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【商売図鑑】宝船桂帆柱(2)十遍舎一九×歌川広重
呉服店 両替屋
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呉服店 〔志満屋〕〔大吉利市〕
呉服やは 夜の間にみせを 明烏 はや かを/\と 人の寄来る
〽 へゝ 入らせられませ ハイ/\ ちりめんに よいしまやも
〽 ハイ/\ ござります
両替屋 〔● 付〕
正直を金性とすれば 両替 の栄ゆる運は 天秤のをと
〽 大ばんとうに 小ばんとう にぶいかほして 一ぶでも 天秤にかける事なし 小玉 お茶をくめ
※ 「利市」は、商いの儲けのこと。
※ 「明烏」は、夜明けがたに鳴く烏のこと。ここでは、店を「開ける」と掛詞になっています。
※ 「大ばんとう」「小ばんとう」は、大番頭、小番頭。
※ 「にぶいかほして」は、鈍い顔して。
※ 「一ぶ」は、一分。一分金のことと思われます。
※ 「小玉」は、小玉銀(豆板銀の別称)と 玉緑茶 の掛詞になっていると思われます。
材木屋 金物屋
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材木屋
金のなる木を 売ものゝ 貫小割 これや宝の 山挽にして
〽 ひの木の なゝ六 よしのか
金物屋 〔● 千〕
商売 に 直なるこゝろ みがきなば 金気はみせに 絶ぬはんじやう
〽 うれ高が だいぶんふえてきた こりやどう十
※ 「貫」は、柱の頭部を横に貫く木材のこと。柱貫。頭貫。
※ 「小割」は、ここでは木材の規格のひとつ、木口2.5cm前後・長さ1.8mほどの角材のことと思われます。
※ 「なゝ六」は、角材の寸法規格でしょうか。
※ 「はんじやう」は、繁昌。
米屋 小間物屋
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米屋
新米の俵のいろの青ゝと 杉形につむ みせのにぎはひ
〽 まはしが しつかりじやァ ねうちが ちつとむづかしい
小間物屋 〔炭〕〔萬小間物〕
くる/\と 金廻りよき 身代は これぞ 博多のこまものゝ舗
〽 こいつァ こうかいゝわへ まるりきには ふめる/\
※ 「杉形」は、米俵などを三角形に積み上げたもの。
酒屋 香具屋
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酒屋 〔銘酒 瀧水〕
正直を 一本木なる 酒みせの栄へは 日ゝに神ばかりなり
〽 かみやのきく かじまのうろと かもだのあらし山は 上もの
香具屋 〔御顔の薬白粉 京橋 坂本氏製 美艶仙女香〕
名はたかき 紅看板の あかねさす 日の出と見ゆる 舗のはんじやう
※ 「銘酒 瀧水」は、江戸神田和泉町の酒屋、四方久兵衛で売られていた銘酒。滝水。滝の水。
※ 「はんじやう」は、繁昌。
※ 「坂本氏製美艶仙女香」は、当時評判の白粉で、坂本氏が販売していました。よかったら過去 note を参照してみてくださいね。⇒「江戸高名会亭尽 雑司ケ谷之図」👀
紙屋 干物屋
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紙屋 〔ヤマ九〕
祥ゐを ゑびす紙やのにぎはひは 掛直なくして 安うり三郎
〽 いふまさに とき こよし/\
干物屋
売ものゝ たくさんなれば 身上も 春のひものゝ あたゝかに見ゆ
※ 「掛直」は、掛値。値切られることを想定して、実際の販売価格より高い値段をつけること。
※ 「ゑびす紙」は、恵比須紙。紙を重ねて裁つときに、角が内に折れ込んで裁ち残しになったもの。十月は諸神みな出雲大社へ出かけられるのに、恵比寿神だけが残ることから来ているそうです。
※ 「ときこよし」は、時小好でしょうか。
木薬屋 塗物屋
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木薬屋 〔⃞上〕
精出せば 利目の見ゆる くすりみせ 金も命も のばすあきなひ
〽 此はんもと 岩戸やにて 取次うりひろめ たんの妙薬 むるい丸 ●百文
塗物屋 〔ヤマ竹 本店〕
生業の 利とくをせらめ 漆にて いつも堅地に 見ゆる身代
