝶の夢を見る

          7年前 左薬指の手術を受けた。術中 私の意識は、はっきりしていた。 看護師の「終わりました」という言葉で 自分の左腕の信じられない重さに驚かされた。 私が統べることが出来た自分の身体とは思えなかった。重たかった。 この重さを伝えてくれた本を、20年以上前 読んだことがあった。 以来、この本を探していた。 偶々読んだ「緘黙」(春日武彦著)に1940年コネチカットの富豪が、 息子のために潜水服を特注したが、その重さと閉塞感に使用は断念。 私は「潜水服」というKEYWORDを見つけ

          潜水服は蝶の夢を見る

          タチ~はるかなるモンゴルをめざして

          最近 児童書の古典を再読している。多くの児童書に心ときめいたが その中から紹介したいと思う。 絶滅したと思われていた蒙古野馬の話である。 モンゴルの少年バリュートが、この蒙古野馬の群れを発見したことにより 世界中の動物学者がこの種を絶やさないように 各国の動物保護区で保護しようと動き出す。 「タチ」と名付けられたこの馬は四角ばった顔と強そうな毛がもしゃもしゃした先史時代の馬そっくりだった。タチはイギリスの保護区に引き取られた。イギリスの動物学者であったキティの祖父は孫娘の

          タチ~はるかなるモンゴルをめざして