〽 いわとやにて うりひろめせんき ● 切業
※ 「木薬屋」は、生薬屋。
※ 「むるい丸」は、無類丸。咳・痰の薬。
※ 「生業」は、生業。(生業は草の種=暮らしを立てるための職業は、草の種のように多い)
※ 「利とく」は、利得。
古着屋 古道具屋
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古着屋
正直の かうべを 神の守にて 子はや ふるぎの 店のはんじやう
〽 けんで二十だ アゝ やすいもんだ
古道具屋 〔上士丁〕
長生の 賀らくた道具ならべて 千とせ ふるもの ひさぐめでたさ
〽 ぼろ 三ゑ五ふんが もとねのかいだ
※ 「正直のかうべを神の守にて」は、正直の頭に神宿る という諺。正直な人には必ず神様の助けがある、という意味。
※ 「子はやふるぎ」は、神の 枕詞 「千早振る」と「早古着」の掛詞になっていると思われます。
※ 「はんじやう」は、繁昌。
※ 「千とせふるもの」は、千歳古物。
※ 「ひさぐ」は、鬻ぐ。売る、商いをすること。
※ 「三ゑ五ふん」は、三重五分(3×5)で十五分という意味でしょうか。(一分は一文の十分の一)
質屋 畳表屋
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質屋 〔月限御流申候〕
めだたさは 産後のしちや ならねども 金がねうむ 家ぞたのもし
畳表屋 〔●● 松田〕
商ひも 広しま 備後 備中や 琉球までも ひゞくはんじやう
※ 「備後」は、備後表。備後(広島)で作られる畳表のこと。
※ 「備中」は、備中表。備中(岡山)で作られる畳表のこと。
※ 「琉球」は、琉球表。琉球(沖縄)で作られる畳表のこと。
※ 「はんじやう」は、繁昌。
佛具屋 油屋
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佛俱屋
御仏のひかりは 金の威光にて ゆたかに見ゆる 舗の 荘厳
〽 ふ●き自在 ●んり香 はんもとより うりひろめ
油屋 〔植村 水油〕
生業の 道くらからぬ ゆへにこそ 得意もへらぬ 油あきなひ
※ 「水油」は、液状油の総称。頭髪用の椿油や灯火用の菜種油など。
煙草屋 煙管屋
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煙草屋 〔◇㊂〕 〔げんきん〕
あきなひの 舘のよきゆへ 身上も やにこくはなき 多葉粉見せかな
煙管屋 〔ヤマ上〕
正直 の地金よければ 諸国へも よくとをりたる 名代 喜世留屋
〽 たん ●●● をりに よくきくくすり はんもとにて より弘め
※ 「やにこく」は、脂こく。しつこい。くどい。
菓子屋 炭薪屋
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菓子屋 〔船橋織江〕
くはしみせは 徳羊肝の 評判 に その身落雁 金は有平
炭薪屋 〔太田屋〕
養老のたきゞ かればや 長生の身も しんだいも 堅炭屋なれ
※ 「くはしみせ」は、菓子店。
※ 「船橋織江」は、江戸時代後期の菓子店 船橋屋織江。練り羊羹が評判だったそうです。
※ 「羊肝」は、羊肝餅。羊羹のこと。
※ 「落雁」は、干菓子のひとつ。砂糖菓子。
※ 「有平」は、有平糖。ハードタイプの飴。
※ 「養老のたきゞ」は、養老の滝と薪の掛詞になっています。
※ 「しんだいも堅炭屋」は、身代も堅炭屋。身をかためると堅炭の掛詞になっています。
蝋燭屋 肴屋
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蝋燭屋 〔松坂屋〕
仕合は 時に会津のらうそくや これ正直の 生掛よりして
肴屋
身上 に 尾鰭のつきて いさましや 日ゞにあらたな 肴商ひ
〽 くぎだなの 井戸で 上ものになる
※ 「らうそく」は、蝋燭。
※ 「生掛」は、こよりに灯心をまいて芯にして、油で練った蝋を数回塗り乾かした蝋燭。
※ 「くぎだな」は、釘店。品川町の裏河岸の俗称。
八百屋 瀬戸物屋
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八百屋
売物はみな 青幣 なればとて 八百やの神の 守るはんじやう
瀬戸物屋 〔⃞谷〕
しやうばいの せともの造る 土一升 金一升に かゆるたのしさ
〽 これは しんとの 上ものじや
※ 「青幣」は、青和幣。 麻布で作った和幣のこと。
※ 「はんじやう」は、繁昌。
※ 「しやうばい」は、商売。
※ 「土一升金一升」は、土地の値段が極端に高いことの喩え。
※ 「かゆる」は、変ゆる。かわる。
※ 「しんと」は、塵土でしょうか。
餅屋 漬物屋
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餅屋 〔いくよ〕
みせつきも 美味しかけは 饅頭の おんにたがはぬ 金もちやなれ
〽 小児薬王 肝涼円 はんもと取次
漬物屋 〔小田原や〕〔金山寺ひしほ〕
つけものゝ 塩梅もよき 身上と 人によばるゝ 香のものやは
※ 「いくよ」は、幾世餅。江戸の両国名物のあん餅。元禄の頃、小松屋喜兵衛が吉原の遊女・幾世を落籍して妻とし、その名をつけて売り出したものだそうです。
※ 「小児薬王肝涼円」は、江戸時代後期の有名な小児薬。
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※ 「香のもの」は、香の物。お漬物。
雪駄傘屋 蕎麦屋
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雪駄傘屋
あきなひは 照降なしの 金まふけ 両天秤の せつたからかさ
〽 京ばし東てんま丁 いなりじん道
○ 仙女香
蕎麦屋 〔すなば〕〔平しつぽく〕〔ふまき〕
名物のそばやなりとて 銭金も むやうにのびる 深大寺なれ
※ 「照降」は、照ることと降ること。晴天と雨天。
※ 「仙女香」は、当時評判の白粉。よかったら過去 note を参照してみてくださいね。⇒「江戸高名会亭尽 雑司ケ谷之図」👀
※ 「京ばし東てんま丁いなりじん道」は、京橋 東伝馬町 稲荷新道。
甘酒屋 鰻屋
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甘酒屋 〔大こくや〕
あきなひは 三国 つと名に高き 富士の山ほど たまる金銀
鰻屋 〔きくや〕〔江戸前大蒲〕
はんじやうは 金のまふかる 筋うなぎ みせのかゝりも 大串にして
※ 「三国」は、古くは、日本・中国・インドのことで、全世界という意味で用いられます。また、富士山が裾野をひく三つの国(駿河・甲斐・相模)を指す言葉でもあるそうです。
※ 「はんじやう」は、繁昌。
※ 「まふかる」は、儲かる。
料理茶屋 花屋
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料理茶屋 〔梅川〕
商ひの 広蓋までも 小判形 はや身上を 仕出し りやうりや
花屋
見る目にも くすりと菊の花屋とて さかりひさしき みせの賑ひ
※ 「広蓋」は、縁のある漆塗りの大きなお盆のこと。
手拭見世 居酒屋
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手拭見世
金持と 鳴見しぼりの 手ぬぐひを 売先おほき 舗も 長尺
居酒屋
あきなひの酒は 愁の玉箒 はきよするほど たまる金銀
※ 「鳴見しぼり」は、鳴海絞り。愛知郡有松・鳴海で作られる絞り染めの織物のこと。よかったら過去 note を参照してみてくださいね。⇒「尾張国 有松纐り之図」👀
※ 「玉箒」は、正月の子の日に、蚕室(蚕を飼う部屋)を掃くために用いる玉の飾りがついた小さなほうきのこと。
糸針屋 本屋
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糸針屋
組糸の ほそき世渡りなれど また 針を棒ほど ふとき身代
本屋 〔○岩〕
みせつきの 下●よければ 板行に おしたるごとき 本屋はんじやう
〽 めでたし/\
※ 「○岩」は、江戸横山町の地本問屋 岩戸屋喜三郎のこと。
※ 「板行」は、書籍・文書などを版木で印刷して発行すること。版行。
※ 「はんじやう」は、繁昌。
※ 参考:国立国会図書館デジタルコレクション『東亰區分町鑑 1』『東京流行細見記』
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